第77話 殺害依頼
「それで・・・ししゃも。を殺そうとしたのは松川会から命令があったから?」
ゼロが問いかける。
「うん・・・。また真世教団から依頼があったみたい。ししゃも。を殺せって。」
「それで、殺す相手が僕の父が殺されたあの事件に関連がある人物・・・しゃもしゃもだったから、祖父は僕に殺すように命令したんだと思う。」
「『お前の父親が死ぬきっかけになった奴を殺せるんだ。まだ殺しの仕事をしたことがないお前には打ってつけだろう』って僕に言ってきたから。」
「・・・ほんとクソだな。」
「なんでししゃも。が・・・」
ジペットが腕を組む。
「それで、爺さんに弟を人質に取られてるってワケか?ししゃも。を殺せなかったら弟がどうなるかわからないぞって感じか?」
「たぶんそうだと思う。」
「たぶん?」
ゼロが目を細める。
「祖父からは弟を人質にしたとも、殺しに失敗したら弟を殺すともまだ直接は言われてないんだ。」
「ただ、祖父から今回の話を聞いた直後に弟が行方不明になったことを知って・・・。タイミング的にそうなんだと思って。」
「そう...か・・・。」
何かひっかかるような……
「うーん・・・。」
同じくゼロもなにか気になる様子で低く唸る。
「二人ともどうかしたか?」
ジペットが俺たちの顔を覗いてくる。
「いや、ちょっと頭こんがらがってきちまってよ・・・。」
俺は正直に言った。
疑問だらけで、息が詰まる。
「なんか色々気になるところはあるんだけど、とりあえず一番気になるのは、真世教団がなんでししゃも。を殺せって言ってくるんだってとこだな。」
「ぁぁ!確かにそうだな!」
ジペットが拳を握る。
「松川会・・・いや黒幕は真世教団か。奴らはししゃも。にあれこれ指示を出して研究データを回収させようとしていた。つまりその研究データを何かに活用したいはずだ。」
「そしてその研究データを使うためにはししゃも。の力が必要になる可能性が高い。そのことを真世教団側が掴んでいないはずもない。」
「なのにししゃも。のことを殺そうとしてくる。どう考えても矛盾してるな。」
ゼロが顎に指を当てる。
「もしかしたらししゃも。に指示を出してきたのは真世教団じゃない?」
「いや、逆かな?松川会に殺しを依頼してきたのが真世教団じゃないのかも??」
「ぁぁもう意味わかんない!!!!!!!!!!ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ししゃも。が頭を抱えて叫ぶ。
「落ち着いて、ししゃも。・・・。でもそうだね。僕もちょっと考えすぎて思考回路がショートしそうだよ。」
ゼロは苦笑し、場を落ち着かせるように言った。
「僕たちずっと話しっぱなしだし、ちょっと情報の整理も兼ねて休憩しない?」
風路が立ち上がる。
「そうだな。ここいらでいったんお開きにしよう。さっき俺のところに潜り込んでいたネズミを確保したって下から連絡があった。俺はそいつから情報を吐かせる。」
そして、ししゃも。の方を見る。
「あと、お前に研究データを渡す、ししゃも。。」
「え?いいの?」
「いいも何も当初からお前に渡す予定のものだったからな。だいぶ予定が前倒しになってクソみたいな状況だが...。今渡すほかないだろう。」
ゼロが立ち上がって言う。
「僕たち5人はいったん燈真くんの家に帰ろう。」
「え?僕としゃもしゃもを警察に連行しなくていいの?」
「なんで?なんかあったっけ??」
ゼロが本気で不思議そうに返す。
「お前らなんか寝ぼけてたのか?シャキッとするんだな!」
ジペットが笑いながら言い、ゼロと一緒にそれぞれの手錠を外した。
「え・・・ししゃも。は・・・」
「うるさいんだな!友だちを助けたいんだろ??だったらごちゃごちゃ言うのは助け出すまでなしだぜ?」
「・・・・わかった。」
「お前もだ、デジデジ!」
「わかった・・・。ありがとう。」
風路がため息をつく。
「はぁ・・・お前ら二人はほんと甘ちゃんだな。」
ゼロが即座に突っ込む。
「キミだって燈真くんに甘々なくせに。」
「うっうるさいっ///」
俺はここで思い出したみたいに口を開く。
「そっそうだ!なぁ、どうして風路兄ちゃんは俺のこ――」
「今はそんな話してる場合じゃない!行くぞ!!」
「えぇ・・・」
俺たちはソファーから立ち上がり、部屋の扉へ向かった。
そして、扉を開けた瞬間。
「……あ。」
ジペットとゼロの声が同時に漏れる。
廊下のど真ん中に、中林――おやっさんが腕を組んで立っていた。怒りが顔に書いてある。
「おいおい、俺たちを廊下に立たせて随分話し込んでいたようだが?」
「まだ何の報告も受けていないが・・・お前ら俺たちに連絡も入れずに部屋から出ようとしてるか?」
「おやっさんっ!今ちょうど話が終わったところでな!通信機で話すより直接話した方がいいとおもったんだ!な!」
ジペットが取り繕うように話す。
「ほう。その割には俺の顔を見たときに『忘れてた』って顔をしてたように思うんだが?」
「キノセイダヨー。」
ゼロがおどける。
「で、さっき銃声のようなものが聞こえたようだったが?」
「いやっ・・・あれは・・・ししゃも。の屁だ!!すげぇうるさかったんだな!」
「はぁ!!?」
ししゃも。が素でキレる。
「ほう・・・。で、窓ガラスが割れているようだがあれはなんだ?」
ゼロが即答する。
「あれはっ・・・ししゃも。のオナラが臭いから窓を開けようと思ったらあまりに臭すぎて手元が狂って割っちゃったんだよ。」
「はぁ!!?!!?」
「ほうほう・・・。それで、なぜ外の車で待機してるはずのそいつらがそこにいるんだ??」
「……あ。」
俺とデジデジの声が重なる。
ジペットが、苦し紛れに笑顔を作った。
「これはその・・・マジックだぜ!!びっくりしたか!?」
「・・・・・・」
おやっさんの目が、完全に死んだ。
次の瞬間。
「このポンコツどもがぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
廊下に怒号が響いた。
――その後、ジペットとゼロが中林から大目玉を食らい、俺たちは適当な理由をでっちあげて、いったん事務所の外まで引き下がってもらうことになった。
まだ終わってない。
でも、ひとまず――次へ進むための足場はできた。




