第79話 どうせ夢なら幸せな夢を
ゼロが話題を切り替えるように口を開いた。
「ところでししゃも。、落ち着いてからでいいんだけど……そのUSBの中身、僕たちにも見せてもらうことできるかな? 色々調べたいんだ」
ししゃも。はUSBを握ったまま、黙った。
さっき公安の話を聞いたから、信じていいのか迷っているように見える……
「……うん、わかった。二人ならいいよ」
ししゃも。はゼロとジペットを見る。
「でもできれば公安の他の人には内緒にできる?」
「うん。誰が敵だかわからないもん。他の人には伝えないよ」
「そっか……。じゃあ大丈夫。燈真きゅんのお家に着いて中身確認したら渡すね」
「ありがとう」
「燈真きゅん、家についたらパソコン借りてもいい?」
「おう!大丈夫だぞ!」
「ありがちょ」
その言葉に、ジペットがぽつりと挟む。
「そのUSB、ちゃんと動くといいな」
「ちょっとジペット!」
ゼロが即座に睨む。
「え?」
ししゃも。が不安そうに顔を上げた。
ジペットはゼロとししゃも。の反応の意味に全く気が付かない様子で続ける。
「ん? 一般的なUSBメモリの寿命は3年ぐらいって言われてるんだ。いいやつだと10年ぐらい持つみたいだが、それ10年前から一回も使ってないだろう? もしかしたらもうデータ消えちまってるかもしれないと思ってな」
「そんなことってある!? こんなに苦労して……っ!」
ししゃも。の声が震えた。
「ママとパパが命かけてやってた研究のデータなのに!!!」
「ししゃも。落ち着いて!」
ゼロがすぐ、優しく言い聞かせる。
「きっと大丈夫だよ。万が一のときでも、公安のつてで復元できそうな人にあたってみるから。ね?」
「……うん」
「ジペット、空気読んでよ」
「悪かった!! すまんな、ししゃも。!」
やっと状況を理解したのか、ジペットがすかさず謝る。
「ううん……大丈夫」
ししゃも。は深く息を吐いた。
「はぁ……でもなんかちょっと疲れて眠くなってきちゃった」
「確かに、ちょっと疲れたね……」
デジデジも小さくあくびを噛み殺す。
「お前ら寝ててもいいぞ! 家についたら起こしてやる」
「でも……ジペッちょに運転任せっきりだし……」
「俺のことは気にするな。ゼロもいるしな」
「でも……悪いよ……ぐぁあああああああ!!!」
ししゃも。は言い終わる前に、ストンと眠りに落ちた。
「寝るの速ぇな!!」
思わずツッコむ。
「じゃあ僕もお言葉に甘えて少し休もうかな」
「おう、そうだな! ゆっくり休めよ」
・・・・・・
数分後。
「なんだ? 燈真も寝ちまったのか?」
運転席のジペットがミラー越しに言う。
「ん? ほんとだね。三人とも寝ちゃったみたい」
ゼロは後部座席に目をやった。
「こうやって見るとただのガキだな。さっきまで銃でどんちゃん騒ぎしてたとは思えないぜ」
「そうだね」
車内に、静かなエンジン音だけが残る。
「ししゃも。とデジデジにとってこの世界は、醒めたら終わる夢の中みたいなもんかもしれない。でもいまこいつらは必死になってこの世界を生きてるんだ」
ジペットの声は、さっきまでのふざけた調子じゃなかった。
「俺たちでちゃんとハッピーエンドを迎えさせてやろうぜ」
「そうだね。どうせ夢なら悪夢より幸せな夢がいいもんね」
「そうだぜ! 最後はみんなで夕日に向かって竹とんぼ飛ばして手をつないで走りながら笑うんだ!」
「……またなんか変な映画みた?」
「うるせぇ! いいだろ!」
ゼロの小さな笑い声が、車内を少しだけ温めた。




