第34話 白波海洋研究員殺害事件
「とりあえず、情報を整理しよう。おそらく僕たちだけがもっている情報とキミたちだけがもっている情報がある。それを照らし合わせれば何かわかるかもしれない。」
ゼロが冷静に話を戻す。
「そうだな!でも情報の整理を始める前に、お前たちに伝えておかなきゃいけないことがある。」
ジペットが、急に真面目な顔になった。
「なんだ??」
思わず身構える。
「言おうかどうか迷ったんだが、お前らなら大丈夫だろうと信じて言うぜ。でもこれは極秘事項だから、他言無用で頼むぜ!」
「なに?もったいぶらないで早くして!」
ししゃも。が食いつく。
「そう焦るなよ、ししゃも。!人生は時に回り道が必要な場合もある。」
「いいから早く話せぇええ!!!!!!」
怒鳴られて、ジペットは肩をすくめた。
「ったく、相変わらずお前はわがままだな!いいよ、話してやるよ!俺たち、ジペットとコイツ、須戸ゼロはただの警察じゃないんだ。」
「ただの警察じゃない?」
困惑と疑念が混じったような声で、デジデジが繰り返す。
「あぁ。いわゆる、公安ってやつだ!」
「公安ってあの、テレビドラマとかでよく出てくるやつか!?」
俺の頭に、黒いスーツの人たちがよぎる。
「そうだ!俺たちは人知れず悪の組織と戦ってみんなの平和を守ってるんだ。どうだ?秘密の組織みたいでかっこいいだろう!!」
胸を張るジペットは、どこか子どもっぽく楽しそうだった。
「すげぇ!かっけぇな!!」
素直にそう言うと――
「いまそんなことはどうでもいいんだよ!!今回の件に関係あることを話せ!!」
ししゃも。が即座にぶった切った。
「ししゃも。、短気は損気だ!」
「うるせぇ!!!!」
「・・・・」
少し間が空いたところで、ジペットが改めて口を開いた。
「さっきお前たちの話はだいたい聞いたからな。今度は俺たちがもっている情報を話すぜ。」
部屋の空気が、さっきまでとは違う緊張を帯びる。
「まず、俺たち公安は、国内の安全と秩序を守るために活動している組織だ。普通の警察とは違って、もっと特殊な任務を担当してるんだ。」
「特殊な任務って?」
ししゃも。が眉をひそめる。
「例えば、テロ対策やスパイの摘発、不正な活動をする組織の捜査とかだな。今回の事件も俺たちの管轄に入る可能性がある。」
「どういうことだ?」
俺が尋ねると、ジペットは短く息を吸った。
「俺たちは、真世教団と呼ばれる宗教団体を調べていたんだ。」
「確か、最近信者数が激増している新興宗教だよね。」
デジデジが、どこかニュースを思い出すような口ぶりで言う。
「そう。真世教団は「真の世界は現世とは別に存在し、この世界は偽りである」っていう思想を起点とする宗教なんだ。」
ゼロが淡々と続ける。
「平たくいうと、「この世界はどうせ偽物だから、頑張るのは本当の世界に行ってからでいい。今は自由に生きよう。」って感じ。」
「それだけ聞くと、そこまで危ない感じはしねぇけどな?」
正直な印象を口にすると、ジペットが肩をすくめた。
「あぁ。でも信者の中でこの思想の解釈に幅が生まててな。」
「もしかして、「自分が殺したいって思うんだったら殺しちゃってもいいよね。だって自由なんだから。」みたいな考え方の人がいるってこと?」
ししゃも。の言葉に、ゼロが静かに頷く。
「だいたいそんな感じだね。「自由」の名のもとに、自らの暴力性や犯罪性も肯定してしまっているみたい。」
「最低だな。」
思わず吐き捨てるように言っていた。
「もちろん、真世教団全体がそうなわけじゃない。ただ、信者の一部が激化していて実際に集団犯罪・テロ組織の手引きをしている恐れが非常に高い。」
ジペットの声は低い。
「だからぼくたちは真世教団が関与していた可能性がある過去の事件や今後起こりえる犯罪・テロ行為の計画の有無を調査してたんだ。」
ゼロが補足する。
「なるほど。それでいま、ジペット君たちがここにいて、さっき起こった事件現場にもいたってことは・・・」
デジデジが周囲を見回しながら言うと、
「あぁ。」
ジペットは短くうなずいた。
「ししゃも。、お前の両親が殺害された通称「白波海洋研究員殺害事件」にも真世教団が関わっている可能性が高い。」
「・・・・・・。」
ししゃも。がぎゅっとパジャマの裾を握りしめる。




