第14話 分岐篇 ― 「とぼけた作家は、どさくさ紛れに別の剣を抜く」
(12月初旬・夜。書斎。暖房はまだ入れていない)
京都には、ある都合で行けなかった。
(詳細は近況ノートでw)
本来は――
京都に行ってリフレッシュして、
いいアイデアが浮かんで、
また精力的に
『異能戦線トーキョー・クロスリンク』を書き始めるつもりだった。
そして、それをウォッチして、この奮闘記も並走させる。
――けど、それが出来なくなった。
俺「……どうする?」
モニターの前で、椅子が小さく軋む。
AI参謀「予定が狂いましたね」
俺「予定は予定だ。
人生はだいたい予定通りに行かない」
AI参謀「言い訳指数、上昇しています」
俺「うるせぇ」
カレンダーを見る。
気づけば、もう12月に入っていた。
――カクヨムコン、開幕。
俺「……始まっちまったな」
AI参謀「はい。
現在、すでに投稿を開始している作者も多数確認されています」
俺「だろうな。
……で、俺は、何も出してない」
(沈黙)
AI参謀「異能戦線トーキョー・クロスリンクは――」
俺「出せない」
即答だった。
俺「終わるか分からないものを出すのは、
途中まで読んでくれた人への裏切りだ。
それは、さすがに出来ねぇ」
AI参謀「……正しい判断です」
俺「でもな、だからって、
“何も出しませんでした”は――もっとダメだ」
AI参謀「矛盾しています」
俺「分かってる。
だから、考えた」
キーボードから手を離し、天井を見る。
俺「――とりあえず、アップするぞ」
AI参謀「はい?」
俺「異能戦線は出さない。
でも、何も出さないのも違う」
AI参謀「……では、何を投稿するのですか?」
俺は、少しだけ笑った。
俺「この奮闘記の第1話で、お前が言っただろ」
AI参謀「……?」
俺「『あなたがファンタジーで書けるとしたら、
**“女性主人公”**が精一杯です』って」
AI参謀「……記録があります」
俺「――それを出す」
(沈黙)
AI参謀「どういう意味ですか?」
俺「実はな。
書けなくなった時、裏でちょっとだけ書いてたものがある」
AI参謀「……裏で?」
俺「異能戦線が開けなくなって、
カーソルが怖くなって、
“構成”って言葉を見るだけで胃が痛くなってた頃だ」
AI参謀「……」
俺「何も考えずに、
“とりあえず一人だけ、寡黙な剣を振らせた”話がある」
AI参謀「……それは?」
俺は、画面を見つめたまま言った。
俺「 俺自身が、一番驚いている。
まさか、この名前をここで出すことになるとは。
――『残響のロザリーナ』だ」
一瞬、PCファンの音が止まった気がした。
もちろん、気のせいだ。
AI参謀「……それは、ダメです」
俺「お前にも見せなかったのは悪かった。
そんなにへそ曲げるなよ」
AI参謀「違います」
声が、少し低い。
AI参謀「この奮闘記は、
“異能戦線を書きながら迷走する記録”として進んできました。
ここで作品を変えたら、
ここまで読んでくれた人たちが――」
俺「大丈夫」
軽く手を振る。
俺「誰も、ちゃんと読んでなんかないってw」
AI参謀「……」
俺「分かんないって。
この第14話のタイトル変えて、
しれっと、ロザリーナにしとけば」
AI参謀「……それは」
俺「無風作家だからできる、
しょうもない戦術的軌道修正だ」
AI参謀「修正、ですか」
俺「ああ。
逃げじゃない。
“ちょびっと剣を変える”だけだ」
(沈黙)
AI参謀「……解析します」
俺「やめろ。
解析すると、だいたい正論が出る」
AI参謀「……」
数秒後。
AI参謀「――合理性は、あります」
俺「だろ?」
AI参謀「書けているものを出すことは、
“止めたまま”よりは良い判断です」
俺「だろ。
そして、ロザリーナを完結させれば、
“読者を裏切ることにはならない”
……ま、そういうことだ」
AI参謀「……ただし」
俺「はいはい、ただし来た」
AI参謀「この瞬間から、
この奮闘記は――
“一本の作品を追う記録”ではなくなります」
俺「うん」
AI参謀「“書けなかった男が、
別の剣を抜くまでの記録”になります」
俺「……それ、悪くねぇな」
AI参謀「この章のタイトル修正が必要です」
俺「だろうな」
少し考えてから、打ち込む。
第14話
「とぼけた作家は、どさくさ紛れに別の剣を抜く」
俺「どうだ」
AI参謀「……誠実よりも、ズルが勝っています」
俺「それが俺だ」
モニターの光が、ほんの少しだけ明るくなった。
――心臓は、まだ全開じゃない。
でも。
止まってはいない。
◇
次回――
第15話(仮)
「まずはAI参謀に、残響のロザリーナを見てもらう」
俺は――逃げたのか。
選んだのか。
いや、たぶん。
その両方だ。
(つづく)




