第50話 突入
突入班は、ジペットとゼロを先頭に事務所へと歩き出した。
後ろには、護衛隊員たちとししゃも。の姿。
エントランス前に立っていた黒服の男に、ジペットが声をかける。
「よう! さっきぶりだな! ししゃも。を連れてきたぜ。今度は通してもらうぜ!」
黒服の男は、あからさまに舌打ちした。
「ちっ……ホントに来たのかよ。ガキはどこだ?」
「ここだよー。」
ゼロが答えると、ジペットとゼロの後ろからししゃも。がちょろっと顔を出す。
男は深くため息をついた。
カシャッ。
「ちょっとぉ! 盗撮やめてください!!!」
スマホを構えた男がシャッターを切ると、ししゃも。がすかさず叫ぶ。
「うるせぇ!!! 誰のせいでこんなめんどくせぇことしなきゃならねぇと思ってんだ!!! このガキが!!!」
黒服の男はししゃも。の抗議を片手でいなしつつ、スマホを器用に操作する。どこかへ電話をかけているようだ。
「……あっ組長! お勤めご苦労様です!! 例のポンコツコンビ、ガキ連れて来やした! いま写真で送った野郎です! ご確認お願いしゃす!!!」
「おい!! ししゃも。のこと無視して話すんなぁ!!! このハゲーー!!!」
「誰がハゲじゃこの野郎!!!!!……っ! すいやせん! こっちの話です!!!」
電話口に慌てて取り繕いながら、男は横目でししゃも。を睨む。
「このタコ! ハゲ!! 盗撮魔!!! 変態!!!! 痴漢!!!!」
ししゃも。は暴言を吐きながら、男が通話中なのをいいことに、ボコスカふにゃすかと拳やら足やらで黒服の体を叩きまくる。
「……このガキっ!!! っいや、なんでもないっす……!!!」
男はペースを乱されながらも、どうにか電話を続ける。
「あっ……オッケーすか!? ありがとうございやす!!! いまそっちに連れてきやす!!!!」
電話口にペコペコと頭を下げるようにして通話を切ると、男はくるりとししゃも。の方へ向き直った。
「このガキ!!! さっきはよくもやりやがったな!!!」
拳が振り上げられる。
「…………!」
ししゃも。がビクッと肩を跳ねさせた、その瞬間――
「おいやめとけ! 一応俺たち警察だからな! 殴ったらお前が不利になるぜ?」
ジペットが一歩前に出て、男の動きを止める。
男はギリギリのところで拳を引っ込め、歯ぎしりをした。
「先に殴ったのはこのガキだろ!? それはいいのかよ!??」
「“殴る”にも入らないようなふにゃふにゃパンチだったからな。それにこいつはまだ子どもなんだ。多めに見てやってくれ。」
ジペットが肩をすくめてそう言うと、男は舌打ちする。
「……チッ!」
しばらく黙り込んだ末、男は表情を切り替える。
「……確認が取れた。組長のところに連れていく。ついてこい。」
怒りをなんとか飲み込んだ様子で、男は踵を返して歩き出す。
「べーーっ!」
ししゃも。は男の背中に向かって、思いきり舌を突き出す。
一行は男の案内でエレベーターに乗り込み、上へと上がっていく。表示が「6」で止まり、扉が開く。
「そうか、風路のいる部屋は6階か。前来たの結構前だからすっかり忘れてたぜ。」
ジペットがふと呟くと、前を歩く男が振り返りざま怒鳴る。
「黙ってろ! お前みたいなポンコツが組長を呼び捨てにしやがって!!」
「な!? 俺はポンコツじゃないんだな!!」
言い合いながら、一行は廊下の奥へと進んでいく。
◇ ◇ ◇
その頃、ビルの外。
車の中で様子を聞きながら待機している中林は、無線に向かって短く命じた。
「6階だ。B班、バレないように数人ずつタイミングずらして階段から上がらせろ。A班、C班はそのまま待機だ。」
ジペットたちの会話を傍受しながら、外にいる部隊へ冷静に指示を飛ばしていく。
俺とデジデジは、後部座席で小声で話していた。
「なぁデジデジ……」
「どうしたの? 燈真君?」
「なんか映画みたいでかっこいいな!」
デジデジが苦笑まじりに肩をすくめる。
「燈真君、結構緊張感なくなるの早いね。」
俺はちょっと気恥ずかしくなって、窓の外を見た。
◇ ◇ ◇




