第65話 一件落着?
その言葉を口に出した瞬間、部屋の空気がきゅっと張り詰めた。
ししゃも。の目が揺れ、ほんの一瞬だけ、肩の力が抜けたように見えた。
「燈真きゅん・・・信じてくれてありがちょ・・・。ほら、危ないからししゃも。のところに来て!」
「あぁ、わかった。」
俺は一歩、二歩とししゃも。の元へ近づく。足音がやけに大きく響く。
「・・・っ燈真!!」
「燈真くん・・・!」
ジペットとゼロの声が重なって、背中に刺さる。
それでも俺は止まらない。信じると言ったのは俺だ。
「来てくれてありがちょ・・・。燈真きゅんって本当に・・・」
ししゃも。は嬉しそうに口元をゆるめた――ように見えた。
「バカだよねぇ~っっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
次の瞬間、ししゃも。の腕が跳ね上がる。
銃口が、まっすぐ俺へ向いた。
……やっぱりこうなるのか。
それでも、受け入れられるわけがなかった。
「・・・ししゃも。っ!!!なんでっ・・・!!」
わかっていたことだ。
わかっていたことなのに、何かの間違いであって欲しいと願わずにはいられない。
「動かないで?」
いつもの茶化す声じゃない。
冷たい声が俺に突き刺さる。
「燈真(燈真くん)っ!!!」
ジペットとゼロが同時に叫ぶ。
風路が椅子を蹴る勢いで立ち上がり、顔を歪めた。
「このクソガキっ!!!!卑怯な真似しやがって!ぶち殺してやるっ!!!!」
「おら動くんじゃねぇよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ししゃも。は俺に銃を改めて突き付けて、風路の動きを制止する。
「てめぇのだいだいだーいしゅきな燈真きゅんの頭からぁ~脳みそがぴゅーぴゅーしちゃぁーぅぞ??♡」
……何をいってるんだ?俺の脳が追いつかない。
「・・・・っ!この下衆野郎がっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
風路が本能をむき出しにしたような声で罵倒する。
「おっおいっ!ししゃも。どういうことなんだよ!!!」
「あぁ??」
「ちゃんと説明してくれっ!!!!!!!」
わけがわからない!口が勝手に動く。聞かずにはいられない!
「あのかっこいい兄ちゃんが俺のことっだっ・・・だいしゅきって・・・どういうことなんだ!!?」
自分でも信じられないくらい、胸がドキドキしている。
「最初に気にするところはそこじゃねぇだろうがこーのーダーボーーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ししゃも。が張り裂けんとばかりに叫ぶ。そのときだった。
「ダボはキミだよ。」
背後から、静かな声が落ちた。
「・・・!?」
ししゃも。が振り向こうとした瞬間、身体からふわっと力が抜ける。
崩れ落ちそうになるししゃも。の身体を、背後の人間がすんでのところで支えた。
「・・・デジデジ!?」
「燈真君、大丈夫だった??ケガはない??」
「いや、ケガはねぇけど・・・。お前、なんでここに!?」
「......約束破ってごめん。実は中林さんに頼んでみんなとは別の車に乗せてもらって来たんだ。それで、燈真君がビルに走っていくのが見えたから追いかけて、タイミング見て窓から入ってきた。」
デジデジの声は妙に落ち着いている。
俺は全然落ち着けない!
もう何もかもめちゃくちゃだ!
……いや、でも。
デジデジが首根っこを掴んで抱えているししゃも。の顔を見遣る。完全に伸びていてピクリとも動かない。
ししゃも。が持っていた銃は床に転がり、それはすかさずジペットが回収。
「なんかすげぇことになったけど、これで一件落着だな!!」
ジペットが晴れ晴れとした声でガハハと笑っている。
「ジペット、まだ落ち着いてないよ。諸々処理してかなきゃ・・・」
それを見かねたゼロが気を引き締めるように促す。
「そうだな!とりあえずいったんししゃも。には手錠をかけさせてもらうぞ!」
ししゃも。はデジデジに後頭部を手刀で叩かれた衝撃で、気絶には至らないもののボーっとしていて話したり身体を動かしたりできない様子だ。
ジペットが手際よく手錠をかける。
ガシャンという金属音がやけに響いた。
ジペットはそのままししゃも。の身体を抱き上げてソファーに座らせる。
目はうつろで、焦点が合っていない。
すべてがことの収束に向かって着実に進められていく。
……これは、デジデジが死ぬ未来は回避できたってことでいいのか?
まだ完全には安心できない。それでも、俺は今こうしてみんなが生きていることに少しだけほっとせずにはいられなかった。




