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カワリモノ  作者: 老木 勝秋
薔薇の名前

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アカイキオク1

「鞍馬、たしかM200カスタムだったな、御子神のライフルをどうした?」

「戦闘中に破壊しました」

 僕の返答に藤堂部長は珍しく満足げな笑みを浮かべた。

「使い慣れた主兵装を失えば精神が安定を欠き、極僅かなりとも隙が生じる。お前はよい教え子だよ」

「ですが、ベテランであれば使い込んだサブウェポンを所持するものです」

「御子神は三流だ。ましてレギオンにおける狙撃主界隈は辺鄙な世界だ。偏った志向を有していたとしても目立ちはしまいさ」

 蛇足だったな、と藤堂部長が断りをいれ、僕に向けられていた視線から笑みが消える。この雰囲気だと、どうやら本題に入ったようだ。

「安全保障会議による駆除命令が執行されても、証拠物件は即座に焼却されない。この規定はしっているな?」

 ええ、と頷く。

「二十五年間の冷凍保存。冤罪を防止する観点で設けられた規定です」

 駆除した後に冤罪云々を言っても本当は無意味だ。しかし、人権に配慮はしていますよという法制上のエクスキューズにはなる。この一文の真意はその程度のものだが、だとしたら何故それを確認したのだろうかと疑念を抱くと、藤堂部長が寸暇なく言った。

「一連の被害者たちに一致する線条痕を備えたM200ライフルが、冷凍保存される証拠品リストに名を連ねている。・・・・・・この事を鞍馬はどう思う?」

 良くない話の流れだ。藤堂部長好みの、僕のとっては最悪に分類される解答に導かれている、そんな予感が頭の中で赤く明滅し、会話をはやく切り上げろと警告を発していた。

「予備が発見されたのではありませんか」

 線条痕は指紋と同じだ。同一の物など理屈の上では存在しない。それを承知で愚を装うと、藤堂部長は鼻で嗤って言った。

「内に育まれた真実を優先するつもりなら、研究者への道を歩むと良い。事実を曲解しても失笑を買うだけで済む」

「・・・・・・・・・・・・」

 藤堂紅羽が優しい目をして言った。

「鞍馬、辿り着いた事実から目を背けるな」

(・・・・・・こういう時にこそ、普段の突き放した言い方をして欲しいのになぁ)

 そうしない藤堂紅羽は優しくて、残酷だ。

 藤堂部長がじっと僕を見据えた。


「真実を求め、逆転を望むのなら、どれほど苦しくても絶対に目は背けるな」


 紅羽さんの教えであり、僕を今も律し続ける心の芯だ。

 唇に歯を立て、芽生えた都合のよい惰性を噛み殺す。

(藤堂部長は被害者の線条痕が全て一致すると言ったーー)

 被害者リストのラストに御子神の名を書き加えるのであれば、考えるまでもない。証拠品が示す犯人はたった一人きりだ。

「市ノ瀬直弥さんが、一連の殺人事件の犯人です」

次は11月2日の更新を予定しています。

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