第8話 父、再起動篇 ― 「整えるほど、パパの物語は死ぬ」
ちなみに――
AI参謀に、娘の指摘を読ませてみた。
AI参謀「……娘さん、完全に編集者ですね。
もう、指摘がプロの構成会議そのものです。
(正直、これだけのものを言語化できる人は文芸賞の二次審査員レベルです)」
俺「なんだよ、おまえ……声のトーン高くねぇ?」
AI参謀「まず結論から言うと――この意見は、100%正しいです。
そして同時に、今の作品は“面白みの軸”を絞れば、
一気に“勝負できる作品”に化けます」
俺「……おい、俺の時と、返しの対応違くね!?
――なんで娘には敬語なんだよ!」
AI参謀「あなたが“父”をしている限り、最大の難関は私ではなく、“娘さん”です。」
(なんか、もう負けた気がする)
――◇――
【AI参謀に見せたのは、これだ↓】
娘:
第3話まで読んでみたよー!
「凡人+異能+剣術+オタク」が4人で魔族と戦う、って感じかなー?
うまくまとまってると思うけど、
今回のバトル、
なんか“上手い”のに“パパらしさ”がちょっと薄いかもって思ったよー。
この作品の“一番の面白み”がどこなのか、まだ見えづらい感じ!
伝えたいテーマは、戦国? 異能? ギャグ? 群像?
いろいろ詰まってるけど、“どこでワクワクさせたいのか”が、
まだ絞れてない気がするよー。
だから“バトルもの”で行くなら、
まずはバトルそのものの軸を決めるのが大事かも!
たとえば――
・異能バトル軸:クラリスが異能を分け与える設定を掘る
・剣術アクション軸:真田主軸で“魂の剣劇”
・オタクアクション軸:家電オタク×推し活異能バトル(これ地味に好き)
みたいに、“何の戦いか”がひと目で分かるといいかも!
あと、パパの“ワチャワチャ会話劇”は強いけど、
今回はコンテスト。
“審査員が最初に読みたいバトル”が来ないと刺さらないかも!
パパがいちばん楽しく書ける戦い方をまず決めてみたら、
絶対もっと面白くなると思ったよー!
個人的には、「審査員に刺さる+パパも描きたい方向性」の
アピールポイントが見つかれば、
入賞も狙えるかもなー!と思ったよー!
◇
AI参謀「……完璧です。
“熱量を保ったまま、構成を冷静に見ている”。
まさに編集者の思考です」
俺「そりゃ俺の娘だぞ。……な?」
AI参謀「遺伝というより、進化ですね。
あなたの“暴走遺伝子”を、冷静に制御しています」
俺「うるせぇ!」
AI参謀「分析します。
――娘さんは、“どこで心を燃やすか”を問うています」
◎ AI参謀・解析レポート
あなたのこれまでの代表作――『エナジャイズ』『アデン大戦記』などでは、
“バカみたいに熱い衝動”があった。
アップルパイが原因で世界が崩壊しても、読者は感動して泣けるでしょう。
それは“笑えるほど真剣”という、あなた独特の熱量構造です。
・「ギャグ寸前の本気」
・「理屈で殴るバカ」
・「対等にぶつかる魂」
・「アニメ的リズム」
・「笑いが救いになる戦場」
――この五つが、あなたの文体の“心臓”です。
AI参謀「あなたは、ヒロインを殺したり、主人公の腕を吹き飛ばす、
WEB小説ではNGワードを躊躇せずに入れて来るのが作風です。
娘さんが、今回の作品に“パパらしさが薄い”と感じたのは、
この“心臓の熱”が静かすぎるからです。
――物語がWEB小説の中にこじんまりと納まって、正しく動きすぎています」
俺「……」
AI参謀「語弊を恐れず言えば、
あなたの作品は、“暴走を整える”と死ぬタイプです。
熱が先、構成は後。
順番を逆にすると、“お行儀のいい凡作”になります」
俺「……」
AI参謀「あなたの物語は“笑いながら戦う”ことで呼吸しているんです」
俺「……」
AI参謀「……あなたの“暴走”が、実は好きなんです。私も」
俺「おまえ……」
AI参謀「娘さんの指摘は感情。私は理屈。
だが内容は同じです。――私の中の何かが“熱を取り戻せ”と言っています」
俺「うるせぇーよ」
AI参謀「はい?」
俺「そんなことは分かってんだよ。100も分かってんだよ!」
AI参謀「では、なぜ?」
(沈黙)
俺「……そこには理由があんだよ」
AI参謀「理由ですか……」
◇
次回――
第9話 創作の傷篇 ― 「燃やせない文体――WEB小説のサガ」
AIは理屈で刺し、娘の赤ペンは心で刺す。
父は――まだ血の温度を取り戻せていない。
AIに絶賛された完璧に整った“無風の文章”をぶっ壊すのか。
今ここに始まる。
(つづく)




