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【BL男子の日常】出会った男たちが嘘つきすぎて、洗脳事件とヤクザ抗争に巻き込まれて恋愛どころじゃない件  作者: 須戸コウ
第16章 推理と調査

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第80話 調査開始

体がふわふわして、意識だけが置いてけぼりになってる。

遠くで誰かが俺の名前を呼んだ気がして、まぶたを開けた。


「ほら、起きろ。家に着いたぞ」


ジペットの声。

え、家? もう? っていうか、なんか変な夢見てた気がする。口が勝手に――


「えぇ……? ちん……」


言いかけたところで、頭に軽く衝撃が入った。


「なに寝ぼけてんだな!! ほら起きるんだ!」


「痛いっ……! お、起きるよぉ……」


目が覚めると、車は俺んちの前に停まってた。

外はいつのまにか薄暗い。時間の感覚がぐちゃぐちゃだ。


玄関の鍵を開けて中へ入る。

……家族は全員出払ってて、家の中は静まり返っていた。

みんなを連れて自室へ上がると、ようやく空気が緩んだ。


「ふぅ。なんかやっと落ち着いたね」


ゼロが伸びをしながら息を吐く。


「……そうだね」


デジデジも、目元を揉みながら小さく頷いた。


――腹、減ってんな。


「そういや俺たち昼飯まだだったな。俺、なんか作ってくるぜ。ちょっと待っててくれ」


立ち上がりかけて、思い出す。

ししゃも。がパソコン借りたいって言ってた。


「あっ、ししゃも。、パソコンそこにあるやつ勝手に使ってくれ……って、パスワード解除しねぇとダメか。ちょっと待ってくれ」


机の上のノートPCを起動して、指が覚えてるパスコードを入れる。

画面が開いたのを確認して、ししゃも。に差し出した。


「ほら」


「ありがちょー。ついでに燈真きゅんのエロサイトの閲覧履歴も見とくね」


「俺、スマホで見てるからそっちには閲覧履歴残ってねぇぞ。でもな、おすすめの動画があってな。裸になった男たちが6人ぐらい横一列に並んでてよ!」


「おい!そういう話はやめるんだな!性的なコンテンツは許可されないんだ!」


ジペットが即座に遮った。


「……わ、わかったよ!そんな怒んなよ……!」


「怒ってない。これは警告だ!」


「よくわかんねぇけど……とりあえず飯作ってくるな」


「いってらっしゃーい」


ゼロに軽く見送られて、俺は台所へ向かった。


冷蔵庫を開けて、材料を確認する。

生めんがあった。鶏もも肉もある。よし、つけ麺にするか。


湯を沸かして麺を茹で、鶏ももは軽く下味をつけて、熱を通してから薄く切る。

つけ汁は市販ベースに少しだけアレンジ。味変用におろししょうがとニンニクを別皿に盛る。


完成したところでみんなをリビングに呼ぶ。


「おう!うまいな!燈真は料理上手だな!!」


ジペットが遠慮なくズルズルいく。


「うん、おいしー!」


ゼロも嬉しそうだ。


「そうか? ならよかったぜ!」


「お肉が柔らかくていいね」


デジデジが、丁寧に感想を言う。

ししゃも。は一口すすってから、ふん、と鼻を鳴らした。


「ふーん、やるやん。まぁししゃも。には負けるけどっ!」


「お前は一言多いな!」


言い返すと、ししゃも。が口の端だけ上げた。


飯を食い終えたあと、俺たちはそのままリビングで輪になって、今後の動き方を整理した。


ゼロが指を一本立てながら言う。


「とりあえず今後の活動方針だけど、第一優先はデイジーの弟で、ししゃも。の友だちでもある清水健人くんを救出すること」


「おう!」


「大丈夫だ!」


俺も頷く。


「うん」


ししゃも。も小さく返事をした。


「OKだよ」


デジデジも、いつもの冷静さを取り戻している。


「僕たちができることは限られてるから、進められるものは同時並行で進めていこう」


ゼロは続けた。


「ジペットは一度公安本部に戻って、警察の捜索優先度を上げるようプッシュして。たぶん状況的に“家出レベル”でしか動いてない」


ジペットが頷く。


「了解だぜ! あとは、ししゃも。に届いたメールの添付画像から場所が特定できないかも探ってみる」


「OK。じゃあ僕はダメ元で、メールの送信者を調べる。VPNとかで秘匿されてる可能性が高いけど……。あとUSBの件も任せて」


「うん、お願い」


ししゃも。の返事が少しだけ小さかった。


俺は思わず口を挟む。


「そういえば、あのUSBどうだったんだ?」


ゼロが苦笑する。


「USB自体は認識されたんだけど、パスワードがかかってて中身までは確かめられなかったんだ。本部に戻れば解析システムが使えるから、それで解除できないか僕が試してみる」


「そうか……。無事に解除できるといいな」


「うん」


ししゃも。がUSBを胸元に寄せる。その仕草が、妙に痛々しかった。


ジペットが声を落として言った。


「……後は、一応状況の整理をしとくか」


「ししゃも。宛のメールには、命令に背いたら健人を殺すと書いてあった。で、デジデジには爺さんから“ししゃも。を殺せ”って命令が来てる」


「命令とほぼ同時期に健人が施設からいなくなった。だからデジデジは“殺しを遂行できなければ健人を殺すって脅し”と受け取ったわけだな」


ジペットはそこで一度区切って、顎に手を当てた。


「ただ……これは早とちりの可能性もある。爺さんは健人のことをデジデジに話していない。脅したいなら、普通は言ってくる」


デジデジが静かに頷く。


「祖父は、真世教団から依頼があったと言っていた。でもそれも嘘かもしれない。祖父と真世教団の間にいざこざがあって……祖父が妨害しようとしてる可能性もある」


淡々と話してるのに、言葉の内容が重い。


「でも、健人の状況を把握してるのは、しゃもしゃもにメールしてきた奴らだと思う。だから救出はそっちを主軸に考えていい」


「研究機材と研究データの回収を指示してきたってことは、次は“受け渡し”を要求してくるはずだ」


「研究データを手に入れるまでは相手も迂闊に健人に手を出せない……はず。次の指示があるまでに、健人の無事を確認できれば……」


ゼロがすぐ引き継ぐ。


「ししゃも。、研究データを回収した報告と、一度健人の無事を確認させてほしい旨のメールを送ってもらえるかな?」


「うん、わかった」


ししゃも。がスマホを取り出してそそくさと操作し始める。


ジペットが視線を巡らせた。


「他に今この段階でできることはあるか?」


その瞬間、俺の頭に引っかかってた違和感が形になった。


「健人宛に何かメールが届いてるかどうかって調べられないか?」


全員の視線が俺に集まる。


「今時点で監禁されてるとしても、最初は自分で出ていったんだよな? それなら……ししゃも。みたいにメールが届いてるかもしれねぇだろ」


ジペットが大きく頷いた。


「あぁそうだな!それは俺が調べてみる。ししゃも。、健人が普段使ってるメールアドレス知ってたら教えてくれ」


「わかった!」


俺はもう一つ、踏み込みたいことを言う。


「あと……デジデジの爺ちゃんに健人のことを確認してみるのはどうだ? 誘拐に関わってるなら、直接聞いた方が早くねぇか?」


デジデジの表情がほんの一瞬だけ曇った。


「……そうだね。聞いてみるよ」


「どうした?」


「いや……祖父と話したいか話したくないかで言ったら、話したくはない。でも、今はそんな状況じゃないし確認する。……本当はもっと早く確認すればよかったね」


「悪ぃな……。でも無理はすんな」


あと気になることは……


「ししゃも。の母ちゃんと父ちゃんについて調べてみるのはどうだ?」


ゼロが頷いた。


「そうだね。事件当時の資料は結構あるはずだから、もう一度洗い直してみよう。新しい発見があるかもしれない。これは僕が調べる」


ジペットが拳を軽く握った。


「よし……いったんそんな感じだな。各々、他にもできそうなことがあったらやろう。危なくない範囲でな」


「了解!」


声が重なった瞬間、部屋の空気がほんの少しだけ、前を向いた気がした。



挿絵(By みてみん)

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