第48話 おやっさん
「ピンポーン」
家のインターホンが鳴った。公安組織の応援が到着した合図だ。
「お、来たみたいだな。」
ジペットがすっと立ち上がる。
「みんな準備できてる?」
ゼロが確認する。
「おう……!」
「うん……!」
「はい……!」
俺とししゃも。、デジデジ、それぞれが返事をする。
「それじゃあ、出発だぜ!!」
ジペットの声に合わせて、俺たちは玄関へ向かった。
これから何が起こるのか、正直に言うと怖い。
それでも――みんなと一緒なら、行ける気がした。
家のドアを開けて外に出ると、すぐ目の前で誰かが腕を組んで待ち構えていた。
無精ひげ交じりの顎、くたびれたジャケット。けど立ってるだけで空気がピリッとするタイプの大人だ。
「おやっさん!」
ジペットが、嬉しそうに片手を上げる。
「ったく、お前らは……。先輩を面倒ごとに駆り出しやがって。」
男はため息まじりにそう言って、眉間にシワを寄せた。声も低くて、ちょっと怖い。
「感謝するぜ! みんな、紹介する。この人は『中林和久』。通称おやっさん。俺たちの先輩だ。みんなおやっさんって呼んでくれ!」
ジペットが得意げに紹介すると、男はじろっとこっちを見て、わずかに目を細めた。
「……おい、俺の呼び方をお前が決めるんじゃねぇ。」
低い声で文句を言いながらも、すぐにふっと力を抜く。
「……まぁ呼び方なんてなんでもいい。よろしく頼む。」
思ったより柔らかい言葉が続いて、ちょっとホッとする。
横でゼロが、俺たちの方に手を向けながら説明してくれた。
「こっちはさっき話してたししゃも。、あとの二人はししゃも。の友だちの燈真くんと、デイジーことデジデジ。」
「スイス〜ry」
またししゃも。とデジデジのよくわからない自己紹介が始まったが、本当によくわからないので記憶からカットした。
そのまま俺たちは、公安組織が用意してくれた車に案内された。黒い車体に、きれいに磨かれたボディ。映画で見る「それっぽい車」って感じだ。
全員で乗り込むと、車は静かに走り出す。窓の外の景色が流れていくのをぼんやり眺めていると、おやっさんが今回の作戦の説明を始めた。俺たちはその話に耳を傾ける。
やがて車は止まり、現場に到着した。車内から「七代目黒崎組」の事務所が見える。事務所っていうより、小ぶりなビルって感じだ。窓は暗くて、なんとなく圧がある。
「つーことで、お前たち3人は、このバカふたりが戻ってくるまでは俺と車の中で待機だ。」
「はっはい……!」
俺は思わず背筋を伸ばして返事をする。隣でデジデジも真面目な顔をしていて、ししゃも。は少しだけ不安そうに唇を噛んでいた。
「おいおいおやっさん! バカはねぇぜ! 俺たちはこれでもプロフェッショナルなスペシャリストだ! なぁゼロ?」
ジペットがいつもの調子で胸を張る。
「そうだよぉ。ししゃも。たちが危険な目に会わないように、ぼくたち二人で解決してくるからね!」
ゼロもニコニコしながら続けた。
「おうよ! お前ら、任せとけよ! じゃあ行ってくる!!」
ふたりはやる気満々といった顔で、ビルの方へと歩いていく。その背中を、俺たちは車の中から見送った。
……頼むから、無事に戻ってきてくれ。
そう心の中で願っていたら――
「ただいまだな! 無理だったぜ!」
ジペットの声が聞こえた。




