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【BL男子の日常】出会った男たちが嘘つきすぎて、洗脳事件とヤクザ抗争に巻き込まれて恋愛どころじゃない件  作者: 須戸コウ
第16章 推理と調査

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第81話 ケンちゃん

話し合いが終わり、ジペットとゼロは、調査のため公安本部へ戻る。


デジデジは、組長である祖父に話を通すため松川の実家へ向かう。

みんな夜にはまたここへ戻ってくる――その予定だ。


残ったのは、俺とししゃも。だけ。


……あれ?


「ちょっと待ってくれ!」


口をついて出た。


「もしかして俺、なんもできることなくないか!?」


ししゃも。が机の回転イスをクルっとしてこちらを振り返る。目が冷たい。


「働けよこのクソニート!!!」


「だっ、だってよぉ!!」


俺は反射的に言い返してから、気づいて指をさした。


「……つーかお前は何やってるんだよ!?」


「え? ししゃも。?」


ししゃも。は腕を組んで考え込んでいるように見える。


「ししゃも。は~……んー……あっ。犯人たちからのメールの返事待ってるから! 超重大任務なんだが!?」


「いや待ってるだけじゃねぇか!」


「はぁ? 時には待つことも重要なんだが!? 果報は寝て待てって言うでしょ??」


「まぁそうだけどよぉ……!」


言い返しながら、俺はふと、思った。

……待つのが重要なら、俺にもできる。


「そうだな!待つのは大事だ!」


俺は胸を張って言った。


「だから俺も一緒に待つよ。お前、一人じゃ心細いだろう!?」


ししゃも。が、ものすごく嫌そうな顔をした。


「おい、仕事してる感出そうとしてくんじゃねぇよ。ししゃも。ひとりで十分だし!」


「まぁそういうなよ! 一緒に待とうぜ! な??」


ししゃも。は深くため息をついて、視線を逸らす。


「……はぁ。もうしょうがないんだから!」


やけくそみたいに言いながら、頬をぷいっと膨らませた。


「べ、別にししゃも。は一人で大丈夫だけど。燈真きゅんがどうしてもっていうなら、一緒に待たせてあげなくもないけど!」


「よしよし。そうしよう!!」


勝った。俺の勝ちだ。

……いや、何に勝ったんだこれ。


それでも、同じ部屋に誰かがいるだけで、胸の奥のざわつきが少しだけ落ち着く。


俺は、ししゃも。の近くに腰を下ろして、声の調子を落とした。


「……なぁ。健人のこと、なんか教えてくれよ」


「はぁ?? なに急に?」


ししゃも。がじろっと俺を見る。


「昨日の夜もちょっと話したじゃん」


「どうせ待ってるだけで暇なんだからいいだろ」


俺は肩をすくめた。


「他の話があったら聞きてぇんだよ」


ししゃも。はうーんと唸って、しばらく天井を見上げた。


「えー……なんかあるかなぁ~」


「昨日も言ったけど、結構あの子ぽけ~っとしてて、あんまり自分のこと話さなかったからなぁ……」


「結構長いこと一緒にいるんじゃないのか?」


「うーん……同じ施設で暮らしてる期間で言ったら十年ぐらいになるけど」


ししゃも。は指先で机をピアノみたいにトコトコ叩きながら続ける。


「中学生になるくらいまで、ほとんど接点なかったからなぁ。部屋替えで同室になってからって感じ。実質、二年ちょっとかな?」


「そうか……」


二年。

短いようで、長い時間だ。


「でも二年も一緒にいたら、何かあるだろ?」


「まぁ色々話してはいたけど……くだらない話だけだし」


ししゃも。は口を尖らせた。


「“助けるための情報”があるかって言われたら……何もないかなぁ?」


「最近、おかしい様子とかは?」


「うーん……特には……」


そう言いながら、ししゃも。の視線が一瞬だけ揺れた。


「あっ、でも……最近、学校から施設に帰ってくる時間が遅いことが多かったかも」


「そうなのか?」


「うん。最近っていうより……半年ぐらい前からかな。それまでは学校終わったらすぐ帰ってきてた気がする」


「半年……」


今回の件と関係あるのかどうか。

今の段階じゃ何とも言えない。けど、引っかかる。


「……今回の件と関係あるかはわかんねぇな」


「だねぇ~」


ししゃも。は画面を見つめたまま、ぽつりと零した。


「……ケンちゃん、大丈夫かな。ちゃんとまだ無事でいてくれてるよね??」


胸が、きゅっと縮む。


「……きっと大丈夫だ」


俺は自分に言い聞かせるみたいに言った。


「さっきデジデジも言ってたろ? 研究データがこっちにある以上、相手も迂闊には手を出せないはずだって」


ししゃも。は小さく頷いた。


「うん……そうだよね……」


重くて、冷たい沈黙が訪れる。


挿絵(By みてみん)

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