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【BL男子の日常】出会った男たちが嘘つきすぎて、洗脳事件とヤクザ抗争に巻き込まれて恋愛どころじゃない件  作者: 須戸コウ
第11章 崩壊

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第55話 街

あれからどれくらい日がたっただろう?


週末はとうに過ぎたが、俺は学校には行かず、ベッドの上に寝そべって、灯りのついていない天井の照明をぼんやりと眺めている。

それすらも今はうっとうしい。俺は目をつぶり、動かすのも面倒に思いながら、自分の腕で目元を覆った。


暗い視界の中に、あの日の情景が浮かび上がってくる。


心を抉り取るような、悲鳴にも似たししゃも。の泣き叫ぶ声。

焦燥と絶望が混じったゼロとジペットの顔。


手のひらを滑る血の、生ぬるい感触。


――デジデジの死。



現実味のない映像のはずなのに、やけに鮮明に思い出せるその光景が、それを現実のものだと突きつけてくる。


最後はいつもデジデジが死の間際に見せた、あの心底安心しきったような微笑みを思い出す。

俺はその微笑みの意味がわからなくて、理由を探してまた映像の最初に記憶を巻き戻す。


それをずっと繰り返す。


どうしてこんなことになってしまったんだろう?

どうすればよかったんだろう?


「違う...ししゃも。は悪くない..........。ししゃも。は別に撃つつもりなんてなかったのに....!!」


ししゃも。の言葉を思い出す。


アイツは本当に、殺すつもりなんてなかったんだろうか?

あのときししゃも。を信じてあげられていたら、こんなことにはならなかったんだろうか?



あの後すぐにししゃも。の身柄はゼロたちによって拘束され、公安に連行されていった。


何度かゼロとジペットが家に俺の様子を見に来てくれたが、ししゃも。がその後どうなったのかを聞くのが怖くて何も聞けていない。そんな俺を気遣ってか、二人も俺にその話はしようとしてこなかった。


・・・・・。


もう夕方だ。

デジデジの死が悲しくて、自分が何もできない不甲斐なさも、何もできなかった後悔も苛立ちも、ずっと俺の中でぐるぐる回っている。でもまるで考えることを邪魔するように、自分の腹が空腹を知らせてくる。こんなときでも食べないといけないのか。


・・・わかっている。


ずっとこうしているわけにはいかないんだ。


俺は大きく息を吸ってゆっくり吐き出す。

もう一度大きく息を吸う。そしてそれを吐き出す勢いと共にベッドから起き上がる。


そろそろ母ちゃんや颯真たちが帰ってくる時間だ。家族にも心配と迷惑をかけてしまっている。


せめて外面だけでも前を向こう。


とりあえずは夕飯の支度だ。

俺はけだるい体を無理やり動かしてキッチンに向かい、冷蔵庫の中を物色する。

作れなくはないが、夕飯を作ると明日の朝や弁当用の食材が心もとない。


この量だと、もしかしたら母ちゃんが今日仕事帰りにスーパーに寄って帰ってくるつもりなのかもしれない。


ずっと迷惑をかけてしまっているから今日は俺がなんとかしたい。


俺は母ちゃんと買い出しが被らないように、今から買い物に行くことをメッセージアプリで伝えてから家を出た。


外はもう、だいぶ日が落ちてきている。


目に映るものすべてがやけに濃い茜色に映る。いつもなら「綺麗だ」なんて思うのかもしれないが、今の俺にはへばりつく様な赤が心底気色悪い。


いっそ早く日が落ちてしまえばいいのに。


俺はまぶしくて目をそむけたくなる夕日を睨みつけて、早く消えろと心の中で悪態をついた。


でもすぐに、自分のしていることがくだらなく思えてくる。


車のブレーキ、人が行き交う足音と話し声。すべてがいつもより騒がしく感じる。

俺は周りの景色も騒音も感じないで済むように、左右交互に進んでいく自分の靴先をぼんやり見つめ、その靴音だけに意識を集中させて歩く。



・・・・・・。



コツン・・・コツン・・・コツン・・・。



自分の足音が耳の中で反響する。



スーパーには行きなれている。下を見ていたってたどり着けるだろう。


そう思っていたのに・・・。



コツン・・・コツン・・・コッ



俺は足を止めた。





――赤。





目を背けたはずの気色の悪い夕日が、足元にいくつも転がっていた。



……なんだこれ?





その疑問はすぐに解消された。俺の中に根強く残るあの記憶が、すぐにそれがなんなのか正確に導き出したからだ。




血だ。




足元に無数の小さな血だまりが飛び散っている。



なんでこんなところに・・・?


心臓が跳ねる。


俺はゆっくりと視線を足元からあげていく。

挿絵(By みてみん)

あたり一面、血の池だ。


人・・・人・・・血にまみれた無数の人が、地面に転がっている。


それを認識した途端、頭に騒音が響く。


車のクラクション。黒板を引っ掻いたような、耳障りな急ブレーキの音。衝突音。人の泣き叫ぶ声、怒鳴り声。すべてが一斉に押し寄せる。



「あっ....あああああああ.......!!!」


自分の声も騒音の一つとなって重なる。



なんだよこれ!!!何が起きてるんだよ!!!!



包丁を持った男が叫びながら、逃げ惑う人々を刺している。


通り魔!?


違う!それだけじゃない。


店の看板のようなものを振り回して車を破壊する人。

血を吐きながら殴り合う人。

倒れている人の頭をコンクリートブロックで何度も打ち付けている人。

ありとあらゆる破壊行為が目の前で行われている。


まるでニュースで見た海外の暴動のような・・・いや、それ以上に残酷で、もう取り返しのつかないような何かが目の前で行われている。



怖い・・・



たじろいだ足の踵が血だまりを踏んで、ぴちょんと小さな音を鳴らす。



「・・・・・・!!」



いやだっ!!怖い!!!気持ち悪いっ!!!



耳に届いたその小さな音から遠ざかるため、俺は俯きながら走り出した。


挿絵(By みてみん)

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