第59話 安否
「ちょっとぉ!!急にデカい音立てて入ってきたと思ったらししゃも。たちのこと完全無視決め込んでイチャつきだすってどーゆーコトっ!?」
「…ししゃも。」
一瞬、ししゃも。がデジデジを撃ったときの光景がフラッシュバックする。
呼吸が詰まり、それ以上なにも言えなくなる。
「な、なに...?」
俺が言葉を続けられなかったためか、ししゃも。が困惑したような、なにか身構えたような表情を見せる。
ししゃも。にも言いたいこと、聞きたいことが山ほどある。
でも今はまだ思考の整理が追いついていない。
俺はしばらく、ししゃも。の方を見たまま硬直していた。
「なんか言えよ!...な、なに!?
もしかしてししゃも。にも抱きつこうって思ってるんじゃないよね!?
やめてよ気持ち悪いっ!ホント最っ低!もう性欲猿じゃん!
…まぁ、燈真きゅんがどうしてもっていうなら?100万円で0.01秒ぐらい抱きしめさせてあげなくもないけどー?....//」
「いや、いい。」
「おーいっ!!!」
こいつは、少なくとも今は元気そうだ。
後で状況をちゃんと整理してから話したい。
「とにかく、デジデジが無事でよかった。」
「うん?燈真君が安心できたなら何よりだよ。」
デジデジは少し頭にはてなを浮かべながらも優しく微笑んでくれる。
「俺、まだ電話しなきゃいけないところがあるんだ。また戻ってくるな。」
「うん、わかった。」
俺の言葉にデジデジが応える。それだけでデジデジが生きていることを感じられて嬉しい。
「おい!燈真!お前俺たちの存在マジで忘れてるだろう!!」
ジペットのふてくされたような声が飛んでくる。
声のする方を見遣ると、ジペットとゼロが眉間にシワを寄せたり頬を膨らませたりして不満を表明している。
二人もこの部屋にいたのか...。
「...悪い。そこはホントに忘れてた。」
素直に謝っておく。
「もう、燈真君はしょうがないな。もうあと5分ぐらいでお迎え来るよ?」
ゼロが諦めたようなため息交じりの声で不満を漏らしつつ、俺に要件を伝えてくる。
迎え...
そうか、今は黒崎組事務所に向かう前の...
俺は過去の記憶から、今がいつどのタイミングなのかを把握する。
「悪い、少しだけ待ってもらえないか?大事な話をしなきゃいけないんだ。」
「マジか!...まぁ風路から時間指定されてるわけじゃねぇから大丈夫か!おやっさんにはどやされるだろうけど、そこは俺たちがなんとかしておくぜ!」
ジペットがハツラツとした様子で応えてくれる。
「悪い!助かるっ!ありがとうな!あとでちゃんと説明...できたらするから!」
「おぅ!」
ジペットがニカッと笑って親指を立てた。
正直、みんなにもちゃんと説明しておきたい。信じてもらえるかわからないけど...。
そのためにもまずはちゃんと状況を把握しねぇと。
「ちょっとぉおおお!勝手に話進めんなー!忙しいなら燈真きゅんは別に行かなくてもいいんだけどぉ!!勝手に着いてくるっていうからししゃも。はしぶしぶっ!!」
俺はなにかぶつくさ言っているししゃも。を無視してそのまま部屋を出た。
「こーのーハーゲーー!!!」
ししゃも。の鳴き声を聴きながら、俺は扉を閉める。
……それから、俺はリビングで母ちゃんの無事を確認し、
父ちゃんの部屋で父ちゃんの無事も確かめた。
二人とも何事もなく元気そうだ。
颯真は部活の休日練習で学校に行っている。
俺はGと電話していた空き部屋に戻り、颯真に電話をかける。
…まずは颯真の無事が気になる。でも今見てきた状況を踏まえると、たぶんそれは大丈夫だと思っている。
そうなると......気になるのは、あのとき颯真に包丁で刺されたことだ。
どうしてあんな...
「もしもし燈真兄ちゃん?」
「おっおう!ふっ颯真か...!今大丈夫か?練習中だったかっ!?」
あれこれ考えながらコールを待っていたから急に電話に出られて驚く。
「ううん!いまちょうど休憩中。どうしたの?何かあった??」
「いやっ...特に用はないんだけどよ...その...っ元気か?」
変なことは言えない...言いたくない。
「え?急にどうしたの??元気だよ!この後もまだまだ練習頑張らないと!」
よかった...いつもの颯真だ。
「そうか...!ならよかった!!」
「うん!......燈真兄ちゃん、なにかあった?」
「えっ?なっなんもないぞ!どうしてだ??」
「うーん、なんか変だから?」
「どこも変じゃねぇーって!大丈夫だ!心配すんなよ!」
「そうかなぁ...。なにかあったら言ってね。燈真兄ちゃんいつも一人で抱え込んじゃうんだから。」
こんな優しい奴が、あんなことするわけがない!
あれはやっぱり何かの間違いだ!
思い返してみたら、街ごと何かおかしかった。
おかしかった...けど、街中で殺人まで起こる"おかしさ"ってなんだよ?
あんなことがあり得るのか??
……。
…ダメだ!
今考えてもしょうがない。それはあとでGに話を聞こう。
「ありがとうな、颯真!お前の声聞けて安心した!練習頑張れよ!」
「うん!ありがとう燈真兄ちゃん!」
……
颯真との通話を終えて一息つく。
そして俺はそのままGに電話をかける。
「悪い、待たせたな。」
「...大丈夫です。みんなとは話せましたか?」
「あぁ。バッチリだ」
「...よかったです。」
少しの沈黙の後、俺が切り出す。
「教えてくれ、G。この世界になにが起こってるんだ?」




