第28話 お泊りトーク
「なんで仲良くなったんだ?」
「施設って、やっぱりいろんな事情を抱えた子たちがいっぱいいるのね?ししゃも。みたいな子とか、親から虐待されてた子とか、その子自身が暴力的すぎて家庭で育てられないから預けられたとか。」
「・・・そうなのか。」
「うん。うちの施設だと、職員さんのことを先生って呼んでたんだけど、先生たちはみんながどういう事情で施設に入ったか把握してるの。もちろんししゃも。のことも。」
「・・・」
俺はししゃも。が自分自身のことをちゃんと話し出してくれている気がして嬉しかった。
だから変に口をはさんでししゃも。の話す気を阻害しないように、最低限の相づちだけを打って、黙って話を聞くことにした。
「でもししゃも。はそれがちょっと嫌だったんだよね・・・。何しても、『この子はかわいそうな子だから』って目で見られるの。」
ししゃも。の声が、少しだけ低くなる。
「ししゃも。は普通の子になりたかった。可愛そうな子って同情されたりしたくなかった。」
「・・・」
「だから、嫌なことがあってもできる限り暗い顔とかしないで、『こんなの何でもない!平気っ!!』って気張ってた。」
「・・・」
「だからかわかんないけど、なんか自分が一番不幸ですって顔してずっと暗い子とか、自分の人生は他人にめちゃくちゃにされたんだから俺もお前らに当たり散らしてもいいよなって感じで周りに迷惑かける子とか、そういうの見てるとすごいイライラしちゃって。」
「そうか・・・。」
「うん。だから極力他人と関わらないようにしてたんだけど・・・まぁ今でもそうなんだけど・・・。」
ししゃも。は天井を見上げて、苦笑いを浮かべる。
「たまに施設で季節の行事みたいなのやることがあって、そのときに二人組で準備して~とかがやっぱりあるのよ。だから完全に他人と関わらずにいるのは無理で、そういうのがあるときは同室だったその子とよく一緒にやってたの。
だからなんか、ちょいちょい一緒にいるけど別に仲良くはない、みたいな関係のまましばらく過ごしてたんだけど・・・。あるとき気が付いたの。
なんかこの子普通だよなって。」
「普通?」
「うん。なんか別に暗い顔してるわけでもなく、普通にしゃべるし、かといって無理して明るくしてるわけでもないし・・・。なんか一緒にいるのが苦じゃないなって。」
「・・・」
「それで急にその子のことが気になって、なんで施設に来たのか聞いてみたの。
そしたら『あんま覚えてない。別にそんな興味ないしー』って言ってて...。それがなんかししゃも。には刺さったの。」
「・・・」
「ししゃも。は普通の子になりたくて頑張ってたけど、それって自分が普通じゃないって自覚があるからそうなるんだなって。自分で自分のことかわいそうだって思っちゃってたのかなって気づいて。」
「・・・」
「ある意味その子も本当はただ自分の人生に冷めてただけかもしれないんだけど、それでもなんかその子と一緒にいるときはししゃも。も自分のこと忘れて話せるような気がして。」
「それでかな?その子と仲良くなったのは。」
「なるほどなぁ・・・。」
「うん。だから・・・」
「ん?」
「ううん。なんでもない・・・。」
ししゃも。はそこで言葉を切った。
ししゃも。は、まだ俺に言えない何かを隠している。
でも今そこに踏み込んでも、きっと話してくれないだろう。
だから今は...
「俺、気づいたことあるんだけど言ってもいいか?」
「なに?」
「お前、なんかあんまり自分から自分の話しない感じ出してるけどさ、話し出すとけっこう話長いよな?」
「死ね!!!」




