第62話 作戦
「いいか!?わかったなデジデジ!!お前は俺たちが戻ってくるまで絶対にこの家を出るなよ!!」
「わっわかったってばっ!」
強く念を押す俺に、デジデジが少したじろぎながら答える。
俺とGの作戦会議の結果、ひとまずデジデジは黒崎組の事務所に行かせないようにすることにした。
そうすれば少なくともデジデジが銃で撃たれることはないはずだ。
最初は自分も絶対についていくと聞かなかったデジデジも、説得の甲斐があってようやく了承してくれた。
「ったく!燈真は急にどうしちまったんだ!?...俺たちにも話せないって言うから深くは聞かねーけどさ!」
「ほんと燈真きゅんって自己中っ!」
「ねー!」
ジペットがやれやれと言わんばかりのアメリカンジェスチャーをしながら不満を漏らす。
それに続いてししゃも。とゼロが重ねて俺を非難する。
「悪いな。事務所から戻ったらちゃんと話すからよ!」
「さっきもししゃも。だけ急に呼び出されたとおもったら友達とのビデオ通話に出ろとか言われるし!なんだったのあの時間!?友達マウント、ちょーうざいっ!」
ししゃも。が続けて不満をぶつけてくる。
ししゃも。には悪いが、Gの力を使ってししゃも。の記憶を見ようとした。
ししゃも。がなにを隠しているのか明るみにするためだ。プライバシーを侵害している自覚はある。俺だってこんなことはしたくなかった。でもデジデジの命に関わることだ。ししゃも。自身にも人殺しなんてさせたくない。
…俺はGからの記憶を読む提案を受け入れた。
結果をいうと、記憶の読み取りには失敗した。
Gはこの世界とは別の法則がなんとかとか、権限が足りないとかなんとかよくわからないことを言っていたが、俺には理解できなかった。
正直、読み取りができなくてホッとしている自分がいる。
できることなら、直接ししゃも。の口から話を聞きたい。
ゼロやジペットには、記憶の読み取りは実施していない。デジデジが撃たれたときに必死に傷口を押さえる2人の姿を見ている、というのも大きい。
正直、みんなに隠し事をしていることに罪悪感がある。
ししゃも。が銃を手にする恐れがある事務所に行くことも、本当は中止したい。
でもこれも、Gと決めた作戦の一環だ。
俺には未来を知っているっていうアドバンテージがある。このアドバンテージを最大限に活かすには、必要以上に未来を変えすぎないこと。
これから起こることがわかっていた方が対処が簡単だからだ。
未来を知っている人間が多くなると、その分未来がどう転ぶかわからなくなる。
これがみんなにまだ未来のことを話さない理由だ。
事務所に行くことを中止しなかったのは、『真世教団』絡みの情報を得るためだ。
黒崎組の組長の黒崎風路は、わざわざししゃも。のことを事務所に呼び出した。
そう、『松川会』...その裏にいる可能性が高い『真世教団』に家族を殺された可能性が高い"ししゃも。"を呼び出している。
ししゃも。が風路に対して「早く渡して」と何かを要求していたことも引っかかる。
ししゃも。が風路から俺に銃を向け直した理由も、風路が俺を知っていた理由も、
すべて「何か」を中心に繋がっている気がする。
………。
ダメだ。考えてもわからない。
本当は今すぐにでもししゃも。を問い詰めたい。
でも、今の状況でししゃも。が素直に話してくれるとは思わない。
それどころか、今一番動きが読めないのはししゃも。だ。
いま俺がししゃも。に対して疑念を持っていることが知られたらどんな行動を取るかわからない。
今はししゃも。を問いただすべきじゃない。
……。
少なくとも、風路がなにかしらの情報を持っているのは確実だ。
とりあえず、俺が今回の事務所訪問でやり遂げることは二つ。
デジデジの死を回避すること。
『真世教団』につながる情報を得ること。
「行こう。」
俺たちは、外で待機している公安部隊の元へ向かった。




