第27話 たった一人の友だち
「ぐうぉう・・・お前、風呂あがったのか?少しはゆっくりできたか?」
爪を研ぎ続けたまま、なんとか平静を装って声をかける。
「まぁおかげさまで・・・。で、それはなに??」
「うるせぇ!俺は今優しさと愛をこの身に刻んでるんだ!」
「きっしょ・・・」
ししゃも。は端的な正論を投げ捨てると、お風呂に入る前に飲みかけになっていたお茶をごくごくと飲み、用意された布団の上に腰かけた。
「・・・さっきは悪かったな。お前、別に臭くねぇぞ。」
俺は枕を抱いたまま、視線だけそっとししゃも。に向ける。
「大丈夫。ししゃも。が一人で出ていかないようにするためだったんでしょ。わかってるからもういい。」
「そうか・・・。」
少しだけ肩の力が抜ける。
「とりあえず今日はあのクソ店員からの連絡を待ちつつ、休ませてもらうね。出ていく服ないし!」
「おう、そうしてくれ。」
部屋の中に、少し静かな空気が流れる。
ふと、前から気になっていたことが口からこぼれた。
「・・・なぁ?」
「ん?」
「施設ってどんなところだ?ご飯はちゃんと食べられてたのか?」
「あぁ・・・。まぁそうだね、施設によって食事の提供形態が全然違うらしいんだけど、しゃもがいるところは食堂があって、何時から何時までの間って決まってるからその間にそれぞれ来て食べる感じ。」
「そうなのか。」
「うん。まぁ、味は普通かな?特別美味しいわけじゃないけど不味いわけでもないし、メニューによっては美味しいかなって感じ。」
「そうか・・・。みんなで食べてたのか?」
「うーん。みんな同じところでは食べてたけど、喋るのはそれぞれ仲いい人だけって感じかな。」
「そうか・・・。じゃあお前はいつも一人で食べてたんだな。」
「おい!!しゃもが友だちいない前提で話し進めるな!!しゃもだって友だちいるし!!・・・一人だけだけど。」
「そうか!一人でもいればいいよな。」
「なんか上から目線でムカつく!どうせぽ前だって友だちいないくせに!!」
「へへっ!俺も昔はあんまり友だちいなかったけどよぉ!今はたくさんいるぜ!!!んーと・・・そうだな!いまは10人ぐらいいるぜ!!友だちいっぱいだ!!」
「うっわ・・・。友だちの数マウントうっざ!ぽ前どうせ数盛ってるだろ!つーかぽ前が友だちだと思ってるだけで向こうはぽ前のことなんて友だちだと思ってねぇんだよ!!」
「そんなこと言うな!さっきだって俺のこと心配して電話してくれたし!!」
「妄想乙。そういうのイマジナリーフレンドって言うんだよ。」
「妄想じゃねぇし!だったらお前のだって妄想なんじゃねぇのか!?」
「はぁ!?ちゃんといるから!!」
「じゃあどんなやつか言ってみろよ!」
「えっとぉー、同じ施設で暮らしててぇ~・・・」
「それから??」
「えっとぉ~・・・・・・」
返事が途切れたまま、しばし沈黙。
「言えねぇんじゃねぇかよ!!」
「いるっつってんだろうがぁ!!!!!!!!!!!!ちょっとすぐ出てこなかっただけだから!!!」
「はいはい。」
「えっとぉ~・・・・・・」
「おう。」
「・・・・小物のセンスがクソなやつ。」
「なんだそれ?」
「机の上に置いてる置物がめっちゃセンス悪いの!なんか蜘蛛の巣が絡まった十字架とか剣にまとわりついてるドラゴンとか小瓶に入った目玉とか!」
「かっけぇじゃねぇか!」
「うっわ・・・ぽ前も中二病かよ。趣味悪・・・。まぁ燈真きゅんにはお似合いかもね。」
「ほんとか!?今度ドラゴンのシャツでも買ってこようかな!」
「・・・・・・うん...買ってくれば?」
「そうするぜ!・・・で、結局そいつどんな奴なんだよ。」
「うーん...なんかこうして思い出してみると、あの子のこと全然知らなかったのかも。」
「そうなのか?」
「うん...。なんだかんだでいつもししゃも。ばっかり話してて、あの子はずっとぽけーっと聞いてる感じで。」
ししゃも。は、布団の端を指でいじりながら、少しだけ目線を落とした。




