第53話 揺らぐ信頼
「ししゃも。……? ジペット……? ゼロ?? ……お前ら…何…やってるんだ……??」
喉がひりついて、自分がちゃんと話せているのかわからない。
「お前……燈真……か??」
「え?」
突然、スーツの男......おそらく黒崎風路と呼ばれていた男に自分の名前を呼ばれ、俺はさらに混乱する。
いや、困惑なんてものじゃない。ここに飛び込んできた瞬間から、俺の頭は状況についていけていない。
「燈真きゅん! そこにいたら危ないっ! ししゃも。の後ろに来て!! 早く!!!」
「え!? どういうことなんだ!??」
叫び返す俺に、ししゃも。は銃を握る手を震わせながら続けた。
「いいから早く来て!!! こいつらっ……! ジペットとゼロは裏切りものだったの!」
「は!?」
思考が一瞬、真っ白になる。
「ししゃも。、お前なに言ってやがる!?」
ジペットが怒鳴るが、ししゃも。は引かない。
「この二人は公安なんかじゃなかった! こいつらは『松川会』っ! ししゃも。の両親を殺したやつらの手先!! そこの黒崎と結託して、ここでししゃも。を殺そうとしてたの!!」
「なに言って……!」
信じられない、だけどゼロとジペットの持つ銃先が、最悪の形でその話を補強するみたいに見える。
「燈真くん! 違う、ぼくたちは!!」
ゼロが必死に声を張り上げる。
「黙れ!!!!! 最初からししゃも。たちを騙そうとして近づいてきたくせに!!!」
ししゃも。の叫びは、泣き声と怒りがぐちゃぐちゃに混ざっているように感じた。
「燈真きゅん! 思い出してみて! 警察の秘密組織とも呼ばれる公安が、会って間もない他人に自分たちの素性を明かすと思う!?」
「燈真ダメだ! そいつの話は聞くな!」
ジペットの制止が飛ぶ。
「他人の家に急に転がり込んできたり、こんなヤクザの本拠地みたいなところに一般市民の子どもを連れてきたりすると思う!?」
「それは……っ」
言い返そうとして、言葉が喉に詰まる。
「最初にあった時からコイツらは燈真きゅんの名前を知ってたんだよ!? おかしいでしょ!? 過去の事件に関連してししゃも。のことを調べてたならわかる。でも燈真きゅんやデジざえもんのことを知ってるのはどう考えてもおかしいでしょ!?」
(……それは確かに普通に考えたらおかしいことだと思う。でもアイツらは……っ)
頭の中で、さっき聞かされた「この世界の外側」の話がよぎる。
「『あいつらはこの世界の外側から来たから、俺たちの名前を知っててもおかしくない』……?」
「え? お前なんで??」
思わず口にすると、ししゃも。は視線を逸らしながら答えた。
「ごめん。さっき3人で話してるときに、こっそり聞いてたの。」
「そう……だったのか……。じゃあっ」
アイツらが俺の名前を知っていてもおかしくないだろう?信じられるよな?そう言いたかった。
「ねぇ、燈真きゅん……。あんな話、本気で信じてるの??」
「え??」
「世界の外側とか……アニメの見過ぎ。」
ししゃも。は、吐き捨てるように言う。
「ねぇ、燈真きゅん、目を覚まして! あいつらは燈真きゅんが友だちがいなくなって不安になってる弱みに付け込んで、燈真きゅんが一番喜びそうなことを言って取り入ろうとしてるの!!」
「っ……そんなこと……」
否定したい...いや、アイツらを信じたい。けど言葉が出ない。
「じゃあ具体的にいなくなった友だちがどこにいるか教えてくれた? どうすれば見つかるか教えてくれた??」
「それは……」
「具体的なことは何一つ教えてくれてないよね!? 信じられるようなことは何一つないよね??」
「…………」
胸の奥が、ギリギリと締め付けられる。
・・・俺はアイツらの話が本当だと証明できるほどの確かな情報を持っていない。
「おいししゃも。! それ以上はやめろ!」
ジペットが声を荒げる。
「燈真、聞いてくれ! そいつは急に懐から銃を取り出して風路に突き付けたんだ!」
「嘘をつくな!!!!!!!!!!!!! このゴミカス野郎!!!!!!! お前らはそうやって優しい燈真きゅんのことを騙して、傷つけてきた!!!!!!! まだしらばっくれる気か!!!!!!!!!!!!!!!」
ししゃも。の罵声が部屋中に響く。
「燈真くん、聞いて! ししゃも。が銃を持っているのがおかしいことだってわかるよね??」
ゼロがすがるように言う。
「この銃はそこの黒崎とかいう男が取り出そうとしたときにとっさに奪ったの! ししゃも。、ここに来る前からずっと何かおかしいと思って警戒してたから! 相手が子どもだと思って油断してたんでしょ! このノロマカス!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「はぁ……このクソガキっ……」
黒崎風路が低く唸る。
「ねぇ燈真きゅん!! お願い信じて!!!」
「燈真、俺たちを信じてくれ! 俺たちはお前の味方だ!!」
「燈真くんっ! 騙されないで! お願い!!」
三方向から伸びてくる声。
どれも必死で、どれも苦しそうで、どれも俺の知っている「みんな」の声だった。
「なん……だよ……。なんなんだよこれっ!!!」
叫ぶしかなかった。叫んでも、何も整理なんてできないのに。
「…………」
視界がにじむ。
誰を見ていいのか、どこを見ていいのかもわからない。
「俺は……」




