第24話 おまわりさーん来てぇ~♡
「燈真、ししゃも。くんお風呂大丈夫そうかしら?我が家のシャンプーとリンスどっちがどっちかわかりにくいかもしれないからちょっと見てきてあげてくれる?」
俺の部屋に来た母ちゃんが心配そうに聞いてくる。
「あぁ、わかった!」
俺は立ち上がって、廊下を抜けて風呂場前の脱衣所へ向かった。湯気のせいか、扉の向こうからほんのりあったかい空気が漏れてきている。風呂場の外から声を掛けた。
「ししゃも。ー!風呂、大丈夫そうか?シャンプーとリンスわかるか??」
「燈真きゅん?ちょうどいいところに来た。わかんないから入ってきて教えてー!」
やっぱりわからなかったか。様子を見に来て正解だったな。俺はドアノブに手をかけた。
「おう、開けるぞー。」
扉を少しだけ開けた瞬間――
「きゃーーーっ!燈真きゅんのエッチぃ♡ヘンターイ♡中学生の男の子のお風呂覗くとかサイテーっ!ししゃも。に欲情してるんでしょう??ずっといやらしい目で見てたんだ?だからししゃも。を家に誘ってお風呂に入らせて・・・きゃーーーっ♡」
勢いよく浴室の方から声が飛んできた。
「お前が入って来いって言ったんだろう!」
「中学生相手でも誘われたらそういうことしちゃうんだぁ~♡うっわ犯罪者ーっ変態へんたーい♡おまわりさーん来てぇ~♡ししゃも。オオカミさんに食べられちゃうぅ~♡ししゃも。の貞操奪われちゃうぅ♡おまわりさーん♡」
「なんでだろうな?俺、割とエロいもんに敏感な方だと思うんだけどよ、なんかお前の裸見てもなんとも思わねぇんだよな。不思議だな?」
「はぁ!?ほんとはち○ぽビンビンなくせに!!」
「んなわけねぇだろ?」
「あっじゃあ、あれじゃん。もしかして燈真キュンEDなの?えーまだ若いのに・・・そうなんだぁ・・・えぇ~かわいそう・・・。」
くだらないやり取りをさっさと切り上げることにして、俺は風呂場の棚に置いてあるボトルを指さした。
「はぁ・・・こっちがシャンプーでこっちがリンスだ。わかったか?」
「シカトすんな!!!」
「じゃっ、ゆっくり入れよ。」
「おい!!!」
ガラガラ。
無情にも、俺はそのまま扉を閉めた。
(はぁ・・・アイツは一々騒がしいやつだな。まぁ元気そうならいいか。)
脱衣所を出ようとしたとき、ふとししゃも。の脱いだ服のあたりで何かがキラッと光ったような気がして目が留まる。
「ん?なんだこれ・・・」
それが何なのか確かめようと手を伸ばしたところで、浴室のほうから微かに水音がした。
・・・
風呂場の中。
湯気に包まれたタイル張りの浴槽の中で、ししゃも。は肩まで浸かりながら小さく息を吐いた。
「・・・はぁ。」
(お風呂入ってるとたまにあの日のこと思い出しちゃう...。)
(さすがにもう慣れたけど...。でもやっぱりまだ怖い。)
湯面を指でなぞりながら、視線はどこか遠くを見ている。
しばらくして、ししゃも。は風呂から上がると、置いてあったタオルで髪を拭く。
(あれ?ししゃも。の服は・・・?)
脱衣カゴを覗き込んだししゃも。は、そこにあるべき服がないことに気づき、眉をひそめた。
(ん?書き置き?)
カゴの中に、畳まれたパジャマと一緒に一枚のメモが置かれている。
「ししゃも。くんへ。ししゃも。くんのお洋服はお洗濯してるから、このパジャマを着てね。燈真のお母さんより」
「ちょっ・・・!」
思わず声が漏れる。
(服なかったらもう外出れないじゃん!もう・・・)
パジャマをぎゅっと握りしめたそのとき、ししゃも。の動きがぴたりと止まった。
・・・・・・!!
(待って・・・)
(見られた…!!!!)
胸の鼓動が一気に早くなる。
(どうしよう・・・!!!どうしようどうしようどうしよう・・・!!!!)
ししゃも。はぎゅっと目をつぶり、深呼吸を繰り返した。
(・・・いや、大丈夫。まだ大丈夫。大丈夫・・・きっと大丈夫。)
(しゃもがやらなきゃ・・・ししゃも。がやらなきゃ・・・しっかりしなきゃ・・・)
震える指でパジャマに袖を通しながら、自分に言い聞かせるように心の中でつぶやく。




