第52話 銃声
「なぁ、ちょっと時間かかってねぇか!? 大丈夫だよな??」
ししゃも。たちとの通信が途絶えてから、およそ10分が経過していた。
俺は時計を見ながら、何度目かわからない質問をする。
「護衛班、何か様子に変化はあったか?」
「いえ、今のところはなにも。部屋の中が防音構造になっているようで、外からはほとんど会話が聞こえません。たまに微かに何か言っているのが聞こえてくる程度です。」
「そうか。わかった、引き続き頼む。」
「了解しました!」
膠着状態が続く――そう思われた、その時だった。
「おやっさん! いま部屋の中から銃声のようなものが……!」
「なんだと!?」
「……!!」
思わず、心臓が跳ねた。
「突入しますか!?」
「あぁ突入だ! 俺もすぐそちらに向かう!」
おやっさんは、勢いよく車のドアを開けて外へ飛び出す。
「お前たちはそこで待っていろ!!」
走り出しながら、俺たちに向かって短く怒鳴ると、そのまま事務所ビルの中へと消えていった。
(銃声……!? あいつらに何かあったのか!? ……もしかしてししゃも。が撃たれたのか!?)
嫌な想像が頭の中に一気に広がる。
「ししゃも。っ!!」
「ちょっ! 燈真君!?」
デジデジの制止の声を背中で聞き流し、俺はおやっさんの後を追うようにビルへ向かって駆け出していた。
(無事でいてくれっ……ししゃも。!!)
ビルの入口を突っ切り、階段を探す。
(確か6階って言ってたよな!?)
非常階段を見つけると、俺は手すりもろくに掴まず、6階まで一気に駆け上がった。
踊り場を抜け、6階に到達する。階段と廊下フロアを仕切る防火扉を、勢いよく開いた。
廊下には、すでに暴力団員と警察がごった返していた。人、人、人で、ししゃも。たちがいるであろう部屋へ、そのままでは到底辿り着けそうにない。
(くそっ! 力づくで押し通せばたどり着けるかもしんねぇけど、どんくらいで行けるかわかんねぇ!!)
息を荒げながら周囲を見回す。
(……っ窓! あそこから外に出て、ししゃも。たちがいる部屋まで窓つたいに移動できたりしないか!?)
俺は走り寄り、勢いのまま窓を開ける。
冷たい外気が一気に流れ込んだ。
(廊下の人だかりの中心があの辺だったから……あそこらへんか!!)
ししゃも。たちがいると思われる部屋の位置を、廊下側のざわめきと窓の並びから割り出す。
(よしっ、行けるな!)
深呼吸一つ。
俺は窓枠を乗り越え、ビルの外側へと身を出した。
ビルの側面には、排気口のキャップや排水パイプが等間隔で取り付けられている。それらに掴まり、窓枠のくぼみに足を引っかけながら、横へ横へと進んでいく。
地上から20メートルほどの高さ。落ちたらおそらく死ぬだろう。でも今はそんなことはどうだっていい。
(……よし、たぶん次の窓がアイツらがいる部屋だな!)
目的の窓にたどり着く。中の様子をうかがおうとするが――
(……クソっ、鍵も……開かねぇよな。……じゃあ!!!)
ブラインドが下りていて、ほとんど中は見えない。
迷っている時間はないと判断し、俺は窓を思いきり蹴りつけた。
ガシャァンッ!!
ガラスが一気に砕け散り、鋭い音が部屋中に響く。その破片の中を、俺は叫びながら飛び込んだ。
「ししゃも。ーーーーっ!!!!!!」
足元でガラスが砕ける音を聞きながら顔を上げる。
目に飛び込んできた光景は――たぶん、俺が想像していたものとは、まるで違っていた。
「え……?」
「……燈真くん!?」
「燈真っ……!」
ゼロとジペットが、驚愕の表情でこちらを見る。
ししゃも。は、一瞬だけ俺の方へ横目を向けると、すぐに前へと視線を戻した。
その手には、銃。
銃口の先には、スーツの男。
さらに――ジペットとゼロも、銃を構えていた。
・・・ししゃも。に向けて。




