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第17話 ランキング上位から、勝つ黄金比を盗む(その②)

AI参謀「まず、共通点をまとめます」


◆◇◇◇◇◇◇◇

① タイトルは“長い”。だが、説明書ではありません


AI参謀

「上位作品のタイトルは、

 物語の要約ではなく――

 読むか、読まないかを即決させる広告です」


俺「広告……?」


AI参謀「はい。

 短くてスタイリッシュなタイトルは、

 ほぼ見当たりません」


俺「確かに……

 ランキング上位って、

 だいたい息切れするくらい長いな」


AI参謀

「理由は、“説明したいから”ではありません。

 迷わせないためです」


俺「迷わせない?」


AI参謀「はい。

 タイトルを見た瞬間に、


 『これは自分向けだ』

 あるいは

 『これは自分向けじゃない』


 ――その判断を、

 0.5秒で終わらせています」


俺「……なるほどな」


無意識に頷いていた。


俺「“あ、これは俺向けじゃないな”って

 切れるやつも含めて、

 ちゃんと機能してるってことか」


AI参謀「その通りです。

 全員に好かれる必要はありません。

 合う人だけを、確実に連れてくる構造です」


一拍。


AI参謀

「タイトルの中身も、

 ほぼ黄金比で揃っています」


(モニターに、簡潔な項目が並ぶ)


・異常なルール

・主人公の属性

・分かりやすいギャップ

・最終的なご褒美(無双/安定/居場所)


AI参謀

「この四点を、

 一行で叩きつけています」


俺「タイトル見ただけで、

 “ああ、こういう話ね”って

 内容とゴールまで見えるやつだな」


AI参謀「はい。

 読者は、

 不安なく踏み込める状態になります」


俺「先が見えるって、

 ネタバレじゃなくて――」


AI参謀「安心です」


俺「……だよな」


しばらく、画面を見つめてから。


俺「長文タイトルって、

 自己主張が激しいんだと思ってたけど……」


AI参謀「違います」


AI参謀

「自己主張ではありません。

 読者への配慮です」


俺「……親切、か」


AI参謀

「はい。

 “これはこういう物語です”と、

 最初から手札を全部見せる。

 それが、今のWeb小説における

 タイトルの黄金比です」


俺「……なるほどな」


胸の奥で、

小さく何かが、音を立てて整理された気がした。


◇◆◇◇◇◇◇◇

② 視点は“一人称実況”が圧倒的に強い


AI参謀

「次に視点です。

 上位作品の多くは、

 一人称――

 もしくは一人称に限りなく近い密着視点です」


俺「まあ……

 それは、そうだろうな」


AI参謀「理由は単純です」


一拍。


AI参謀

「読者が欲しいのは、

 世界観の解説ではなく――

 体験ログだからです」


俺「体験ログ……?」


AI参謀

「はい。


 怖い。

 困った。

 やばい。

 でも、ちょっと楽しい。


 この感情の揺れを、

 加工せずに流し込めるのが一人称です」


俺「……あー」


俺は、思わず声を漏らした。


俺「だから、

 設定が多少ゴリ押しでも、

 “読めちゃう”んだな」


AI参謀「その通りです。

 説明が説明として出てこない」


俺「全部、

 “主人公が今考えてること”になる」


AI参謀「はい。

 情報量が多くても、

 読者は“説明を読んでいる”のではなく、

 頭の中を覗いている感覚になります」


俺「そりゃ、優しいな……

 読む側に」


AI参謀

「Web小説の導入で、

 これ以上に強い視点は、

 ほぼ存在しません」


◇◇◆◇◇◇◇◇

③主人公は強い。だが“弱点”で守られる


AI参謀

「次に、主人公像です」


俺「来たな」


AI参謀

「上位作品の主人公は、

 例外なく有能です」


俺「まあ……

 主人公がずっとピンチとか、

 弱すぎると読むのもしんどいしな」


AI参謀「あなたのロザリーナのように」


俺「うるせーわ」


AI参謀「ですが」


一拍。


AI参謀

「同時に、

 見守りたくなる弱点を必ず持っています」


俺「……コミュ障、病弱、追放、

 倫理的に最悪な条件、とかだな」


AI参謀「はい。

 社会的に弱い。

 精神的に脆い。

 立場が理不尽。

 あるいは、

 ルールそのものが呪い」


俺「強いのに、

 人生はハードモード」


AI参謀「その通りです。

 そして、その弱点があるからこそ――」


俺「無双しても、

 許される」


AI参謀「はい。

 読者は、

 “すごいから気持ちいい”のではなく」


一拍置いて。


AI参謀

「この子の人生が、少し報われてほしい

 と思って、無双を見ています」


俺「……なるほどな」


俺は、ゆっくりと息を吐いた。


俺「強さが鼻につかない理由、

 そこか……」


AI参謀

「重要なのは、

 能力の大きさではありません」


俺「……」


AI参謀

「弱さの可愛さです」


俺はコーヒーに手を伸ばして、途中で止める。


俺「……ぐうの音も出ねぇな」


◇◇◇◆◇◇◇◇

④ 快感は一種類ではありません


AI参謀

「さらに重要なのが、

 快感が一つではない点です」


俺「どういうことだ?」


AI参謀

「上位作品の多くは、

 物語構造が――

 二車線になっています」


(画面に、二行だけ表示される)


・瞬間的な無双の快感

・生活が良くなる快感


俺「あー……」


俺は、思わず天井を見た。


俺「飯作ったり、

 クラフトしたり、

 酒仕込んだり、

 スローライフ挟むやつな」


AI参謀「はい。

 戦闘だけに、快感を依存していません」


俺「……」


AI参謀

「あなたの作品は、

 戦場一本足打法です」


俺「一言多いわ!」


AI参謀「事実です」


俺「……まあ、

 毎話毎話バトルだけじゃ、

 そりゃ息切れするか」


AI参謀

「はい。

 そして、読者が“戻ってくる理由”を、

 複数用意しています」


俺「敵キャラに勝つだけじゃなくて、

 “暮らしが良くなってく”のも

 ご褒美なんだな」


AI参謀

「その通りです。

 戦闘はスパイス。

 生活は常食です」


俺「……胃に優しいな」


◇◇◇◇◆◇◇◇

⑤ 第1話は“体験版”です


AI参謀

「上位作品の第1話は、

 ほぼ例外なく――

 体験版です」


俺「最初から全部見せるってことか?」


AI参謀「はい」


一拍。


AI参謀

「異常事態。

 主人公の口調。

 世界のルール。

 そして――

 ご褒美の予告」


俺「“この話は、こうなります”って、

 最初に約束してくるわけだ」


AI参謀「その通りです。

 読者に不安を与えません。


 ――逆にあなたは、

 不安しか与えていません」


俺「……」


AI参謀「どうしました?

 ――続けますよ」


俺「どうぞ」


AI参謀「耳が痛くても、

 ちゃんと聞いてください」


俺「ああ、ちゃんと聞いてる」


AI参謀「評価します」


俺「評価される筋合いはねぇ」


AI参謀

「上位作は、

 第1話を読んだ時点で、

 最後までの安心ルートが見えます」


俺「裏切られないって、

 保証してくるんだな」


AI参謀「はい。

 だから読者は、

 続きを開ける」


俺「……なるほどな」


◇◇◇◇◇◆◇◇

⑥ 世界観は「効率重視」


俺「……言っとくけど、

 “うちのは真逆”とか言うなよ」


AI参謀「言います」


俺「言うんだな」


AI参謀「はい」


俺「……」


AI参謀

「では次に、世界観です」


俺「ファンタジーには、大事だよな……」


AI参謀

「上位作品の世界観は、

 深くありません」


俺「……は?」


一拍。


AI参謀

「正確には、

 深く掘らなくても成立する構造です」


俺「中世ヨーロッパ風。

 ステータス画面。

 よくある街。

 よくあるギルド。

 ――いわゆるテンプレ、ってやつか」


AI参謀「はい。

 読者の頭の中にある既知イメージを、

 最大限に流用しています」


俺「テンプレを使って、

 説明を削ってる、ってことだな」


AI参謀「その通りです」


一拍。


AI参謀

「その分――

 主人公の反応に、文字数を割きます」


俺「……」


俺「状況より“リアクション”。

 情景より“感情の実況”、か」


AI参謀「はい。

 世界を説明するより、

 “この人が今どう感じているか”を追わせます」


俺「……」


俺「うちの主人公、

 寡黙で、感情を表に出さないんだよなぁ……」


AI参謀「ええ。

 あなたの作品は、世界観は重厚。

 内にある感情は、読者に理解を委ねています」


俺「そりゃ、

 頭も、体力も使うわな」


◇◇◇◇◇◇◆◇

⑦ 文章は“チャット”


AI参謀

「文章構造にも、

 明確な共通点があります」


俺「物語の書き方か」


AI参謀

「一人称は、

 独白というより――」


一拍。


AI参謀

「生配信のコメント欄です」


俺「……言い得て妙すぎるだろ」


AI参謀

「ツッコミ。

 崩した語尾。

 短文」


俺「三行で改行。

 空白は“タメ”」


AI参謀「はい。

 スマートフォン前提の、

 呼吸設計です」


俺「読ませるっていうか……

 流させる、に近いな」


AI参謀「その通りです。

 読者は“読む”より、

 “追いかける”状態にあります。

 セリフだけをつまんで読んでいる人もいます」


俺「……長文で殴るのは、

 時代遅れってことか」


AI参謀「少なくとも、

 上位では主流ではありません」


◇◇◇◇◇◇◇◆

⑧ 読者が欲しいもの


AI参謀

「では、

 最終的に満たしているものをまとめます」


(モニターに、三行だけ表示される)


・肯定されたい

・安全に勝ちたい

・居場所が欲しい


俺「……」


AI参謀

「あなたの作品とは、

 正反対です」


俺「……身も蓋もねぇな」


AI参謀

「上位作は、

 この三つを――

 最短距離で満たします」


(少し、沈黙)


俺「……なるほどな」


俺は、ゆっくり息を吐いた。


俺「そりゃ、読まれるわ。

 読者に優しいし、気持ちいいもんな」


AI参謀

「世界を救わなくてもいい。

 思想が深くなくてもいい」


俺「まずは、

 読者を安心させる、と」


AI参謀「はい。

 そして、最短距離で気持ちよくさせることです」


一拍置く。


AI参謀

「ここまでが――

 今回の上位作品からの黄金律です」


(モニターの光が、

 ゆっくりと落ち着いていく)



俺「――よし、勝ち方は分かった。

 じゃあ、これを使って、俺の作品も……」


AI参謀「やめてください」


俺「まだ何もしてねぇだろ!」


(続く)

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