アカイキオク3
結果はすぐに出た。
いかなる事件においても、防犯カメラの映像を含めて、目撃情報が事件解決の鍵だというのに、松長エミリアの事件ではそれが皆無だった。
(奇妙じゃ)
(同感だ、不自然すぎる)
閑静とはいえ住宅地で起こった事件なのに、誰も犯行を目撃していない。
松長邸に設置された防犯カメラ群が物理的に、それも銃器を用いてかなり乱暴にクラッシュされているにも関わらずだ。
夜間の犯行とはいえ音は聞こえていたはず。
ならば何故、近所の人々は口を噤んだのか。
(報復を恐れた?)
誰だって『ガブリエルのホルン』と関り合いになりたくはない。だから、あり得なくはないが、資料によれば、松長夫婦が暮らしていたエリアは人種だって暮らしている。匿名で情報提供があってしかるべきなのに、でも、なかった。
「部長、どうして松長邸の事件ではタレコミがなかったのでしょうか?」
「さてな。だが、関係者全員が口を噤むとしたら、可能性は二つきりーー恐怖か、それともそう振る舞う必要があったからだろう」
「必要ですか・・・・・・」
報復よりも優先すべき事案があったと仮定し、再度思索する。
(もしかして地域ぐるみで何かを隠した?)
そうだとしても、いったい何を隠したのか。
(・・・・・・うーん)
ベースとなる情報が不足していて、その先に観察が届かない。
思索の立ち位置を切り替える必要を感じた。
(そもそも襲撃者は何を目的にして犯行に及んだ?)
ここが分かれば、隠された何かの判別は容易い。
(やってみるか)
シナガワ署でミヒャエル・ギーの記憶から吸収した憑依能力を自己流にアレンジし、
(ユウダチ、差別主義者どもの思考をパターン化してくれ)
(ほほう、面白いな。任せるがよい。・・・・・・・・・・・・送るぞ)
ユウダチの補佐を受け、類型化された差別主義者の思考パターンを脳内に刷り込んでみた。
彼らの根底には『定命』という思想、侵略者の絶対数を減らさなければ、すぐにでも世界が滅んでしまうという危機感が蟠っている。
(街に暮らす亜人種とて門を越えた侵略者だ。是が非でも排除しなければならない)
これは必要な駆除だ。害虫を除く行為と何ら変わらない、例えるなら、軒下に作られたスズメバチの巣を除去する行為と同じである。
(巣?)
巣の中には何がいる?
(・・・・・・あ!)
巣の中にいるのは、母体になった存在と、因子をつないだ子だ。
(そうか、そういうことか)
松長エミリアが襲撃された理由を箇条書きにしてみるとーー
一つ、人間ならざるヒトの身で人の子を孕みし罪。
二つ、異なる遺伝情報をつないでしまえる母体の排除。
三つ、環境適応した新種の駆除。
環境に適応した種は増える、理論上であれば、それこそ無限に。
それは、純血主義者にとっては唾棄すべき脅威である。
僕はもう一度、赤い写真を見つめた。
失敗と嫌なことが続いてメンタルが地に落ちているので、気分転換にフライング掲載させてもらいました。
次回が11日に掲載できるかまだ分かりませんが、よろしくお待ちくださいませ。




