第0話 プロローグ
死んだはずの両親が当たり前のようにそこにいた。
イケメンの恋人。フレンドリーに接してくれるクラスメイトたち。友だちが抱えていたはずの悩みも、すべて解決されていた。
すべてが完璧で、幸せに思える世界。
けれど、唯一『須戸コウ』だけが消息を絶っていた。
ずっとひとりぼっちだった俺に、友だちを作るきっかけをくれた大事なやつなんだ!
こんな完璧すぎる世界で、どうしてコウだけがいない?
ほかのやつに聞いても、コウのことは知らないという。どうやら存在ごと忘れられているようだった。
俺は必死になって探したが、手掛かりが得られないまま時間だけが過ぎていく。
そんなある日、俺はコウの夢を見た。
夢の中の彼は、俺にこう告げたのだ。
『僕のことは忘れて、いまの世界で幸せになって』
そんなこと言われたって、俺は大切な友だちを見捨てたくない。絶対に俺が探し出してやる!
でももし、すべてが元通りの世界になったら死んだはずの俺の両親は・・・。
自分の身の振り方に葛藤する日々。
俺は気晴らしのために、あてもなく街を歩いていた。
ちょっとした気分転換のはずだったのに、まさかあんな事件に巻き込まれるなんて...。
これは、嵐のような出会いをきっかけに始まる事件、そして恋と友情の物語。




