第7話 お礼、言わないから
「・・・なんで?」
「ん?」
「・・・なんで助けたの?」
「なんでって・・・さすがにあれは酷すぎるだろう! あんなの見たら誰だって助けるだろう普通! なんなんだアイツら? お前またなんかしたのか??」
「またって何!? ししゃも。は何もしてない!!」
「あぁそうか・・・。つーかお前、名前はししゃもでいいのか?」
「・・・うん。『ししゃも。』。最後は『。』が付くのがチャームポイント」
「『ししゃも。』か。いい名前だな」
「そうでしょ? ししゃも。は顔も名前も性格も宇宙一かわいいの♡」
「はぁ? お前別に名前以外はかわいくねぇぞ??」
「はぁ!? 殺すぞガキぃ!!!!!」
「お前、一々リアクションがうるせぇんだよ! さっさとあいつらのこと教えろよ!!」
「はぁもう無理!! ししゃも。が世界一かわいいってことをぽ前が認めるまでししゃも。なんにも話さないから!! だいたい……」
話が進まないので少し時間を飛ばそう。
どうにかこうにか少年をなだめすかした俺は、ようやく事情を聞き出すことに成功した。
「で、あいつらは誰なんだ?」
「ししゃも。もよくわからない。たぶん暴力団的ななにかだとは思う。ししゃも。のペンダントを狙ってるみたい」
「暴力団って・・・。ペンダントはさっきなくしたって言ってたやつか?」
「そう」
「悪ぃけど、俺ほんとにお前のペンダントは持ってないぞ?」
「・・・うん。もうわかってる」
「そうか」
「で、なんであいつらはそのペンダントなんて狙ってんだ?」
「・・・それは言えない」
「・・・そうか」
「・・・でも、普通のペンダントじゃないとだけ言っておく」
「そうなのか・・・。(なんかめちゃくちゃ高いやつとかなのか??)」
俺は少し考え込む。
「・・・お前、これからどうするんだ?」
「ペンダントを探す」
「探すって・・・もしかして今からか!?」
「そう。早く探さないと・・・」
「今からは厳しくねぇか? もうすぐ暗くなるし、そのケガで動き回るのも厳しいだろう!?」
「だから暗くなる前に探したいの! ケガももう痛くないから平気!!」
「痛くないだけでケガは直ってねぇんだよ! 動き回ったら悪化するぞ!!」
「あぁもううるさい!! ぽ前には関係ないでしょ!?」
「まぁ関係はねぇけどよ・・・」
「・・・」
「・・・あのペンダントは、ししゃも。にとっても大切なものなの。だから早く見つけたいの・・・」
「・・・お前」
少年の切実な表情を見て、俺は腹をくくった。
「よしっわかった! 俺も一緒に探してやる!!」
「え!? なんで!?」
「実は俺もよ・・・いま探し物、ていうか人探ししててよ。だから早く見つけたいってお前の気持ちはよくわかるんだ」
「だからさっさと見つけちまおう!!」
俺はバッとベンチから立ち上がると、ししゃも。の前に背を向けてしゃがみ込む。
「なに!?」
「乗れよ。おんぶしてってやる! お前その足で動き回ったらあぶねぇから!」
「いや、いい!」
「遠慮するなよ。俺のこと心配してんのか? だったら大丈夫だ! 俺、力持ちだからな!」
「そういう話じゃない! 恥ずいしぽ前速すぎて怖えぇんだよ!!」
「さっきは急いでたからな。今度はさっきみたいにスピード出せねぇから安心しろ、な!」
「いや恥ずい問題は解決してないんだが!?」
「そんなもんすぐ慣れる! おら乗れ!!」
俺は半ば強引にししゃも。の手を取って自分の首に回させると、腰をもちあげて背負いあげる。
「ちょっとぉおお!!!!」
「耳元でうるせぇんだよ! ほら行くぞ」
「はぁ・・・はっず・・・」
「すぐ慣れる」
先ほど俺が伝えていた通り、俺は走ることなくゆっくりとしたスピードで歩いていく。
「・・・お礼、言わないから」
「そうかよ。別にそれでいいよ。お前にお礼言われたくてやってんじゃねぇからな」
「・・・」
(なんだっけこの感じ・・・)
(あぁ、そうか。昔しゃもパパにこうやっておんぶしてもらってたんだ。)




