第10話 すっごくいいこと、し・て・あ・げ・る♡
「無理です」
店員の即答に、俺たちの顔はどぉーんと暗くなる。
「そこをなんとか!」
「ダメなものはダメです」
商品を並べている最中だった店員の目線は、俺たちと話している間も手元の商品と棚の間をチラチラと往復している。早く仕事に戻りたいんだろう。
すると、ししゃも。が猫なで声を出して店員に向かって身を乗り出した。
「ねぇ・・・♡ ししゃも。からのお・ね・が・い♡ もしお願い聞いてくれたら、しゃもがすっごくいいこと、し・て・あ・げ・る♡ ちゅっ♡」
「この人はなんですか?」
店員が冷ややかな目で俺を見た。
「わかりません」
「はぁ!? とっとと見せろやこのハg」
キレかけたししゃも。の口を慌てて手でふさぐ。
「なんとかお願いします!! ほんとに大切なものなんです」
「といわれてもねぇ・・・。うちのお客さんの顔とかばっちり映っちゃってるわけだし。個人情報がどうとか色々うるさく言われてる時代だしねぇ・・・」
店員は面倒くさそうに頭をかく。
「まぁ私がかわりに映像を確認して何かあればお伝えすることはできるかもしれませんが、あいにく今は忙しくってねぇ・・・。確認できるのは早くても閉店後になるかなぁ??」
「閉店って何時ですか?」
「当店の営業時間は夜11時までとなっております」
「じゅういちじーーー!!??」
俺とししゃも。の声が重なる。
「はい、夜の11時。本日もお客様のために夜遅くまで営業致しております」
「すいませーん」
レジの方から店員を呼ぶ声が響く。
「はーいただいま! ・・・てことだからもしまだ何かあるなら閉店後にお越しください」
そう言い残すと店員は足早に客の方に向かっていってしまった。
俺たちは店員からの放置プレイを食らわされ、どうしようもなく店を出た。
「こんなかわいい美少年をそんな遅い時間に出歩かせるつもりなの?? マジありえないんだけどーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ししゃも。が街に響き渡る大声で叫び出す。
俺は頭を抱えた。
「でもどうする? 11時はさすがに・・・俺いったん家帰んねぇといけねぇかもしれねぇ・・・」
「・・・・・・」
口をつぐむししゃも。の顔が、少し寂しそうに見えた。
「あのーすみません」
「??」
不意に声をかけられ、振り返る。
そこには、おとなしそうな顔をした高校生ぐらいの青年が立っていた。
「さっき店で話してるの聞いちゃって・・・。もしかしてなにか探してますか?」
「!?」
俺たちは勢い込んで食いついた。
「そう! こいつが落し物して! 魚みたいな形した水色のち○ぽ探してるんだ!」
「っちん・・・!?」
青年が目を見開いて固まる。
横からししゃも。の鋭いツッコミが入った。
「ちーがーうーだーろーぉ!! ち○ぽみたいな形した水色の魚探してるの!」
「・・・・ごめん。僕の記憶違いだったみたい」
青年はドン引きした顔で後ずさりする。
ヤバい。完全に変質者だと思われた。
「「うそうそうそっ! ホントはち○ぽみたいな形した水色のち○ぽ探してるの!!」」
俺とししゃも。の声が重なる。
「・・・えっと・・・ごめん。僕行くね・・・」
「「待ってぇ!!!!!!!」」




