第30話 事件
「ふぅ・・・。いいお湯だったぜ!!」
タオルを肩にかけたまま部屋に戻ると、布団の上でししゃも。が仰向けに寝ていた。
「おかえー・・・」
半分まぶたが落ちてる。
「お前、もう眠いんだろ?」
「ちょっと・・・」
絶対「ちょっと」じゃない。もう相当眠そうだ。
「もう寝たらどうだ?俺が店からの連絡待ってるからよ。」
「さすがにそれは悪いよ・・・」
そう言いながらも、声にあんまり力がない。
「でも、明日朝早くから探したいんだろ?だったら早めに寝た方がいいんじゃねぇか?」
「・・・・・・」
返事が途切れたので覗き込む。
「ししゃも。?」
「・・・ぐがぁああああ!!!」
「寝たのかよ!・・・つーかいびきうるせ!!」
あっという間に爆睡。
(・・・でもよかった。コウの手がかりが見つかって。もしかしたらししゃも。たちと出会ったのも何かの運命だったのかもな。)
さっきまでの高揚感が少し落ち着いたら、一気に瞼が重くなる。
「やべぇ・・・俺も眠くなってきた・・・。」
布団に身体を沈め、スマホだけ枕元に置いた。
・・・・・・
(・・・あ、23時過ぎてる。一回店に電話してみっか・・・)
時計を確認してから、ベッドの上で半身を起こし、店の電話番号にかける。しばらくコール音が鳴ったあと、無機質な自動音声が流れた。
「『お電話ありがとうございます。本日の営業は終了致しました。恐れ入りますが、おかけ直し下さいますようお願い申し上げます。』」
「・・・こっちから電話できねぇじゃねぇかよ!!」
やり場のない苛立ちをスマホにぶつけてため息を吐く。
「・・・ダメだ。眠ぃ・・・。電話来たら起きられるかな・・・」
スマホを握ったまま、ぼんやり天井を見つめ――
「・・・ぐがぁあああああ!!!!」
そのまま意識が落ちた。
・・・・・
翌朝。
窓のカーテンの隙間から、ちょっとだけ強めの朝日が差し込んでくる。
「ん~・・・・ん?」
寝返りを打ったところで、ぼそっとした声が聞こえた。
「やっと起きた。」
布団の横で体育座りしていたししゃも。が、じとっとした目で俺を見ている。
「やべぇ俺、寝ちまってたのか・・・。電話は!?・・・・なんだ来てねぇじゃねぇかよ。」
慌ててスマホを確認するが、不在着信の通知は一件もない。
「あのハゲ電話するっつったのにしてこなかったの!?」
「んあぁ。そうみたいだ・・・。電話来てねぇし、昨日の夜電話してもつながらねぇし・・・。」
「最低!口コミに星1レビューしてやる!!」
「・・・ほどほどにな。」
冗談とも本気ともつかない声で文句を言うししゃも。を横目に、俺は大きく伸びをする。
「・・・飯食ったら店行ってみるか。」
「うん。」
そうして俺たちはリビングに向かい、家族と一緒に朝ご飯をかき込んだあと、監視カメラが設置してあるリサイクルショップへ向かった。
・・・・・
店が見える角まで来たところで、違和感に気づく。
「ん?なんか店の前に人だかりできてね?開店前から並んでんのか?ここそんな人気店だったのか??」
「あのクソぼろで!?」
ボロいとか言うな、と思いつつも、確かに昨日の印象からすると行列ができるタイプの店じゃない。
二人で顔を見合わせ、そのまま足を速めて近づいていく。
「なんだ??」
目の前に広がっていたのは、開店待ちとは明らかに違う光景だった。
店の前には無秩序に人がごった返し、野次馬のざわめきが空気をざらつかせる。少し離れた場所にはパトカーや救急車が停まり、警察官や救急隊が慌ただしく動いていた。
「二人とも!」
人混みの向こうから、聞き覚えのある声が飛んできた。
群衆の隙間から、デジデジが手を振りながら駆け寄ってくる。
「デジざえもん!これ、何がどうなってんの??」
「えっと・・・」
デジデジは一度周囲を気にするように見回し、少し声を落として続けた。
「えっと・・・確かな情報かどうかはわからないんだけど、店の中で店主さんが血まみれで倒れてたらしい。」
「え!?」
胸の奥がきゅっと縮む。
「で、さっき警察の人と従業員の方が話してるのを聞いたんだけど、たぶんもうお亡くなりになってて・・・。殺された可能性が高いみたい。」
「嘘でしょ!?」
ししゃも。の顔から、さっと血の気が引いていく。




