第19話 もしもしお母さま!?
カフェの店前で俺はスマホを取り出す。
(あいつをとりあえず俺の家に連れて帰ろう)
(えっと・・・クソ兄貴に電話しねぇと...)
(クソぉ・・・アイツと今あんま話したくねぇんだよな・・・)
(まぁしょうがねぇ・・・とりあえず電話するか・・・)
「ってちげぇ!!!」
俺はハッとした。
(いま母ちゃんと父ちゃんがいるんだ・・・)
(つーことは、母ちゃんが飯作ってんだよな・・・)
(母ちゃんに電話すればいいのか・・・)
アドレス帳を開く。
(電話番号・・・登録されてるのか・・・?)
(あっ・・・あったわ・・・。)
(母ちゃんに電話すんの・・・なんか緊張する・・・!)
指が震える。
俺は母ちゃんに電話をかけた。
『あら燈真?どうしたの??』
思わずほっとするような温かな声。でも俺は、慣れない相手とする電話は苦手だ!
「あっ・・・!こちら、俺の母ちゃんっ・・・お母さまの電話っ・・・電話ですかっ??」
『笑。なによ燈真、またそんな他人行儀になって。最近のあなたほんとに面白いわね。でもお母さま呼びでもよろしくってよ』
「おっおっお母さま!今日・・・今日なんですが、この後そのぉ・・・あのよぉ・・・。友だちを家に連れて行ってもいい?・・・いいですかっ??」
『あらいいじゃない!よろしくってよ。ひとりかしら』
「あっ・・・そうか・・・!んー・・・わかりません!もしかしたら二人かも。ひとりか二人かも・・・!」
『わかったわ。お母さまに任せなさい』
「あっありがたっ!あっ、ありがとうことですっ」
『ふふふっ。気を付けて帰ってらっしゃいね』
「・・・はい、お母さま・・・。母ちゃん・・・」
『はーい。待ってるわね』
通話終了。
俺はしばらくスマホを握りしめたまま空を見上げた。
(これが・・・母ちゃんとの電話ってやつなのか・・・。)
正直、今まで母親というものがどんな感じなのかがわからなかった。でも今は確かにその声を、存在を確かめることができている。それがなんとなく嬉しい。
(おっといけねぇ!早く戻らねぇとまたあいつになんか言われる)
俺はだらけきった顔を引き締め、店内に戻った。
・・・
「待たせたな」
「ねぇ!ししゃも。を置いてどこ行ってたの!?デート中に女の子をひとりぼっちにするとかありえないんだけどぉ!!!」
「お前、男だろ?とりあえず会計だ!行くぞ!!」
「ちょっシカトとかもっとありえないんだけどぉ!!!!」
「えっと・・・会計はわかったけど、これからどうするの?」
落ち着いているように見えるデジデジからも少し困惑の色がうかがえる。
「あれ?言ってなかったか?俺の家に行くぞ!デジデジも来るか!?」
「聞いてないんだけどぉ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ししゃも。は強制的に俺が連れてくからよ。よかったらデジデジも来てくれないか??」
「強制的ってなに!?ねぇデジざえもんもなんか言ってやってよ!」
「なるほどねぇ~。いいかも。じゃあお邪魔しようかな?」
「ちょっとデジざえもん!?」
「ホントか!!じゃあ行こう!!」
「ちょっとぉ!!ししゃも。のこと無視しないでっ!!」
俺はししゃも。の言葉を無視すると、ししゃも。を無理やりおんぶしカフェを出た。
「いやぁ!誰か助けてぇ!!この男、人さらいですーーっ!!誰か男の人呼んでぇ!!!!」
俺たちは家に向かう前に先ほどの監視カメラが設置されていたリサイクルショップに立ち寄った。
営業時間の終了後に電話をかけるつもりでいることと、もし先に何かわかったら電話してほしいと俺の電話番号を伝えるためだ。
店員は「わかった」と適当な生返事で返してきたが、正直ちゃんとやってくれるかは微妙である。
でもひとまず、今やれるだけのことはやれただろう。
その後、俺たちは駅から電車に乗って俺の家に向かった。




