表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カワリモノ  作者: 老木 勝秋
薔薇の名前

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/51

シナガワ鬼譚4

 シナガワ署の一キロ手前で臨時検問に引っ掛かった。

 タクシーから降ろされた上に、ここから先は立ち入り禁止の一辺倒。

 事情を聞いても非常事態の一点張りで、流石に腹が立って検問中の警察官たちの目の前に、夕立の自走鎧櫃を降下してもらった。

 唖然とする警察官の前で人間大の長方形の箱の中に入り(結構爽快だった)、全自動で甲冑装備を完了して外に出てから気付いた。

「しまった。もうちょっと向こうに降ろしてもらえば、こいつらの視界の外を走り抜けられたんじゃ・・・・・・」

「時々心底思うのじゃが、お主、本当に阿呆よな」

「ぐはっ!」

 ユウダチの素顔の突っ込みは心にとても痛かったが、それはさておき。外に出ると、警官たちの態度が変わっていた。

 先ほどと違い、遮る素振りがなかったのだ。

(どうしたんだろ?)

 アークナイトに認められているのは、セイント護衛に必要な市中武装特権とそれに付随する交戦権で、警察が所管する事件への介入権はない筈なのだが・・・・・・

「市長と話を付けた。もとよりLAWS絡みの案件は聖教会の所管だからな」

 インカムに流れたのはスカリーシェリによく似ていて、もっと大人びた感じのハスキーボイスだった。

「この声は、ミュスカさん?」

「ミュスカルナ大司教聖下だーー」

 魂の凍える冷たい断言の後に、くくくっと喉を鳴らす怖い笑い声が聞こえ、「その呼び方も特例として認めてやらぬでもないが、そこは働き如何よな」と呟きが聞こえた。

(許された? でもきっと下手すると粛清されるパターンのような気がする)

(うむ)

「時間が惜しい」

 とミュスカさんが事情を説明してくれた。

「今川が即時制圧を主張する警察幹部を退けて、お前に預けた時間は一時間だ。この意味が分かるな?」

「一時間でシナガワ署を制圧しろっていうんですか?」

 しかも単騎制圧である、随分と無理を言うものだ。

 警察車両があちこちに停車する車道を疾駆しながら、つい声に苦笑がまじった。

「本来、こういう非常事態に投入される少数精鋭がシナガワ第二機動部隊だ。それが使えない以上、お前がしくじると無駄にヒトが死ぬことになる」

 夜の帳が下りたシナガワ署の駐車場に、近在署から掻き集められた軽装備ーー生身の警察官を主体とした突入部隊が装備の点検を始めていた。

(って、バトルドレスは三体だけかよ。しかも全騎人造呪核搭載機の数打ち(りょうさんき)じゃないか。あれじゃLAWSの核を有するシャーマンの相手なんて出来っこない)

 きっと、警察上層部もそんなことは百も承知だ。

 それでも突入準備をさせている。つまり、警察上層部は犠牲が出るのを承知の上で強行作戦に打って出るつもりなのだろう。

(失敗すればミサイル攻撃でシナガワ署を吹き飛ばせるってかい)

 それでシャーマンが屠れるとも思えないが、一応制圧された建物は解放(?)できる。

(半裸同然の警官隊を突入させる輩じゃ、その程度の愚行など朝飯前でやるじゃろう)

 ユウダチが呆れた様子で笑った。

 第二機動部隊が抱える闇ごと葬り去る。別に珍しい発想でもないし、例えそうなってもあまり同情する気も起きないが、それが楽しい結末だとも思えなかった。

(だとすればーー)

 連絡の途切れたシナガワ署の中を強行偵察し、諸々を制圧して、シャーマンを潰す。これらの難題を、市長と大司教が作り出してくれた時間内に、僕がやるしかない。

 新調したばかりのマグプルPDRの安全装置を解除し、デジタルスコープを夕立ちリンクさせるとその制御を委ね、ミュスカさんに答えた。

「お任せください、必ず成功させます」

「ユーリ、本当に大丈夫なの?}

 突然インカムの中に現れた心配全開のスカリーシェリに笑いかけた。

「心配は要らないよ、夕立は元々こういう場所に単騎投入される前提で設計された強行偵察型だからね」

「けど・・・・・・」

「大丈夫、ちゃんと帰ってくる。だからさ、大聖堂で待っていてくれ」

「・・・・・・うん、分かった。約束だからね」

「ああ、約束だ。それとリュキウスーー」

「は、なんでしょうか」

 落ち着いた声が僕への信頼を物語っているように感じられて、これはかなり嬉しかった。

「君に言うまでもないけど。共生派のテロの対象がシナガワ署だけとは限らない。スカリーシェリの身辺警護はくれぐれも用心してくれ、・・・・・・えっとその、君の武運を祈っているよ」

「承知いたしました。ユウリさま、どうかご武運を」

 ありがとうと頷いて、シナガワ署の正面口に集まっていた機動隊員に声を掛けた。

「中に何人いるのか分かりますか?」

「二百三十三名だと聞いています。しかしーー」

 答えてくれた年嵩の隊員が自動ドアを軽く叩いた。

「破甲弾をはじきました。この分じゃここから中に入るのは難しいかもしれません」

(ふむ、呪いに近しい魔術結界じゃな)

 小さく頷くと、後ろ腰に固定しておいた二字国俊を引き抜き、術式強化された特殊仕様のガラス扉を一閃して鞘に納める。

「アークナイト?」

 怪訝な顔した機動隊員の前でガラス扉をポンと押す。ガラス扉はゆっくりと内側に倒れ、ガシャン!と派手に砕け散った。

「ここの確保、お願いしますね。何が出てくるか分かりませんけど、内側のモノが外に出るのは流石に不味いから」

「はい!」

「どうかご無事で」

 敬礼をしてくれた警官たちを正面口に残し、マグプルを肩口に納めると、魔術の霧で暗く視界が遮られたシナガワ署内に突入した。

続きは20日23時ごろを予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ