第49話 作戦決行
「早くねぇか!?」
思わず素で声が出る。ふたりは、ほぼ踵を返したようなタイミングで戻ってきていた。
「はぁ……お前らなぁ……」
おやっさんが、眉間を押さえながらため息をつく。
「だってしょうがないんだよ。組長の風路くんに会いに来たよって言ったら、下っ端たちが出てきて、ししゃも。がいないと中には入れないっていって入れてもらえなかったんだ。」
ゼロが申し訳なさそうに説明した。
「やる気あんのかよ!!! この役立たずが!!!!!」
ししゃも。が即座にブチギレる。
「ドンマイだな!!」
俺はとりあえず励ました。
「まぁ、なんとなくは予想してた展開だね……」
デジデジが苦笑いで肩をすくめる。
「そう気を落とすな。次があるさ! 失敗が次の成功に繋がるんだ。」
ジペットが妙に前向きな声を出す。
「ぽ前が言うな!!!」
ししゃも。のツッコミがすかさず飛んだ。
おやっさんは、もう一度深く息を吐いてから、きっぱりと言った。
「はぁ……。じゃあ手はず通りに作戦第二段階だ。ジペット、ゼロ、ししゃも。の3名と護衛隊員6名で乗り込む。
俺はここでお前らの会話を通信機で傍受しながら待機。基本的にお前らからの応援要請を待つが、有事の場合は俺の判断で外にいる隊員を突入させる。」
「おうよ!」
ジペットが親指を立てる。
俺はたまらず口を開いた。
「なぁ、やっぱり俺も一緒に行けないか?」
胸の奥がざわついて、じっとしていられなかった。
「なんども言わせるな! ガキの遊びじゃねぇんだ!!」
おやっさんの声が、ピシャリと俺を叩く。
「だいたいお前らをここまで連れてこさせたのだって……! いや、もうそれはいい。とにかくお前らはおとなしくここで待ってろ!!」
最後の方は、言葉を飲み込んだみたいに途中で切られた。それでも、そこに込められてる怒りと心配は、嫌でも伝わってくる。
「……っ」
悔しさと情けなさで、喉の奥がつまる。
「燈真、安心しろ! ししゃも。のことは俺たちが守る!」
ジペットが、にかっと笑って親指を立ててみせた。
「そうだよ、無事に戻ってくるから。」
ゼロもいつもの柔らかい笑顔で俺を見る。
「……。」
言いたいことは山ほどある。でも、全部飲み込んだ。
「燈真君、ここは彼らに任せよう。」
横でデジデジが、静かに言う。
「燈真きゅん、心配しないで。ししゃも。は大丈夫だから。」
ししゃも。も、ほんの少し不安そうにしながら、それでも笑おうとしていた。
「…………わかった。無理はしないでくれよ。」
ようやく絞り出した言葉は、思っていたより小さかった。
「……うん。」
ししゃも。が、きゅっと唇を結んでうなずく。
おやっさんは全員の顔をざっと見回してから、短く息を吸った。
「……よし。作戦決行だ! 各員、配置につけ!!」
『おう!』『はーい!』
ジペットとゼロの声が重なる。
その背中が「七代目黒崎組」のビルへ向かっていくのを見送りながら、俺は拳をぎゅっと握りしめた。
――頼む。絶対、全員無事に戻ってきてくれ。




