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カワリモノ  作者: 老木 勝秋
守護者

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チキンドライブ

「傷を負ったお嬢さんはこちらで病院に運ぶぞ、容態は安定しているから心配すんな」

「お、親父さん!?」

 飛び去るヘリコプターからの通信に、思わず素っ頓狂な声を発してしまった僕に、狙撃を敢行した『士団』所属のベテランが軽い笑い声を上げた。

「なんだよ、俺がいたらおかしいのか?」

 いや、おかしいでしょ。

 絶対におかしいとは思うけど、市ノ瀬さんならどこにいてもおかしくない気もする。咄嗟にうまい返事ができなくて口籠っていると、親父さんはさっさと謎解きを始めてしまった。

「鞍馬、警官殺しの件、聞いているな?」

「さわりだけですが。狙撃があったとは聞きましたが・・・・・・」

「その事件でスナイプに使われたのがM200だ。で、この一ヶ月にシャイタックの特殊銃弾を大量購入した人物はつぅとーー」

「・・・・・・御子神猛ですか」

「おう。解雇されたとはいえ赤備えが引き起こした警官殺しだ。しかも、御子神はここ数日『清和』本部とも連絡を絶っていやがった」

 待ってくださいと、口を挟んだ。

「銃弾を買ったから犯人で、連絡を絶っていたからテロに走る? 発想が極端すぎやしませんか」

 実際に僕は襲われているし、市ノ瀬さんが正しいのだろうけど、スナイパーが使用銃弾を大量購入していてもおかしいとは言えないし、うまく表現できないけど強烈な違和感を覚えてしまうのだ。

「まぁな。が、これは俺の判断じゃねぇぞ、市の上がそう判断したって話だ。臨時召集された安保会議で野郎の駆除が決定された。こうなっちまえば俺たちに出来ることなんて一つきりだからな」

 駆除とは裁判なしの処刑を指す隠語だ。

 そして、駆除命令が下れば、僕たちシュバリエに否を言う権利は存在しない。

 釈然とはしなかったが、事情は把握できたし理解もした。

 けれど、一つだけ大きな謎が残っていた。

「あのぉ、親父さん。御子神はどうやって僕の居場所を掴んだんでしょう」

「・・・・・・・・・・・・おい、鞍馬ァ。お前さん、本当に藤堂の部下(ちょうほうぶいん)か?」

 げんなりと重い溜め息に続いて、実際に頭を抱えているに違いない呆れ声が聞こえたが、それでも僕には分からなかった。

「??」

「ったく、これだから藤堂(まじょ)に預けるのは嫌だったんだよ」

 心の底から嘆かれて申し訳なくなった愚かな僕に、面倒見のいい親父さんはもう一度深く溜め息を吐くと、「いいか、鞍馬」と諭す口振りで続けてくれた。

「市長舎に飼っているお友だちから、お前の情報を御子神に売った奴がいるって話しが流れてきたんだよ。甲州街道をチキンドライブするお前でもないだろうから、八王子駅にヘリを飛ばしたら案の定って訳だ」

 情報を売った犯人は市の受け付け窓口にいた誰かか、検問所にいた誰かかもしれない。或いは両方って可能性も捨てきれない。いずれにせよ、彼らからしてみればランチ代を稼いだだけの悪意のない行為にすぎない。

 腹が立つ話だけど、諜報活動とはそういうものだ。

「はぁ〜、納得しました」

「そりゃそうだろうよ、全部話したんだからな。ーーっと、それとな」

 親父さんは軽い口調で付け加えた。

「明日の朝イチでシンカワ署に顔を出してくれや。テロ対策課の事情聴取に協力してくんねぇか」

「了解です」

「悪いな、じゃ、俺はこれから無届けでアルバイトしていた若い衆に説教しなけりゃならねーからよ」

(うげ、二人とも無届けだったんだ)

 二時間は雷を落とされるに違いない。

 頭を抱えた僕の頭上を旋回したヘリコプターは、尾翼を高速モードへ移行するとトウキョウへと飛び差って行った。


 突然の人員半減。戦闘による装備品の損壊。航が脱ぎ捨てて行った天霧を放置する訳にも行かず、ここから先は装甲車での移動がメインになる。

「初陣とはいえ撤退は論外です。意には沿いませんが、チキンドライブより方法はないかと思われます」

「そうだね、数日我慢すればいいだけだし、それで行こうか」

 方針を決定すると、リュキウスは重装備を感じさせない流麗な動きでドライビングシートに収まった。

 説明しておくと、哨戒任務は基本的に戦闘をする必要がない。

 場所や時間帯によってエンカウントしない可能性があるからだが、その規定を悪用し、装甲車両を用いて目的地まで一直線に走り抜け、そのまま一発も撃たずに帰還するという方法が初心者や弱小レギオンに広まった。

 人呼んでチキンドライブ。

 どこから情報が漏れるのか、それを行ったレギオンは数日の間、他のレギオンからの嘲笑を義務付けられる一種の通過儀礼だ。

「危険ですのでシートベルトをお願いします」

 助手席に収まった僕にリュキウスが静かに言った。

 無論、異論はない。異論なんてないけれど、寒気がしたんだ。

 それはきっと、第六感。

 なにを言いたいのかと言うと。

「行きますよ」

 ブルルル〜ン!

「うふ、うふふふふふ」

「え?」

 ひぎゃあああああああああああああああああああ!!

 一発も撃たなくったって、オーガ屠るなんて簡単でした。

 帰還した検問所で、暗視スコープを装備した兵士たちが一斉に顔を背け、スプラッタ映画のモンスターカーを見るみたいに絶句した事実を、僕は絶対に忘れない。

第二章完結でございます。

毎回読んでくだされた貴方と貴女、一気読みしてくれた皆様にお礼を申し上げます。

三章の開幕は8月9日土曜日の午前10時掲載を予定していますので、またお付き合い頂けましたら幸いです。

また、ログイン無しでも感想を書ける設定にしておりますので、よろしければご意見や感想などを読ませていただけたら嬉しく思います。

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