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【BL男子の日常】出会った男たちが嘘つきすぎて、洗脳事件とヤクザ抗争に巻き込まれて恋愛どころじゃない件  作者: 須戸コウ
第10章 「七代目黒崎組」突入

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第51話 黒崎風路


トントントン。


黒服の男が、事務所内の一室の前で立ち止まり、扉をノックした。

おそらくここが、「七代目黒崎組」の組長・黒崎風路くろさきかざみちがいる部屋なのだろう。


「組長、ガキとサツを連れて来やした!」


「おう。入れ。」


低い声が、扉越しに返ってくる。


「はいっ! 失礼しやす!!!」


男は返事をすると扉を開け、ジペットたちの方を顎でしゃくった。中に入れという合図だ。


ジペットとゼロを先頭に、その後ろに護衛隊員6名がししゃも。を挟み込むような形で中に入っていく。


「おいおい、随分な大所帯だな。突然の訪問にしては礼儀がなってないんじゃないか?」

挿絵(By みてみん)

部屋の奥、上座に座る男――黒崎風路が、薄く笑って言った。

グレーのスーツに首元までしっかりと絞められたネクタイ。荒々しさを感じさせない落ち着いた低い声が、彼がやり手であることを瞬時に理解させる。


「俺とお前の仲だろ? な! 風路!! さっきは急に電話切りやがって。寂しかったぜ?」


「てめぇ組長に対して馴れ馴れしくしやがってっ!!」


先ほど案内してきた黒服の男が怒鳴ると、それに同調するように、部屋の中に立ち並んでいる十名ほどの黒服たちが一斉にジペットを睨みつける。


「まぁ、いい、いい。こいつのこの態度にはもう慣れてる。お前たちは静かにしてろ。」


黒崎風路が手を軽く振ると、男はハッとしたように頭を下げた。


「……っ! ……組長がそうおっしゃるなら……。出過ぎた真似をしてすいやせんでした!」


「さすが、風路!! 物分かりのいい男だぜ!」


「……っ!」


黒服たちは口こそ閉ざしているものの、ジペットに向ける視線はさらに鋭さを増していく。


「はぁ……。」


黒崎は小さくため息をつき、ジペットたちをまっすぐに見据えた。


「なぁ、警察のポンコツコンビさんや、提案があるんだが、後ろの護衛たちを外に出してくれないか? この後あまり公にしたくない話もしなきゃならねぇからな。」


そう言って、黒服の男たちにも目を向ける。


「お前たちも外で待ってろ。」


「しかしっ!」


「はぁ……何度も言わせないでくれ。出てけ。」


短く、しかし強い圧を込めた言葉。


黒服の男は、悔しそうにうなだれた。


「……わかりやした。」


男たちは少し落胆した様子を見せながらも、黙って部屋の外へ出ていく。


ジペットが小声でゼロに囁いた。


「なぁゼロ、どうする?」


「んー、思ってたより敵意もなさそうだし、大丈夫じゃないかな。」


その判断に、通信機越しに中林の声が重なる。


「それでいい。やつに従え。」


「そうだな! お前らも外で待っててくれ。」


ジペットが振り返って護衛たちに呼びかけると、護衛班のリーダーがきびきびと答える。


「はっ!」


彼らは一斉に敬礼し、気持ちのいい返事を残して部屋を出ていった。


「よし、これで話せそうか!?」


「いや、まだだな。」


黒崎風路は、ジペットたちをじっと見て続ける。


「通信機の類も一度切ってくれ。どうせ外で別動隊に待機させてんだろ? さっきも言ったが、あまり口外したくない話もしなくちゃならないからな。」


「それはさすがに難しいかな……」


ゼロが少し困ったように眉を下げる。


「話を聞きに来たのはお前らの方だってこと忘れんな。従えないなら話は終わりだ。」


「ちょっと待ってくれ……! おやっさん、聞こえるか? どうする??」


ジペットが通信機に向かって問いかける。


しばしの沈黙の後、中林の舌打ちが混じった声が返ってきた。


「……チッ。……そいつの指示に従え。」


「了解だぜ!」


ジペットとゼロは耳内に装着していた小型イヤフォンと、襟元の小型マイクを外し、そのまま黒崎風路に見せてみせる。


「ほら、外したぞ? これでいいか??」


黒崎は半眼で二人を見た。


「はぁ……。どうせまだ隠し持ってんだろ? 早くだせ。あとそっちのガキにもつけねぇわけねぇんだからはずさせろ。」


「クソ! 食えない男だな!!」


舌打ち気味に言いながら、ジペットとゼロはそれぞれ所持していた予備の通信機を取り出して机に置く。

同時に、ししゃも。に取り付けられていた通信機も外すよう指示する。


◇ ◇ ◇


「……護衛班、聞いてたな? ジペットたちとの通信がなくなる。何か異変があったらすぐに俺に連絡しろ。」


「了解しました!」


おやっさんの無線からの指示に、外で待機している護衛班リーダーが即座に返事をする。


車の中でそれを聞いていた俺は、落ち着かない気持ちで問う。


「なぁ、音聞こえなくなっちまって大丈夫なのか!?」


「今のところ、な。アイツらに何かあったらすぐに外にいるヤツらを向かわせる。心配するな。」


おやっさんの声は冷静だったが、俺の胸のざわつきは収まらない。


「…………」


(ししゃも。……、無事でいろよ。)


無意識に拳を握りしめていると、デジデジが横からそっと声をかけてきた。


「きっと大丈夫だよ。ジペット君やゼロ君もついてるし。」


「あぁ……そうだな! ありがとう。デジデジ。」


少しだけ、呼吸が楽になる。


◇ ◇ ◇


部屋の中。


「おい、ゼロ。お前まだ明らかに耳につけてるよな?」


黒崎がゼロの方を顎でしゃくる。ゼロのトレードマークともいえる大きなヘッドフォンが、光を反射しピカリと輝く。


「これはこういうものだから。外せないの! わかるでしょ?? わかって!? これはどうしようもないの!!!」


ゼロは必死に訴える。


黒崎は額に手を当て、短く舌打ちした。


「……チッ。まぁいい。とりあえずそこに座ってくれ。」


ゼロたちは言われた通り、目の前の会議用卓の椅子に腰かけた。


「よし、これで今度こそ話せるな? な!?」


ジペットが身を乗り出す。


「ふっ、そうだな。……でもその前に、話すことがあるのはそっちじゃないか?」


黒崎風路は、ゆっくりと視線をししゃも。に向ける。


「なぁ? ……ししゃも。」


「……え!?」


ジペットとゼロが同時に声を上げた。


ししゃも。は、ぎゅっと唇を結んだまま黙っている。


挿絵(By みてみん)

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