第23話 短気は損気
「ぽ前っ!ぽ前のせいでもう完全に泊ってく流れになったじゃん!!!」
癇癪を起すししゃも。に、デジデジがなだめるように説得する。
「まぁまぁまぁ。監視カメラで何かわかったら一応連絡してくれるって言ってたでしょ?それで何かわかろうがわからまいがその時点でもう深夜になっているだろうし、どっちにしろ明日にならないと探しに行くのは難しいんじゃないかな。」
「それはそうだけど・・・!気持ちの問題もあるでしょ??ししゃも。は一刻も早くっ!」
デジデジの説得に応じないししゃも。。
ここは俺が言ってやるしかない。
「ししゃも。」
「あ?」
「短気は損気。」
「お母さんみたいに諭してくんじゃねぇ!!!!!!!!!!!!」
と、そのタイミングで部屋のドアをノックする音がした。
「とんとんとん、ヒノノ○トン♪」
「あなたたち、お風呂沸いたわよ。冷めないうちに入っちゃいなさい。」
「はーいママぁ。にぱー☆」
パタン。
母ちゃんが扉を閉める音がして、再び部屋の中に静けさが戻る。
「じゃあ、お前先に入って来いよ、ししゃも。」
「そうだね、しゃもしゃも先に入ってきなよ。お風呂に入ったら少しはリラックスできるんじゃない?」
「え?なんでししゃも。が一番先なの?ししゃも。は最後でいいよ。二人先に入れば?」
「あーーー・・・」
「あーーー・・・」
「え?なに??」
「んーとよ・・・あんまりこんなこと言いたくないんだけどよ・・・」
「うん・・・」
「・・・お前、最近ちゃんと風呂入れてるか・・・??」
「えっちょっと待って・・・ししゃも。臭いってコト!?えっヤダ噓でしょ最悪なんだけど昨日ちゃんとネカフェのシャワーで洗ったのに!あっでももしかして10分しか使えなくて急いでたからちゃんと洗えてなかった!?え?嘘でしょ待ってホント最悪!ししゃも。、そういうエチケットはめちゃくちゃ気遣ってるのに!!うそウソ嘘!!!!」
「いや、別に臭くはねぇよ!?ただちゃんと風呂入れてなさそうだからゆっくり入って来いよって思ってよ!!」
「はぁ・・・最悪、ちょっ・・・ごめん、じゃあちょっと先入らせてもらうね・・・。」
「おう、場所わかりそうか?ゆっくりしてな。」
「うん・・・ありがちょ・・・」
ししゃも。がしょんぼりとした背中を見せながら部屋から出ていく。
・・・
「・・・ふぅ。作戦、上手くいったみたいだな。」
「そうだね、しゃもしゃもにはちょっとかわいそうなことしちゃったけど。」
実はさっき、片付けの最中に、ししゃも。を家に留まらせる作戦をデジデジと立てていた。
話を聞いていた母ちゃんと、作戦会議中にししゃも。がキッチンに近づかないように引き留めていた颯真も協力者だ。
「後で謝ろう。でもこれで・・・。母ちゃんがししゃも。が風呂に入ってる間に服を洗濯してくれるって言ってたから、服が乾くまでは外に出れなくなるはずだ!」
「そうだね!これで一安心かも。」
「てことで・・・僕はそろそろ帰ろうかな。」
「お前、ホントに帰っちゃうの?デジデジも泊っていけばいいだろ??」
「泊りたい気持ちは山々なんだけど、ちょっとこの後やらなきゃいけないことがあって・・・。でも今日は本当に楽しかった。」
「そうか・・・。」
少しだけ胸のあたりがきゅっとなる。まだデジデジと話していたい。
「なぁ・・・また会えるか??」
「え?」
「いやっその・・・せっかく仲良くなれたのによ!・・・もう会えなかったらよ・・・そのぉ・・・寂しいだろう??」
「なんだ!明日の朝、燈真君たちリサイクルショップに行くんでしょ?それだったら僕も一緒に行くよ。気になるし・・・」
「ほっホントか!!そうか・・・よかった!!」
「うん!あっそういえば連絡先交換してなかったね。明日の件もあるし、交換しとこっか♪」
「お、おう!!」
スマホ同士を近づけて、連絡先を交換する。
画面に「デジデジ」の名前が登録されたのを見て、胸の奥が少しだけ温かくなった。
連絡先を交換した後、デジデジは母ちゃんと颯真に見送られながら家を後にした。
外に出たデジデジは、夜の空気を胸いっぱいに吸い込みながら、ひとりで歩き出す。
「家族...か・・・」
小さくそうつぶやいて、夜道の先を見上げた。




