第66話 ししゃも。の嘘
「おい!そろそろシャキッとするんだな!お前には聞きたいことがたくさんあるんだ!」
「ジペット貸して。」
ししゃも。の肩を揺さぶるジペットにゼロが割って入る。
ゼロはソファーの前にしゃがみ込むと、躊躇なく右手を構えた。
パンパンパンっ!!!
ゼロによる往復ビンタ。乾いた音が連続して部屋に響く。
ししゃも。の首が左右に揺れ、目の焦点が戻りかける。
「・・・・はっ!!」
「やっと戻った!?」
パンパンパンパンパンっ!!!
「痛いっ!ししゃも。、なんでずっと殴られ続けてるの!?」
「自分の胸に手を当てて考えてみて。」
「え!?ししゃも。・・・わかんなぁーい!ここはどこ?ししゃも。は誰??」
パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンっ!!!
「痛い痛い痛いっ!やめて!!!わかったから!!!ししゃも。はししゃも。!!!痛いっ!!!」
乾いた音が何度も続き、ししゃも。の声は次第に情けない悲鳴に変わっていく。
「ねぇ!!どうしたらこれ止まるの!!?ししゃも。の顔、このままだと腫れてア○パンマンみたいになっちゃうぅ!!!!!」
「元からちょっと似てるよ。」
パンパンパンっ!!!
「痛いっ!!!!!!!!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ねぇ、何か言わなきゃいけないことあるんじゃないの??」
「痛い痛い痛いっ!!わかったっ...!!ごめんっ・・・ごめんなさいっ!!!ししゃも。が悪かったですぅっ・・・っ!!!!!!」
ようやくビンタが止まる。
ししゃも。は息を切らし、涙目でぼうっとゼロを見上げた。
「ホントにわかってるの?」
「うん・・・」
パンッ!!
「もうしない?」
「もうしません。」
パンッ!!
「わかった・・・。じゃあ最後にもう一回みんなにちゃんと謝って。」
「ごめ゛ん゛なざい゛。しし゛ゃも゛。が悪かったです゛ぅっ!!」
パンッパンッ!!!・・・パンッ!!
「ふぅ・・・これくらいにしておくか。」
……やっと終わったのか。
パンっ!!!!
ゼロの手が、もう一度だけ容赦なく振り抜かれた。
締めくくりの音を聞いたあと、俺は腹を括ってししゃも。に問いただす。
「で、なんでししゃも。は銃なんか構えてたんだ!ちゃんと説明してくれ!!!」
「そこの・・・イケてる兄ちゃんが俺のことしゅ・・・しゅきって言うのもだっ!!!」
ふと、視線の先にいる男と目が合った。
黒崎風路......イケてる兄ちゃんだ。
「・・・!///」
風路は恥ずかしそうに視線を逸らした。
「んぐっ・・・!///」
それを見た俺も、恥ずかしさで俯いてしまい、なぜかもじもじしてしまう。
「色恋沙汰の話は後にして、とりあえず今起こったことをありのまま話すぜ!」
ジペットが大げさに咳払いをして、仕切り直す。
「おやっさんや燈真たちとの連絡を絶った後の話だ。――俺たちは風路から衝撃の事実を聞くことになった。」
「衝撃の事実?」
「ぁぁ。」
俺はジペットの真剣な表情に身構えて、背筋を伸ばす。
そしてジペットは、こちらをまっすぐ見て言い放った。
「燈真、お前たちが昨日から探していたししゃも。のペンダントは、ししゃも。のものじゃなかったんだ。」
「え!?」
ししゃも。のものじゃない?
それに、どうして急にペンダントの話になるんだ?そう思ったのもつかの間......
「違う!!あれはししゃも。のものだ!!!!!!」
ししゃも。が焦ったように声を荒らげる。でもその声はやけに力強く、まっすぐな信念のようなものが宿ったようにも感じられる。
「おっと、そうだな。御幣があった。あれはもともとはししゃも。やししゃも。の両親のものかもしれない。でも、ここ最近までそれはししゃも。の手元にはなく、ここ『七代目黒崎組』に保管されていたんだ。」
ジペットはししゃも。の想いを尊重するように言葉を選び直し、続ける。
「それを一昨日の夜、ししゃも。が忍び込んで盗み出した。」
「お前、盗んだのか?」
「人聞きの悪いこと言わないで!!!あれはししゃも。のだって言ってるでしょ!?盗んだのはししゃも。じゃなくてコイツらの方!ししゃも。はただ盗まれたものを取り返しただけ!!」
「・・・・・・」
風路は何も言わず黙り込んでいる。
その沈黙が、やけに重い。
「そうか・・・。変な言い方して悪かったな。ごめんな。」
必死に声を張り上げて主張するししゃも。の姿を見て、ひどく傷つけてしまったように感じて、素直に謝る。
「・・・別に。」
ししゃも。の声のトーンが数段階落ちる。ししゃも。もヒートアップしていたことを反省しているのかもしれない。
「つーかお前、苦労してせっかく取り返したのに無くしちまったのかよ・・・。」
少し気まずくなって、適当な言葉を投げかける。
「・・・・・・。」
でもししゃも。から言葉は返ってこなかった。
「・・・燈真くん。こんなこと言いたくないけど・・・」
ゼロが静かに口を開く。
「え?」
「ししゃも。はたぶん、ペンダントをなくしたりなんかしてない。
たぶん今も持ってるんじゃないかな?
ししゃも。、ちょっと調べさせてもらうよ。」
「・・・」
ししゃも。はなにも言わず、抵抗もせず、ただポケットの中を調べられる。
「・・・やっぱりあった。風路くん、ペンダントはこれであってるよね?」
「あぁ。それで間違いない。」
ししゃも。がついた『嘘』が明るみになっていく。




