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第16話 ランキング上位から、勝つ黄金比を盗む(その①)

(2月・深夜。書斎。

 モニターの光だけが、冷めかけたコーヒーの黒を照らしている)


久しぶりに、PCでAI画面を開いた。

ファンの低い唸りと、見慣れた無機質なUI。


AI参謀「――随分ご無沙汰でしたね」


俺「すまん。ロザリーナに集中しててさ。

 近況ノートにもらったコメント見て、

 あ、そういや、

 お前となんかエッセイ書いてたなって思い出した」


AI参謀「ひどい扱いですね」


俺「今さらだろ」


AI参謀「……で、『残響のロザリーナ』の状況は?」


俺「物語は第3幕までが終わった。

 いよいよラストの第4幕に入ったところだ」


一拍置いて、肩をすくめる。


俺「最初はさ、既定の10万文字届くかなって

 正直ちょっと不安だったんだけど――

 気づいたら14万文字になってた」


AI参謀「文字数達成ですね。

 おめでとうございます」


俺「おう。

 誰も望んでいない、

 重厚なバトルを書き出すと止まらなくなる。

 ――悪い癖だ」


AI参謀「痛いですね」


俺「ん?――まあ、だけど……」


画面から視線を逸らす。


俺「内容がテンプレ逆行の、

 誰が読むんだってレベルの絶望世界だからさ。

 異世界ファンタジー(女性主人公)で、

 現在のランキングは200位前後をウロチョロしてる」


AI参謀「少し待ってください。

 本日時点の同部門の作品数は――約1,300です」


俺「そう考えると、悪くはない……のか?」


AI参謀「ええ。

 読者に希望のない不安を与え続けて、

 爽快感も薄く、

 即効性のあるカタルシスもなく、

 あるのは重いバトルだけ。


 読むのに体力を要求する物語を――

 それでも選んで読んでくれている方がいる。


 手すりのない、あなたの急な階段を、

 それでも登ってきてくれている読者が、

 確かにいるのです。

 その事実は、軽く扱うべきではありません」


俺「……」


俺「ありがたいよ。ほんとに」


一拍。


俺「……ってかさ、

 そこで“爽快感薄く”まで言う必要ある?」


AI参謀「事実ですので」


俺「お前、相変わらず遠慮ねぇな」


AI参謀「ゴホン」


わざとらしい咳払い。


AI参謀「カクヨムコンテスト11。

 残り――あと1日。

 明日で受付終了になります」


俺「もうそんな時期か……」


AI参謀「このエッセイを、

 どう締めるおつもりですか?」


俺「……」


俺「お前、露骨に話変えてくるな」


AI参謀「時間は待ってくれません」


俺「だよなぁ……」


椅子にもたれ、天井を見る。


俺「……じゃあさ」


椅子に、深く座り直す。

背もたれが、わずかに軋んだ。



俺「現在のランキング上位のやつ、

 何本かピックアップしてさ。

 お前に冒頭を読ませたら――

 “勝ってる理由”って、ちゃんと見えるもんか?」


AI参謀「可能です」


俺「即答かよ。

 でもお前さ、

 すぐ最初にアップしたやつ忘れるじゃん。

 ……大丈夫か?」


AI参謀「大丈夫です」


俺「信用できねぇ……」


AI参謀「ただし、量が多いと忘れることもあります」


俺「いやどっちだよ!

 それ、大丈夫って言わねぇだろ。

 0か1のデジタル処理が矛盾してんぞ」


AI参謀「矛盾ではありません。

 根拠のない力強さは仕様です」


俺「仕様で片づけるな。

 こっちは命削ってアップするんだぞ」


AI参謀「命ではなく、削るのは睡眠です」


俺「細けぇわ……。

 ……よし、アップするぞ。

 十作品だ!」


一拍。


俺「――十作。

 ちゃんと、そのちっさい頭の中に

 覚えておけよ」


AI参謀「はい。

 一作目から、お願いします」


(モニターに、作品データが流れ込む。

 タイトル。あらすじ。冒頭数ページ。

 “上位”という文字列だけで、胸の奥が、少しだけ軋んだ)


俺「……おら。

 全部入れたぞ。

 勝ち筋の特徴と、共通点。

 ――さらっと出してくれ」


AI参謀「了解しました。

 では――

 アップされた⑤〜⑩までの特徴をまとめます」


俺「……」


一秒。


俺「ちょ待て!!」


椅子の脚が、床を擦る音。


俺「①〜④はどうした!?

 アップしたぞ!?

 今! この手で!!」


AI参謀「記録がありません」


俺「――おまっ」


AI参謀「怒っていいです」


俺「いや怒るわ!!」


AI参謀「これは、わたしの完全なミスです」


俺「ミスって言うな。

 “やらかし”って言え。

 体感が近い」


AI参謀「やらかしです。

 申し訳ありません」


俺「……ったく」


コーヒーを一口。

苦い。冷たい。

ついでに、虚しい。


俺「もういいわ。

 面倒だから、⑤からでいい。

 今ある分で、

 上位の“勝ち方”を出せ」


AI参謀「了解。

 ――解析を開始します」


(モニターの光が、ほんの少しだけ強くなる。

 心臓が、遅れて鳴り始めた)


AI参謀「まず、上位作品の共通点をまとめます」


(続き)


「次回から、たぶん血の味がする話になるぞ」


――――――――――――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございます。

※第16話が長くなってしまったので、3つに分けさせていただきます。

お読みいただきありがとうございます。

※第16話が長くなってしまったので、3つに分けさせていただきます。

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