第39話 アンドロイドぉ!?
「なぁ、お前らってなんなんだ? ゼロはあいつの双子……なのか?? この世界の外側から来たってどういうことだ? お前らが公安だって言うのは嘘なのか?」
落ち着く暇を与えないくらい、疑問が次々湧いてくる。
「おいおい、質問攻めだな! まぁいいさ。答えられることは答えてやる。探求心があるのはいいことだからな!」
ジペットが、「どんとこい!」と言わんばかりに胸を叩きながら言う。
「まず一つ目の質問の答え。ぼくはマスターの双子ではないんだ。嘘をついてごめんね。」
ゼロが、申し訳なさそうに口を開く。
「じゃあ……なんなんだ?」
「僕はマスターの記憶と人格をもとに作られたAI……アンドロイドなんだよ。」
「アンドロイドぉ!?」
思わず素っ頓狂な声が出る。
よくよく見てみたら、確かにゼロは近未来的なファッションをしている。
サイバーパンクを思わせる紫系統のノースリーブパーカーとジャケット。大きなヘッドフォンはまるでボーカロイドのキャラクターみたいだ。
…ていうか羽が生えてる!?ばっさばっさ羽ばたいてる!?これってもしかして結構おかしいんじゃないか!?
どうして俺は今まで何も疑問に思わなかったんだ!?!?
「うん。でもこの世界で生活しているマスターはぼくのことは知らないかも。色々複雑なんだよー。」
俺の混乱を遮るように、ゼロは肩をすくめて笑った。
「そ……そうか。よくわかんねぇけど、わかったぜ……。」
全くもって完全には理解できないけれど、とりあえず頭の端っこに置いておく。
「次の質問に答えるぜ。俺たちが世界の外側から来たっていうのはつまりだな、この世界の中の感覚で言うところの“ゲームの世界に入り込んだ”ようなイメージに近い。」
ジペットが、今度は少し真面目な顔つきで続ける。
「この世界にもMMORPGがあるだろう? MMORPG、つまり“Massively Multiplayer Online Role-Playing Game”は、大勢のプレイヤーが同時に接続して遊ぶオンラインゲームのことだ。」
「なるほど……それはなんとなくわかるな。」
まるで授業を受けているみたいな気分だ...。
「そして三つ目の答えにつながるが、俺たちはこの世界の中において“公安”であることに違いはない。」
「RPGにも色々種類があるけど、ゲームを始めた瞬間に自分が操作するキャラクターの出身や名前、その他の設定が決まっているものがあるでしょ?」
ゼロが、静かな声で補足を続ける。
「それと同じ感じで、ぼくたちのこの世界における役割も割り当てられたんだよ。」
「なるほど……な。」
なんとなく、全体の構造だけは掴めてきたような気がする。
「ちなみにだな。これは言おうかどうか迷ったんだが。……ししゃも。とデジデジも俺たちと同じでこの世界の外側から来たんだ。」
ジペットが、少し声を落として言った。
「はぁ!?」
思わず立ち上がりそうになる。
ガタンッ!
「ん? なんか音したか?」
背後の方から妙な音がした気がして、振り返ろうとする。
「うーん、気にしなくて大丈夫だよ。めんどくさいから。」
ゼロの軽い声に、なんとなく肩の力が抜ける。
「そうか……?」
深く考えるのをやめることにした。
「で、アイツらも外側から来たって!?」
「そうだ。でもな、あいつら俺たちが思ってたよりポンコツでのろまだったみたいだ。この世界に入る段階でポカやらかして、自分たちが外側から来たことなんてすっかり忘れちまってるみたいだな!」
ジペットが、呆れたように笑う。
「ほんと、ただの役立たずのお荷物だよぉ。」
ゼロが、追い打ちをかけるみたいにぼそっと言った。
ドンッ!!
さっきよりもはっきりした物音が響く。
「ん? やっぱりなんか変な音しねぇか?」
「気にしなくて大丈夫だぜ! めんどくせぇからな!」
今度はジペットが、めんどくさそうに手をひらひらさせる。
「そうか……?」
“めんどくさい”の一言で謎の物音が片づけられていく。
「で、そうするとあいつらどうなっちまうんだ?」
「どうもならないから心配しなくていい。外側の世界のことを忘れたアイツらはこの世界から自分たちの意思で外に出ていくことはできないが、俺たちが外側の世界に帰ったら処理してアイツらも引きあげさせる。」
ジペットが、淡々と答える。
「そう……か……。」
胸の中が、じわっと重くなった。
「どうしたの?」
ゼロが、俺の顔を覗き込んでくる。
「……いや、アイツらもいつかいなくなっちまうのかと思って……。せっかくちょっと仲良くなれたと思ったから……その……ちょっと寂しくてよ……。」
言葉を選びながら、視線を落とす。
「そうか……お前らも……帰るんだもんな……。」
まだあって間もないはずなのに、こんなに寂しいと思うのはどうしてだろう?
「……」
短い沈黙が落ちる。
「おいおい、そんな暗い顔すんなよ! もし帰っても永遠の別れってわけじゃないぜ。きっとまた俺たちは巡り合う。そういう星のめぐりあわせだ!」
ジペットが、わざとらしいくらい明るく言い切る。
「あと、コウ兄ちゃんが帰ってくるのを確認するまで俺たちはこの世界にいるつもりだ。」
「と言っても、俺たちが優秀だったからもう調査は完了してるからな! あとはバカンス気分でこの世界を楽しもうと思ってるぜ!」
そこまで言って、ジペットがニッと笑った。
「お気楽だなっ!!」
ツッコミながらも、ちょっとだけ心が軽くなる。
「まぁよろしく頼むぜ、相棒!」
ジペットは立ち上がって俺の隣に来たかと思うと、当然のように俺の肩に腕をまわしてくる。
「っ……あぁ……よろしくっ……///」
顔が熱くなるのをごまかすように、視線をそらした。




