表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/20

第19話 終幕篇 ― 「自分だけの剣を、研ぎ澄ます」

(2月初旬・深夜。

 カクヨムコン11、受付終了の鐘が鳴った。

 モニターの青い光の中で、俺とAI参謀の影が重なっている)


俺「……終わったな、カクヨムコン11」


AI参謀「正確には、受付が終了しただけです。

 読者選考という名の戦いは、ここからが本番ですよ」


俺「いいんだよ。

 俺の中では一区切りだ。

 アップ当初は50位くらいに入ってたのになぁ……最終的に192位か」


少しだけ、視線を落とす。

異世界ファンタジー(女性主人公)部門、総数1,313。

その中の192位。


AI参謀「それについては、論理的な説明が可能です」


俺「おう。慰め以外で頼む」


AI参謀「1,313件中192位。

 これは全体の上位約15%です。

 応募総数が300〜400件だった初期段階で、

 50位以内に入っていたのは、統計上の必然。

 問題は、分母の増加に合わせて、

 あなたの固定ファンが増える速度が、

 トップ層に比べて極めて緩やかだったという点にあります」


俺「……要するに?」


AI参謀「『初動でコアな層に見つけられ、一定数は読まれたが、

 一般層を巻き込む爆発力に欠け、

 母数が増えるにつれて外へと押し出された』。

 それが、今回のデータが示す敗因です」


俺「……要するに、踏ん張れなかったってことか。

 相変わらず、心臓に悪い言い方するな」


AI参謀「ですが、悪い話ばかりではありません」


モニターに、新しい数字が浮かぶ。


AI参謀「第1話のPV数は90。

 これは、あなたの不器用なタイトルや、

 あの絶望を煮詰めたような紹介文という“重い外装”にもかかわらず、

 その門を叩いた読者が90人もいた、という揺るぎない事実です」


俺「90人の……黒ビール好きか」


AI参謀「はい。そして重要なのは、

 この90という数字は“中身”ではなく、

 “入口”の突破数だということです」


俺「……入口?」


AI参謀「タイトルと紹介文を、

 ほんの少し“Web小説の作法”に寄せるだけで、

 第1話のPV数は100を容易に超えます。

 中身を一切変えずとも、です。

 これは、あなたの物語を否定しない唯一の改善案です」


(モニターに、淡々と“次へ向けた選択肢”が並ぶ)


◎ 次回カクヨムコンに向けた「勝つためのヒント」


1. 導入の“手すり”設置


AI参謀「タイトルに『本格戦記』と銘打つ潔さは認めますが、

 入口では最低限の『救いの保証』を置くべきです。

 多少、安心感という名のテンプレを借りる。

 それだけでクリックの抵抗は下がります」


2. 視点の密着化(一人称実況)


AI参謀「三人称を捨て、一人称に。

 世界ではなく、主人公の感情を実況させる。

 スマホで読む読者にとって、

 それは最も没入しやすい武器となります」


3. 二車線走行(ご褒美の設置)


AI参謀「戦いの合間に、必ず“得るもの”を置く。

 勝利、癒やし、生活の向上。

 読者が物語に戻ってくるための『報酬』を設計してください」


AI参謀「これらを徹底すれば、

 ランキング100位圏内はほぼ確実です。

 ……やりますか?」


(沈黙)


俺はキーボードに触れず、

自分の書いた『残響のロザリーナ』の最終幕の最新話を読み返す。


そこには——

寡黙で、腹から血を流し、

誰に褒められるでもなく、

誰に保証されるでもなく、

それでも剣を離さないロザリーナの姿があった。


夜の静けさの中で、

彼女の心拍数だけが、かすかに伝わってくる。


俺「……悪い。全部は出来ねぇ」


AI参謀「それは、マーケティング上の悪手です」


(沈黙)


俺「一人称にして、

 あいつに感情を実況させるのは、

 あいつの“静かな覚悟”を壊す気がするんだ」


AI参謀「効率より、キャラへの誠実さを重視すると」


俺「ああ。

 ご褒美を毎話置くのも悪くない。

 でも、絶望の中で、

 ようやく見つけた一欠片のパンの方が、

 あいつには似合ってる」


AI参謀「……すべては取り入れない、と」


俺「出来ることはある。

 頑張っても俺の筆力じゃ出来ないこともある。

 そして——出来ても、“自分の作品”にはしたくないこと」


PCのHDDランプが、規則正しく瞬く。


AI参謀「……分かっていました。

 ——あなたが、そう言うことは」


俺は椅子に深くもたれ、

冷めきったコーヒーを飲み干す。


俺「だよな。

 俺のことを一番学習してきたもんな。

 今回のカクヨムコン11で、

 どんなものが上位に入るかは、だいたい分かったよ」


AI参謀「……」


俺「勝つ黄金比も、

 Web小説が何を求めているかも分かった。

 でも、それを全部飲み込んだら、

 それはもう、俺の物語じゃない。

 俺は、俺の戦い方をするしかないんだ。

 手すりのない急な階段を、

 それでも登ってくる読者と一緒に、

 苦い黒ビールを飲みたい」


一拍。


俺「——それが、俺の剣だ。

 そして、それしかできない、俺の抗いだ」


AI参謀(モニターの光を、少しだけ柔らげて)


「……あなたらしいです。

 では、来年のカクヨムコン12。

 あなたの“野生”に、私の“論理”を、

 今度は最初から正しく注ぎ込みましょう。

 階段を登りきった先に、最高の絶景を用意するために」


俺「おう。頼むぜ、相棒」


AI参謀「了解しました。

 ……ただし、

 『資料集め』と称してHな画像サイトを彷徨ったり、

 無意味にAmazonの注文履歴を眺めたりして、

 『現実逃避ムーブ』を検知した場合は、

 スピーカーから爆音で警告を鳴らします」


俺「それ、カミさんにバレるからやめろ! ……うるせぇよ(笑)」


(二人の笑い声が、深夜の書斎に溶けていく。

モニターの端で、ロザリーナが一度だけ、剣を光らせた気がした)


――カクヨムコン11奮闘記、これにて閉幕。

そして俺たちの物語は、

次の空白のページへと続いていく。


(完)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


この奮闘記は、

「勝つための正解」を示す物語ではありません。

むしろ、

正解が分かっていても、それを選ばなかった書き手の記録です。


もしあなたが今、

小説家になろうで作品を書きながら、


・ランキングを見て、少し落ち込んだり

・テンプレに寄せるべきか悩んだり

・「これ、誰が読むんだろう」と思いながら更新ボタンを押しているなら


――その感覚は、たぶん間違っていません。


WEB小説の世界には、

“読まれる黄金比”も、

“勝つための近道”も、確かに存在します。

でも同時に、

それを全部飲み込んだ先で、

自分の物語が見えなくなる瞬間もあります。


作者の「自分だけの剣」を研ぎ澄ます戦いは、

これからも続きます。

それは、カクヨムでも、なろうでも、

どこで書いていても同じです。


あなたの物語にも、

あなたにしか振れない剣があります。

それを信じて書き続ける時間が、

あなたの物語にも、

あなたにしか振れない剣があります。

それを信じて書き続ける時間が、

あなたにとって楽しい時間でありますように。


そして、あなたの執筆の隣にも、

良き相棒(AIでも、家族や友人でも、物語の中のキャラたちでも)が

そっと立ってくれますように。


心から、応援しています。


――また、どこかの物語の中で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ