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【BL男子の日常】出会った男たちが嘘つきすぎて、洗脳事件とヤクザ抗争に巻き込まれて恋愛どころじゃない件  作者: 須戸コウ
第14章 新たな事件

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第71話 吐き気

「なんでわざわざ、ししゃも。にこんなことさせるんだろうな?」


俺は率直な疑問を口にした。


「え?」


ししゃも。がこちらを向く。俺はそのまま言葉を続けようとした。


「だっておかしいだろ。お前まだ――」


その途中で、ポケットのスマホが震えた。

着信。画面を見る。


……Gからだ。


嫌な予感が、背中を這い上がる。


「悪い! ちょっと先に話しててくれ!」


言い終わるより早く、俺は部屋の隅に移動しながら電話に出た。


「もしもし!」


「燈真先輩……」


Gのか細い声が、胸をざわつかせる。


「……なにかあったんだな?」


喉が鳴る。唾を飲み込み、返事を待つ。


「……また、世界が変わったみたいです。……今から十分くらい先。……でも、僕のほうでは何も起きていません。……あのときみたいな、悲惨な状態は……」


「じゃあ、なんで……?」


「……わかりません。……なので、とりあえず燈真先輩の記憶を確認したいです」


「ビデオ通話にすればいいんだな? ちょっと待ってくれ!」


返事を待たず、俺はテレビ電話に切り替えた。

画面に映るGは無表情で、それでもどこか不安そうだった。


「……確認します。……そのまま、動かないで」


数秒の沈黙。

部屋の中央から話し合う声が聞こえるが、内容はまったく頭に入らない。


「…………」


「……見えたか?」


不安に耐えきれず、俺は問いかけた。


「……はい。……見えました。……今から燈真先輩に書き込みます。……でも、少し覚悟してください。……できる限り、記憶を客観視して」


――また誰かが死んだのか?


そうでなくても、ろくなことじゃない。

客観視なんて、どうやればいいのかわからない。


……でも、やるしかない。


「……やってくれ」


「……わかりました。……僕から目をそらさないで」


呼吸まで止めて、俺はGの黒い瞳を見つめた。


「……3……2……1……」


次の瞬間、視界が塗り潰される。


赤黒い液体。

血と、脳髄と、透明で黄色がかった何か。


ぐちゃぐちゃに潰れ、原型を失った顔面。

鼻も、目も、口も判別できない。

片方の眼球は見当たらず、もう存在しない。


裂けた口は、本来目があったはずの位置まで伸び、

めくれ上がった皮膚の下から、ピンク色の肉が露出している。


その中に、金属片のようなものが一瞬、光を反射した。


「……うぅっ!」


胃が反転する。

吐き気に襲われ、思わずえづいた。


口元を押さえたが、視界が揺れ、そのまま膝をつく。


ガシャン――。


耳障りな音。

スマホを落としたらしい。


「燈真っ! 大丈夫か、燈真っ!!」


低く腹に響く声が近づいてくる。


……風路兄ちゃんだ。


ほかのみんなの足音も重なる。


「燈真! 具合が悪いのか?」


肩を抱かれ、見上げると、心配そうな目がそこにあった。

その優しさに、ようやく現実に引き戻される。


「……ちょっと立ちくらみしただけだ。大丈夫」


「無理するな。こっちで横になれ」


言い終わる前に、身体がふわりと浮いた。


――お姫様だっこ!?

挿絵(By みてみん)

「か、風路兄ちゃん!? 俺、大丈夫だって……//」


「何かあってからじゃ遅い」


真剣な目。伝わる体温。

恥ずかしいのに、なぜか心地いい。


「ひゃ……ひゃい……//」


そのままソファーに寝かされる。


「燈真くん、大丈夫!?」


「平気か?」


ゼロとジペットが声をかけてくる。


「大丈夫だ。心配かけて悪い」


するとすぐ、風路兄ちゃんが言った。


「謝るな。気を張ってたんだろ。お前はまだ高校生だ」


そして二人を睨む。


「こんなところに燈真を連れてくるなんて……」


「あははは……」


気まずそうな笑い。


「燈真、水だ。飲めるか? 無理なら俺が口移しで――」


「だぁっ!! 飲めまる!! 飲みます!!」


慌ててペットボトルを受け取り、一気に半分以上飲み干す。


はぁ……。


「ありがとう、風路兄ちゃん」


「お前のためなら、なんだってしてやる」


真剣な目。

顔が熱くなる。


「みんなも、ありがとうな」


視線をそらすと、ししゃも。が俯いていた。


「……ごめん、燈真きゅん。ししゃも。のせいで……」


「……ししゃも。、こっち来い」


近づいてきた腕を引き寄せる。

手錠のせいでバランスを崩し、俺の上に倒れ込んできた。


でも、それでいい。


俺はししゃも。を抱きしめた。


「ちょっ……!? なんで!?」


「生きてるなら、それでいい」


「意味わかんないんだけど……// 離して?」


抵抗は弱い。

俺はそのまま頭を撫でる。


――ちゃんと、ここにいる。


「やめてってば……//」


ゴホン。


「そろそろ離れろ、クソガキ。燈真は体調不良だ」


風路兄ちゃんの目が鋭い。


「えー? でも燈真きゅんが離してくれなくてぇ~?」


「なんだと?」


「あーん?」


……やばい。


俺は慌ててししゃも。を離し、残りの水を一気に飲み干した。


「見てくれ! もう元気だ!」


腕に力を入れてポーズを決める。


「……燈真……愛らしい……」


「元気になったならよかった」


場の空気が、ようやく落ち着く。


……そして。


視線の先に、デジデジがいた。


顔色が悪い。

さっきから、ほとんど喋っていない。


――見えてなかった。


「よかった……このまま……なら……」


記憶の底から、声が蘇る。


俺は、向き合わなきゃいけない。


「デジデジ」


俺は、その名前を呼んだ。




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