第32話 怪しい二人組
昨日と同じカフェのテーブルに、俺たち五人は向かい合って座っていた。さっきまでの騒ぎが嘘みたいに、店内は落ち着いたBGMだけが流れている。
「いったい何がどうなってるんだ!?お前は、コ、、、、須戸じゃねぇのか!?」
思わず身を乗り出して、俺は目の前の「コウ」に詰め寄る。
「須戸だよ。」
落ち着いた声で、そいつはあっさり肯定した。
「は?」
思わず間抜けな声が出る。
「須戸だけど、マスター・・・コウじゃないんだ。ぼくの名前は須戸ゼロ。」
「須戸・・・ゼロ?」
聞き慣れない名前を、そのまま口の中で転がす。
「うん。そうだよ、燈真くん。」
「お前はなんなんだ??須戸、、、須戸コウの双子の兄弟とかなのか?」
俺が食い下がると、ゼロは少しだけ言葉を選ぶように間を置いた。
「えっと・・・そうだね。今はそう思っておいてほしい。あとでちゃんと説明するから。」
「・・・そうか。・・・・わかった。・・・で、お前はなんなんだ!?どうして俺の名前を知ってたんだ!?俺たち初対面だよな!??」
混乱しすぎて、頭の中の疑問が全部一気に口から飛び出す。
「俺の名前はジペット!よろしくな!!俺も後で説明するぜ!!」
隣の革ジャン男――ジペットが、なぜかやたら元気よく名乗りを上げた。
「ちょっとぉ!みんな説明を後回しにしすぎでしょ!!ちゃんと説明して!どうしてしゃもとデジざえもんの名前も知ってたの!?」
ししゃも。がテーブルをバンッと叩いて抗議する。
「うん、それは僕も気になってるかな。」
デジデジも眉を下げて、穏やかな声ながらしっかり問いを重ねた。
「それはだな・・・。困ったぜ。」
ジペットは頭をガシガシかきながら、視線を泳がせる。
「困ってる場合か!言え!!」
ししゃも。が身を乗り出すと、ジペットは何かを思いついたようにポンと手を叩いた。
「あっそうだ!俺たち、刑事なんだ!」
「お前、今思い付きで言わなかったか!?」
あまりに軽い言い方に、思わずツッコむ。
「そんなことないぜ!ほら、見てみろ!これが俺の警察手帳だ!かっけぇだろう!」
ジペットがポケットから取り出したのは、本物らしき警察手帳だった。
「ホントだ!すげぇかっけぇ!!!」
素直に感嘆の声が出てしまう。
「ちょっ・・・待って・・・警察はまずいんだって・・・」
ししゃも。が小さく肩を縮めてつぶやいたのが聞こえた。
「安心しろ、ししゃも。!なんせ俺たちは、クールでいかしてる刑事だからな!俺たちがお前らを守ってやる!」
ジペットは親指をぐっと立ててみせる。
「えっと、刑事さんなのはわかりましたけど、どうして僕たちの名前を知っていたんですか?」
デジデジが、改めて静かに問いただした。
「それはお前が一番よくわかってるんじゃないか?」
「・・・・・・」
デジデジの表情が、少しだけ固くなる。
(デジデジ・・・?)
俺は横目でその様子をうかがった。
「さっきも言ったが、俺たちはお前らを悪いようにするつもりはない。だから話してくれないか?いまどういう状況になってるのか。」
ジペットが穏やかな声で続ける。
「・・・・・・」
ししゃも。は視線を落として黙り込んだ。
「ししゃも。」
「え?」
ゼロが柔らかい声で、その名を呼ぶ。
「ぼくたちはキミが児童養護施設から抜け出してきていることを知ってるよ。でも、無理に連れ戻すつもりはないよ。だから安心して話して。」
「・・・・・・」
ししゃも。は唇をかみしめ、しばらく黙っていたが、やがて長いため息を吐いた。
「・・・・はぁ。わかった、話す。」
そして、絞り出すように一言そう言うと――
「かくかくしかじか。」
――と、雑にまとめながらも、一通り事情を話してくれた。
「うまうまシマウマってことかぁ。」
ゼロが、のんびりした調子で相槌を打った。




