第11話 新たな青年との出会い
「・・・」
「・・・13センチぐらいの水色の魚のペンダント・・・でいいのかな?」
「はい・・・」
「ふぅ・・・。それなら実はさっき店の前で拾って・・・」
「「拾って・・・!?」」
俺たちの声が期待でうわずる。
しかし、青年は気まずそうに頬をかいた。
「落した人が戻ってくるかなぁって思って...。でもそのままだと踏まれて壊れちゃうかなって思ったから、近くのガードレールに引っかけておいたんですけど・・・」
「え・・・? ガードレール・・・」
「そう・・・そこの・・・ガードレールに・・・」
青年が指さした先には、確かにガードレールがあった。
だが――
「ない・・・な・・・」
「ない・・・ね・・・」
「ない・・・ですよね・・・」
そこには何もぶら下がっていなかった。
「ねぇじゃあつまりどういうこと!? ししゃも。のペンダント誰かが勝手に持って帰っちゃったってコト!?」
「その可能性は高いかもしれない・・・」
「もうなんで!? 意味わかんない!!! どうして人のもの勝手に持って帰れるの!!? 人としておかしいだろうがぁ!!!!!!!!!!!!!! ぶっ殺してやる!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ししゃも。が再び爆発する。俺は慌ててなだめた。
「いっ、いったん落ち着けよ! もしかしたらちいせぇ子どもが持って帰っちゃったかもしれねぇしさぁ!?」
「子どもだからって何しても許されるの!? 人のもの取ったら犯罪なんだよ!! 窃盗罪!!! 窃盗犯は死刑にしろーーーーー!!!!!!!!」
「えっと・・・・」
「あっ、悪ぃ・・・こいつ癇癪起こすと止まらなくなるみたいなんだ・・・」
「ししゃも。を子ども扱いするなーーー!!!! なんで燈真きゅんはそんなに冷静なの!?? ・・・あっ、そっか。結局は他人事だもんね」
「そんな風に言わなくていいだろう・・・」
「・・・・・・」
気まずい沈黙が流れる。
それを見かねたのか、青年が助け舟を出してくれた。
「・・・あっ、そういえば交番には行ってみた? もしかしたら拾った人が交番に届けてくれてる可能性もあるんじゃないかな?」
「・・・行ってない。・・・行けないから」
ししゃも。は少し思いつめたような、ふてくされたような態度で答える。
「行けない・・・?」
「警察には、行けないの・・・」
「・・・なにか事情があるみたいだね」
「うーん・・・どうすりゃいいんだ」
八方塞がりだ。俺が頭を抱えていると、青年が遠慮がちに提案してきた。
「えーっと、もし事情があって遺失物届が出せないとかだったら、僕が代わりに交番に行こうか?」
「え?」
「いや、すごく大事なものだったみたいだし、最初に僕が見つけたときにもう少しちゃんと対処できてればこんなことにはならなかったのかなって思って」
「・・・そうだよねぇ!? ぽ前がちゃんとしてればこんなことにはならなかったのに!」
「お、お前なぁ!?」
「そうだね。ごめん・・・」
青年の善意に対してこの言い草。俺ならとっくにキレているところだが、青年は苦笑いして謝った。いいやつすぎる。
ししゃも。もバツが悪かったのか、少し口調を和らげた。
「・・・ふんっ。まぁそこまで言うなら、ししゃも。の代わりに交番に行って面倒な手続きやってくれるって言うなら、許してあげなくもなくもないけどっ!」
「わかった。ちゃんと責任をもって対応するよ」
「ししゃも。の代わりなんだから、完璧に対応してよねっ!」
どうやらししゃも。もギスギスしてしまったことに責任を感じ、雰囲気を変えるタイミングを見計らっていたようだ。言っていることはとげとげしいが、語気にひりついた様子はなく、妙にお茶らけた感じを出している。
「・・・ふぅ」
「・・・じゃあちょっと悪いんだけど、交番に書類出すのに落とし物の詳細とか落した時間とか書かないといけないと思うから、少し時間もらって話聞かせてもらってもいいかな?」
「ししゃも。インタビュータイムってコトぉ~!?」




