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【BL男子の日常】出会った男たちが嘘つきすぎて、洗脳事件とヤクザ抗争に巻き込まれて恋愛どころじゃない件  作者: 須戸コウ
第1章 嵐のような出会い

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第4話 俺には関係ない

「ちょ待てよ!」

「なんだよ!!」


「返して!」


「何をだよ!!」


「ししゃも。のペンダント!」


「はぁ? ペンダント??」


「持ってるでしょ?? ししゃも。のペンダント!!」


「持ってるわけねぇだろ! 知らねぇよそんなもん!!」


「嘘だ!!!!!!!!!!!!!」


「!?」


「だってしゃものペンダントなくなってるもん! ずっと首からぶら下げて大事に持ってたの! でも気づいたらなくなってたの! 落としたとしたらぽ前とぶつかったとき以外ありえないの!!」


「はぁ? んなこといったってそんなもん見てねぇし持ってねぇんだよ! あのとき落としたんならさっきの場所に落ちてるんじゃねぇのか?」


「なかったの!!! ペンダントなくしたことに気づいてすぐにさっきの場所に戻ったけどどこにもなかったの!! だからぽ前が拾って盗んだんでしょ!!」


「盗むわけねぇだろ!! 俺はそういうことはしないんだ!」


「はぁ!?? そんなの信じられるわけないじゃん! 見るからに素行が悪そうな顔してるし、制服も腕まくりしちゃってヤンキー気取りじゃん? マジウケる。ぽ前みたいなやつが悪さしてる自分かっけーとか思って犯罪に手を染めるんだよ! だっさ! マジダセェ!!!」


「この野郎! 年下だから大目に見てやってたら好き勝手言いやがって! 制服は兄貴のおさがりでサイズが合わねぇから捲ってるだけなんだよ!! このっ……ばか野郎!!」


「うっわ!! ちょっと年上だからって先輩風吹かせてんのマジ無理ぃ~! ていうか年下相手にむきになってるの滑稽すぎてコケコッコーなんですけどぉ!! はぁダサっ!!!」


「……っ!!!!!」


ダメだ、会話が通じない。これ以上話していても、俺の精神が削られるだけだ。


「……はぁ……もういい。ほんとに帰る。とりあえずお前のペンダントはほんとに知らない。じゃあな」


「待てこのっ……痛っ!」


少年が立ち上がって俺を引き留めようとする。けど、さっき転んだときに両膝をやったのか、立ち上がるのもやっとって感じだ。


「……」


(……もう知らねぇ)


一瞬、様子が気になって顔が歪む。けど、すぐにふいっとそいつから視線をそらして歩き出した。


「痛い……っ! ちょっと待って! ……待てぇ!!!!!」


少年は俺を追いかけようとして数歩踏み出すが、足が痛いのかすぐに立ち止まってしまう。代わりに、せめて声だけでもって感じで俺を引き止めようとしてくるけど、俺は無視してすたすたと歩いていく。


すぐに距離が開いた。二十メートルくらいは離れただろうか。


「待って……! ほんとに待っ!」


「いたぞ!!! こっちだ!!」


俺を呼び止める少年の声にかぶせて、野太い男の声があたりに響き渡る。


「ちょこまか逃げ回りやがってこのクソガキ!!!!」


空気が一気に変わったのを感じて、思わず振り返る。


さっき少年を追いかけていた、あの黒服の男たちが、またそいつめがけて走ってくるのが見えた。


少年もそれに気づいて逃げようとしている。けど、ケガのせいで思うように動けてない。早歩きよりちょっとマシなくらいのスピードでしか前に進めていない。


(……俺には関係ない)


胸の奥に一瞬、迷いが浮かぶ。けど、俺は少年たちから目をそらし、また前を向いて歩き出した。


(……俺には関係ないんだ。あんなやつ知らない。人のこと散々悪く言いやがって……いい気味だろ)


「オラァ!! やっと捕まえたぞクソガキ!!! さっさとこっちにこい!!!」


「イヤ!!!! 痛いっ!!!! 離して……っ!! 痛いっ! 誰か助けて!!!!!!」


背中の向こうから、少年の悲痛な叫び声が突き刺さる。


(振り返っちゃだめだ。きっと面倒なことになる。いまはそんなことしてる場合じゃないんだ。アイツを……コウを探さないと……)


自分でもわかるくらい顔をしかめながら、それでも俺は、決意したみたいに足を前へ前へと動かし続けた。


「痛いっ!! 痛いっ!! 痛いっ!!!! 誰か助けて!!! 誰かぁ!!!!!!!」


(聞いちゃだめだ聞いちゃだめだ聞いちゃだめだ……! 何も聞こえない何も聞こえない何も聞こえない!)


耳をふさぎ、そのまま走り出す。少年の声が聞こえなくなるくらい遠くへ、遠くへ。


「いやぁ!!! 誰か!!!!! 助けて助けて助けてっ!!!! やだぁ!!!!!!!!!」


そのとき、俺の脳裏に映像が浮かんだ。


挿絵(By みてみん)


「黙れクソガキ!!!!」


脳内の光景の中で、男が怒鳴りながら少年の顔を何度も何度も殴りつける。少年の鼻や口から、べっとりと血が滴り落ちていく。


その映像が、次の瞬間には現実のものになりそうで――怖くなった。


俺は慌てて振り返る。


「……!」


挿絵(By みてみん)


幸い、少年はまだ殴られてはいなかった。


けど、そいつの髪は乱暴に引っ張られ、身体も無理やり押さえつけられている。


思ってた以上に、目の前の光景は暴力的で、そして悲惨だった。


「誰か!!!!! 助けて助けてっ!!!! いやぁあああ!!!!!!!!!」


「うるせぇんだよ!!! 黙れクソガキ!!!!」


少年の顔を殴ろうと、黒服の男が拳を振り上げる。その刹那、少年は恐怖に耐えきれず目をぎゅっとつむった。


「ぐふぁっ!!!!!!!!!!!!!!」


(……な、に……??)


殴られる衝撃が来ない。


恐る恐る少年が目を開ける。その視線の先で、自分を殴ろうとしていた男が――宙を舞っていた。




挿絵(By みてみん)

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