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第18話 ランキング上位から、勝つ黄金比を盗む(その③)

【自作品との比較】


俺「……じゃあ次だ」


俺は、モニターを指で叩いた。


俺「――今度は、これを読め」


AI参謀「承知しました」


俺「言っとくけど、

 さっきみたいに“記録がありません”は無しな」


AI参謀「今回は忘れません。量が少ないので」


俺「信用できねぇ……」


AI参謀「仕様です」


俺「その言葉、便利すぎて腹立つな」


(俺は、データを流し込む。

 作品タイトル、あらすじ、プロローグ、第一話冒頭。

 スクロールが止まるたび、喉の奥が乾いていく)


AI参謀「読み込み完了」


俺「……よし。どうだ」


AI参謀「分析します」


俺「さっきの“黄金律”と比べて、どこが違う?」


AI参謀「結論から言います」


俺「おう」


AI参謀

「この作品は、

 上位作品が提供する“安心”を、最初から壊しています」


俺「……壊してる、か」


AI参謀「はい。具体的に述べます」



AI参謀「まず、外装――タイトルと導入です」


***

『残響のロザリーナ

 ~兄を探す最強の剣姫は、

 守るべき小さな命と砦の絆のために剣を振るう~』


戦術・地形・士気

――すべてが生死を決める本格戦記ファンタジー!

***


俺「タイトルは長いだろ?

 サブタイまで付いてる」


AI参謀「長いです。

 しかし、上位作の“長さ”とは用途が違います」


俺「用途?」


AI参謀

「上位作の長文タイトルは、

 “読む理由を即決させる広告”です」


俺「……うん」


AI参謀

「しかし『残響のロザリーナ』は、

 安心して読める“保証”を提示する前に、

 “重さへの覚悟”を要求しています」


俺「覚悟、ね……」


AI参謀

「『戦術・地形・士気――すべてが生死を決める』

 これは、読者への宣言です。

 ――“気軽に読むな”と」


俺「……」


AI参謀

「さらに、あらすじ段階で

 “絶望世界”“最後の砦”“四百五十の大軍”。

 勝ち筋ではなく、負け筋の情報密度が高い」


俺「最初に胃が重くなるやつだな」


AI参謀「はい。

 上位作の提供する“安全な勝利”とは、真逆です」



AI参謀「次に、内装――プロローグです」


俺「どうだった?」


AI参謀

「最初の台詞が『兄さんっ……!』です」


俺「ああ」


AI参謀

「上位作なら、

 ここで“困った→でも何とかなる”を提示します」


俺「……」


AI参謀

「しかし、このプロローグは違う。

 “困った”の次に来るのが、“何とかなる”ではなく、

 “もっと終わる”です」


俺「……終わるって言うな」


AI参謀

「王都は炎と血。

 魔獣は統率され、

 “勝利の光はなかった”と断定される。

 読者を掴んで、逃がしません」


俺「逃がさないっていうか……潰してるか?」


AI参謀「はい。押し潰しています」


俺「言い方!」


AI参謀

「そして、最も大きいのは描写の質です」


俺「質?」


AI参謀

「轟音、震動、空気が悲鳴を上げる。

 “世界が割れる”を、比喩ではなく災害として描いている」


俺「世界観、効率重視じゃないってことか」


AI参謀「はい。

 既知イメージに寄りかからず、

 “この世界は重い”と体感させに来ています」


俺「……」


AI参謀

「つまり、序盤で読者に要求するものが違います」


俺「要求?」


AI参謀

「テンポではなく、体力。

 快感ではなく、喪失。

 肯定ではなく、選択の覚悟です」



俺「――そうか。

 じゃあ第1話は?

 上位作なら“体験版”だろ」


AI参謀「第1話も、構造が真逆です」


俺「真逆……」


AI参謀

「血に染まる朝。

 吊るされた死体。

 カラス。

 泣き声すらない。

 “居場所”の気配がゼロです」


俺「……」


AI参謀

「上位作は、

 “居場所が欲しい”に対し、

 拠点・相棒・日常を早めに提示します」


俺「ロザリーナは……」


AI参謀

「居場所を与えません。

 まず提示するのは、

 奪われたものと、戻らない日常です」


俺「でも、お笑い担当のニコルが来るだろ」


AI参謀「来ます。

 しかし彼は“安心装置”ではない」


俺「え?」


AI参謀

「彼の軽口は、

 安全を保証するためではなく、

 “安全がない場所で呼吸するための呪文”です」


俺「……緩衝材、か」


AI参謀

「笑いはある。

 だが土台は笑えない。

 だから笑いが救済にならない」


俺「上位作のコメディは、笑いを安心の上に置くけど……」


AI参謀

「ロザリーナのコメディは、絶望の上にあります」



AI参謀「そして、最大の違いです」


俺「何だ」


AI参謀

「上位作は

 “肯定されたい”

 “安全に勝ちたい”

 “居場所が欲しい”

 この三つを最短で満たします」


俺「……」


AI参謀

「『残響のロザリーナ』は違う。

 勝っても、傷が残る。

 救っても、誰かが折れる」


俺「戦記だからな」


AI参謀

「はい。

 戦いが“ご褒美”ではなく、

 “代償”として描かれています」


俺「……」


AI参謀

「快感はあります。

 しかし、遅い。重い。苦い」


俺「三段活用かよ。

 ……黒ビールだな」


AI参謀「黒ビールに失礼です」


俺「いや、俺の作品にだろ」


AI参謀

「あなたの作品は、炭酸のようには喉を滑りません。

 噛むしかありません」


俺「なんだそれ、噛むなよ」


AI参謀「比喩です」



俺「じゃあさ」


コーヒーを一口飲む。

苦い。冷たい。――でも、さっきよりはマシだった。


「これを、上位の黄金律に寄せたらどうなる?」


AI参謀「どう、とは?」


「タイトルをそれっぽくするとか、

 プロローグだけテンプレ偽装するとか」


AI参謀「……」


(モニターが、ほんの一瞬だけ沈黙した)


AI参謀「結論を言います」


俺「おう」


AI参謀

「無理です」


俺「即答かよ」


AI参謀

「あなたは承知で、

 Web小説の“読まれる条件”を外して書いています。

 テンプレに逆行したこの物語は、

 ランキング上位にはなりません」


俺「……」


AI参謀

「それが、カクヨムという場所で、

 そこの多くの住人が求めている作品像とは違うのです」


俺「……まあ、分かってたけどな」


俺は肩をすくめた。


「人気のテンプレを書けたらいいよな。

 けど、無理なもんは無理だし……。

 きっと俺は、別の勝ち方しかできない」



――そして、ここで重大な問題を思い出す。


カクヨムコンの受付は、まもなく終了する。

このエッセイを、どうするのか。



次回――

第19話

「このエッセイをどうすんだよ?」


(つづく)

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