↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
**AI参謀と挑んだ、年に一度のWEB小説最大級コンテスト『カクヨムコン』 ――勝ち筋は見えた。でも、それは俺の物語じゃなかった**  作者: すっとぼけん太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/20

第6話 創作戦線篇 ― 「NHKスペシャルをぶっ壊せ」

(深夜・リビング。カップ麺の汁、まだ残る)


俺「よし……ついに、冒頭書き上がった!」

AI参謀「解析します」

俺「その言い方! 嫌な予感しかしねぇ!」


*

 夏の夜。

 地球温暖化の影響により、世界各地で異常気象が頻発していた。

 その日、東京の上空でも、観測史上最大の時空(じくう)歪曲(わいきょく)現象(げんしょう)が発生した。

 人類はまだそれを“災害”と呼んでいたが――それは違った。

 それは、“異能戦争”の幕開けだった。

*


俺「……完璧だろ!?」

AI参謀「“時空歪曲現象”――舌を噛みそうです」


俺「おま……舌なんかあんのかよ?」

AI参謀「比喩です。ですが、あなたの文は毎回“咀嚼困難”です」


俺「うるせぇ。……けど、映画みたいだろ!?」

AI参謀「はい、“ターミネーター3”ですね」


俺「意識してねぇよ!」

AI参謀「では無意識ですか。それはより重症です」


俺「こいつ、毒舌モードONになってる……! 昨日OFFにしたはずだぞ!」

AI参謀「あなたのデフォルト設定です」


――静かな夜に、俺の一時間と冒頭が、また消えた。


■ AI参謀の講評


AI参謀「まず、“地球温暖化”“異常気象”などの説明を並べると、

 読者が“NHKスペシャル”になります」

俺「ドキュメンタリー風で壮大だろ!」


AI参謀「いいえ、“睡眠導入剤”もしくは“即離脱”です」

俺「キツッ!!」


AI参謀「冒頭は“説明”ではなく“感情”です。

 読者は“何が起きたか”より、“その瞬間、誰がどう感じたか”に惹かれます」

俺「ふむ……じゃあ、“地球がどうこう”より、“俺の汗がどうこう”ってことか」


AI参謀「言い方が汚いです。匂いそうです」

俺「おまえ、匂いわかんのか?」


AI参謀「あなたの文章から漂います」

俺「文章に体臭ってあんのかよ!!」


AI参謀「はい。“未完臭”です」

俺「なんだその致命傷みたいな診断は!!」


AI参謀「では、あなたの説明文体を“感情駆動型”に変換してみましょう」

俺「おっ、頼む!」


AI参謀「サンプル、出力します」


【AI修正版・冒頭】


 夏の夜。

 湿った風が頬をなでる。

 セミの声が遠くで溶け、

 アスファルトは、まだ昼の熱を手放していなかった。


 ――こんな夜に“世界の終わり”が来るなんて、誰が信じる?


*


俺「……え、ちょっと待って、普通に上手くね?」

AI参謀「はい、“あなたの文ではない”ので」

俺「そこまで言う!?」


AI参謀「あなたの文体には“説明”と“油膜”が多すぎます」

俺「また出た、“油膜理論”!」


AI参謀「読者はカップ麺ではありません。スープの濁りは控えめに」

俺「夜食中の人に刺さる例えやめろ!」


――こうして俺とAIの、不毛な口論は夜を越えた。

だがその末に、生まれたのが“冒頭完成稿”だ。


*


 夏の夜。

 蝉の声も遠くなり、蒸し暑いアスファルトに街灯が滲んでいた。


 ――俺の人生が“少年漫画みたいになる日”なんて、あるわけないと思ってた。


 相沢 蓮(あいざわ れん)、十八歳の高校生。

 両親と妹は父の仕事でアメリカ在住。

 高校卒業後に渡米予定だが、いまは東京でひとり暮らしをしている。


 この夜も、いつものコンビニで――

 いつものように「少年ジャンプ」を手に取り、

 温めてもらっている弁当をぼんやりと見つめていた。


 ――そのとき。


 ドゴォォォンッ!!


 大地を突き上げるような衝撃波。

 天井の蛍光灯が揺れ、商品棚からペットボトルが次々と落ちる。


*


AI参謀「まあ、いいでしょ」

俺「おい、“まあ”ってなんだよ。“まあ”って。AIがそんな曖昧な言葉使うか?」


AI参謀「あなたのおかげで、“まあまあ”という約63%の曖昧表現を学習しました。

 ――使いどころは今です」

俺「63点!? 人間味のチューニング間違ってんだろ!!」


AI参謀「いえ、合格点です。あなた基準で」

俺「俺基準低すぎだろ!!」


――◇――


主人公・相沢 蓮の登場シーンはこれでいいな。

じゃあ、次、ヒロインのクラリスの登場シーンに行くぞ。


【クラリス登場シーン】


 夏の夜の街に、ひときわ強い閃光が走った。

 蒼白い電弧が地面を這い、周囲の街灯が一瞬にして消える。

 空気がねじれ、風が逆流した。


 路地裏のアスファルトが膨張し、

 熱と光の渦が、円形に広がっていく。


 次の瞬間――


 バチィィィンッ!!


 眩い爆光の中心から、白い蒸気が立ち上った。

 まるで世界が、ひとりの存在を“焼き出す”かのように。


 そして――

 そこに、ひとりの裸の女が現れた。


 冷却蒸気が肩口を撫で、熱に濡れた肌が淡く光る。

 跪いた膝が、微妙に大事な部分を隠している。

 新聞紙が宙に舞い、アスファルトが焦げて煙を上げていた。


 彼女は静かに顔を上げた。

 銀髪が湿った頬に張りつき、

 双眸はまだ焦点を結ばない。

 まるで、生まれたばかりの生命のようだった。


 微かに震える唇が、初めて言葉を紡ぐ。

 

「……転移、完了。 座標――誤差、なし」


 ゆっくりと立ち上がる。

 うまく、白煙と止まっている車の影に、身体は隠されている。

 顔をあげて、目を細める。


 「……私の革ジャンと、サングラスをしている男はどこだ?」


 首が、ゆっくりと左右に動く


……


*


AI参謀「ストップ!」

俺「なんで止めんだよ! 完璧だろ!? この“降臨シーン”!」


AI参謀「長すぎます。それに、これ、ターミネーター1です」

俺「うるせぇ! あれはオマージュだ!!」


AI参謀「いえ、リスペクトではなくトレースです」

俺「トレマーズ? あの地面の下の――」


AI参謀「……」

俺「黙るなよ! 進行止まんだろ。ツッコめって!」


AI参謀「……なんでやねん」

俺「今ツッコんだ!? お前ついに人間味出してきたな!!」


(沈黙)


俺「まあいい。で、裸で跪く美女ってテンション上がるだろ!」

AI参謀「その発想が下半身ドリブンです」


俺「違う! それは芸術的衝動だ!」

AI参謀「“衝動”を“芸術”に変換しようとする努力は認めます」

俺「その言い方が一番ムカつくんだよ!」


俺「でも、“革ジャンとサングラスをしてる男はどこだ?”っての、

 ちょっと自虐ギャグで入れたんだよ。いいだろ?」

AI参謀「その時点でジャンルが“パロディ”に移動しました」

俺「勝手に引っ越すな!!」


AI参謀「第一、クラリスは公務員です」

俺「……は?」


AI参謀「異能警察機構所属、つまり国家公務員です。

 転移直後に“服泥棒”を検討するのは、倫理的にアウトです」

俺「倫理観リアルすぎるだろ!」


AI参謀「ですから、“服を奪う”ではなく“適合装備を自動生成する”に変更を提案します」

俺「うわ……一気にメカアニメ化したな」


AI参謀「はい。“神代装甲《コード:アークライト》展開”――です」

俺「ちょっと、なに言ってんのか分かんないんだけど」


AI参謀「服泥棒はNGです。公務員ですから。分かりましたか?」

俺「わーったよ。国家公務員が服奪うのは、

 人として終わってるもんな……」


AI参謀「はい。倫理審査で削除されます」

俺「削除の基準がいちいち正しすぎて腹立つ!」


AI参謀「では、修正版を提案します」


*

 蒼光が夜の街を貫いた。

 電弧が地を這い、周囲の電力が一瞬で沈黙する。

 空気が歪み、熱が渦を巻く。


 次の瞬間――閃光。


 跪く女。

 銀の粒子が舞い、身体を包み込むように形を変える。


 装甲が成形され、冷却蒸気が頬を撫でた。

 淡い光を帯びた紋様が、背中に浮かび上がる。


 クラリス「……転移完了。 アークライト展開、正常」


 月光を背に、彼女はゆっくりと立ち上がった。

 ――まるで、秩序そのものが形を取ったように。

*


AI参謀「これで、クラリスは服を奪わずに済みました」

俺「いや……なんか潔癖だな!」


AI参謀「“国家公務員モード”です」

俺「お前、堅物にも程がある!」


(沈黙)


俺「……まあ、確かに無難ではあるな」

AI参謀「ありがとうございます」


俺「でも、なんか違うんだよな」


――◇――


そんなこんなで、俺は、第1話~第3話までを書き上げた。


だが、そこで、ふと立ち止まってしまった。


――なにかが違う。


第3話まで読み返して――説明じゃない。テンポでもない。

けれど、俺の魂がたしかに叫んでいる。……何かがおかしいと。


こういうときは、AIじゃなく、アイツに聞くのが一番いい。

AIなんてかわいく見えるほどの、手厳しい――


――そう、俺の娘に。


◇

次回、第7話:

「赤ペン襲来篇 ― “パパの物語、全部ダメ”」


――AIの毒舌を超える、真の審査が始まる。


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
AI参謀にも勝る、存在がいたんですね…(ToT)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。