第42話 作戦会議
「じゃあちょっと待ってろ! 今電話してやる。」
ジペットがスマホを取り出し、どこかに発信する。
…………。
「もしもし俺だ! ジペットだぜ! 風路か?」
どうやら相手は、七代目黒崎組の誰からしい。
「おうおう! 元気にしてたか!?……そうか。ちょっとお前に野暮用でな。」
ジペットはいつもの調子で話を進めていく。
「実はかくかくしかじかなんだ。」
「……え? うまうまシマウマか!?」
「あっ、おい! ちょっと待て! おい!!」
慌てて引き止めようとするが――
通話終了。
ジペットがスマホを見下ろしながら肩をすくめる。
「なんだって?」
ゼロが尋ねる。
「それが……ししゃも。を連れて来いってさ。」
「え?」
ししゃも。がびくりと肩を揺らした。
「連れてくるまで何も話すつもりはないらしい。」
「なっなんでそういうことになるんだ!?」
思わず声が裏返る。
「俺にもわからない。」
ジペットは首を振る。
「ただ、一つ言えるのは、すでに『七代目黒崎組』がししゃも。の存在を認知していたってことだ。」
「つまり、今回の事件に『七代目黒崎組』が何らかの形でかかわっている可能性が高いってこと?」
デジデジが静かに整理してみせる。
「そうなるな。」
ジペットが頷いた。
「……どうする?」
ゼロが問いかける。
「やっぱり一度、俺とゼロのふたりで乗り込もう。全部とまではいかないが、何かしらの情報は得られるかもしれない。」
「それがいいね。」
ゼロも同意する。
「ししゃも。も行く。」
ししゃも。が真っ直ぐな目で言った。
「お前、何言ってるんだよ!?」
思わず声を荒げる。
「そうだよしゃもしゃも、もしかしたらしゃもしゃものことを付け狙ってるやつらのアジトかもしれないんだよ?」
デジデジも心配そうに止める。
「そんなのわかってる!」
ししゃも。は食い気味に言い返した。
「危ないかもしれない。でも、ししゃも。は真実が知りたいの!」
「ししゃも。……」
ジペットが名前を呼ぶ。
「だって、このままだったらさっきの店主さんみたいに燈真きゅんたちが危険な目に会うかもしれないんでしょ?」
「お前やっぱりまだ気にしてたのか?? そんなの気にしなくていいって言ってるだろう!?」
ししゃも。はなにも悪くない。それなのに自分を責め続けている小さな身体を見ると、胸がぎゅっと痛くなる。
「気にするなって言われても気にならないわけないでしょ!? 燈真きゅんがししゃも。の立場だったら気にせずにいられるの!??」
「それは……」
言い返そうとして、喉の奥で言葉が詰まった。
確かに俺がししゃも。の立場だったら同じように考えるかもしれない。
でもだからこそ、痛いほどししゃも。の気持ちがわかるからこそ、少しでも楽にしてやりたい。
どうすればいい?
なんて言えばししゃも。の気持ちに寄り添える?
考えても考えても、適切な言葉が出てこない。
一瞬、昔の自分の姿が頭をよぎった。
自分の気持ちを素直に伝えられずに、友だちができなかった頃の俺だ。
俺は結局...あの頃から何も変わってないのか...?
・・・・・・
いや違う!!
もうあの頃の俺じゃない!
ちゃんと伝えるんだ!今、俺がししゃも。にしてやれることを...っ!!
「俺も一緒に行く!」
「はぁ!?なんでそうなるの!!」
俺の言葉に、ししゃも。が困惑と怒りが混じったようなデカい声で返答する。
「もう決めたんだ!お前がどうしても行くって言うなら俺もついていく!俺がお前を守る!俺がそばにいる!!」
「ちょっ.../// ……はぁ!??」
ししゃも。の素っとん狂な声が部屋に響く。心なしか顔が赤いような...?
……やっぱり怒ってるのか?
「さっきのししゃも。の話聞いてたの?ししゃも。はもう誰にも迷惑かけたくないって言ってるの!!」
「迷惑なんてかかってねぇよ!!」
「だーかーらーー!!!」
「まぁまぁ、いったん落ち着こうよ。もう少し冷静になって、なにかいい方法がないかもう少し考えてみよう。」
また口喧嘩のようになる俺とししゃも。の間にデジデジが入り、柔らかい声で場をなだめる。
「そうだね。そうしよう。」
ゼロも頷いた。
少し強引に話を進めようとし過ぎたかもしれない。俺は反省して、一度大きく息を吸って呼吸を整えた。
…………。
5人で、どうするべきか話し合いを重ねた。
「よし、じゃあそれで決まりだな!」
ジペットが手を打つ。
「まずは公安に応援を要請する。準備が整い次第、ぼくとジペットで『七代目黒崎組』に乗り込んで話を聞いてくる。その間、ししゃも。たちには近くの車の中で待機しててもらう。もしぼくたちが話し合いに失敗した場合、状況に応じてししゃも。を連れて再度アジトに訪問する。これでいいね?」
ゼロが段取りをまとめてくれる。
「あぁ、OKだ!」
「わかった。」
「僕も大丈夫だよ!」
俺とししゃも。、デジデジも、それぞれ頷いた。
ししゃも。の車待機に、俺とデジデジも同行することになった。正直、デジデジまで「ついていく!」と主張し出すとは思わなかった。
俺と一緒でデジデジもししゃも。のことが放っておけなかったんだろう。
本来なら、公安がただの一般人の同行を許すはずのない場面だろうけど、ジペットたちのおかげで、なんとかゴリ押せたらしい。
公安には「ししゃも。が不安がっており、友人である二人が同行できるのであれば自分もアジトへ訪問してもいいと言っている」と、ちょっと盛った報告をして無理やり認めさせた――と、あとでジペットが得意げに教えてくれた。
「公安の準備が整い次第、ここに迎えが来る。たぶん1時間ぐらいだな。それまで心の準備して待っててくれ。」
ジペットがそう言って、こちらを見回す。
「わかった!」
不安もある。でも、それ以上に――ししゃも。を一人にはしたくなかった。




