vs
ピカッ、カッ、カッカッカッカッカッ。
八王子駅の屋上から走った閃光は七つ、弾倉を空にする速射を、猫背気味に肩口に納めたマグプルの二連七射で迎撃する。
火炎弾が夜空で爆発し、花火と見紛う鮮やかな光を放った。
これで御子神のライフルは空っぽだ。
僕はリロードのわずかな隙を突くように、明るくなった夜空の下を疾駆する。
それは宣言した通り兜を脱いで行った、白髪をさらす挑発だった。
そして、挑発の対価が秒差もなく僕を襲う。
マズルフラッシュに気が付けたのは単なる偶然。迎撃による爆発の閃光と轟音に紛れ、八発目の銃弾が僕に迫る。
「くうっ!」
咄嗟にマグプルを盾に掲げて攻撃を防いだ。
PDWを穿孔した破甲弾はこめかみのギリギリを掠め、銃弾の放つ回転エネルギーの衝撃で皮膚が破れ、ほとんど真横に吹き飛ばされる。
吹き飛ばされる衝撃を利用し、そのまま右方向へ大きく飛び退くと、転げるようにビルの影に隠れて回復を待った。
(七発しか装填されないはずなのに、なんで?)
八発目は通常と同じタイミングで放たれている。謎だ。しかし、この謎が解けないとリロードの隙を突いた反撃が不可能となる。
(どうやった、いったい何が起こったんだ?)
思考中だからって攻撃が止む訳じゃない。
盾にしていた壁は見る間に抉られ、見るも無惨な瓦礫の山を創造して行く。
破甲弾が壁を抜いた瞬間に僕は走った。
桑並木通りをを横断して別のビルに隠れるつもりだった僕の背後ーー本当に真後ろで大きな爆発が起こり、アスファルトを溶かす火焔が立ち上がる。
「ぬわぁ!」
火炎榴弾の爆風に巻き込まれてゴロゴロと転がる僕に、今度は風を切る破甲弾が襲いかかる。
「げ、まずっ!」
力一杯に右手で地面を叩いて跳ね上がると、半舜まで僕が居た場所ーー僕の真下で破甲弾の回転エネルギーがクレーターを作り出していた。
(あっ!)
基本的な話、弾倉には同一の銃弾しか装填しない。
出来ないのではなく、やらないのだ。
理由は簡単、複数種類の銃弾を装填しても、必要な銃弾が都合よく射出されるなんて奇跡は早々起こるものではない。もしそれが頻繁に起こるとすれば、それは手品だ。
原因が、仕掛けがある。
「ーーそうか、マニュアル操作、ボトルアクションだ」
ボトルを引き一発ずつ銃弾を手動装填する方法を取れば、必要な銃弾が選択可能となる。
熟練の狙撃手である御子神は、速射のタイミングでそれを行えるのだろう。
「器用なことさ、でも、所詮は手品だ」
眉間に飛来する破甲弾を空中で回転してかわし、着地と同時に体勢を整える。身体を半歩下げて心臓を狙った狙撃をやり過ごすと、大きく息を吸ってーー
「下手くそめ。どうした、僕はまだ生きているぞ!!」
得意満面で中指を夜空に突き立てた。
八王子駅の屋上で凶悪な殺意が膨れ上がり、
「上等だ、殺してやるよ」
ありったけの憎悪を込めた一筋の閃光が吐き出された。
ニヤリ。
「今だ、リュキウス!!」
「エリコンの盾を発動する」
バチィ、バチィ、バチィ!
銀光に包まれた左腕を斜め前に掲げ、リュキウスが手の平で破甲弾を受け止めていた。
からん。
回転エネルギーを奪われた銃弾がアスファルトに転がった次の瞬間、飛来した火炎榴弾が炸裂しリュキウスが炎に包まれた。
「この程度の児戯で『キャンベラ』を傷つけようなどと。あまり思い上がるなよ、下郎」
タイプ・ボルチモア。重盾キャンベラが左腕を払い除ければ、虚仮威しの火炎は即座に消し飛ばされ、そして完全に射撃線が開いた。
「見えたぞ、クソ野郎」
キャンベラの後ろ腰にマウントされていたバレットM95を引き抜いた僕は、キャンベラの肩鎧の上にライフルの銃身を預け、高精度スコープに映る御子神を睨み付けた。
「舐めるなよ、小僧!」
トスーン!
八王子駅の屋上から、狙撃手の憎悪を具現化した閃光が走るも、この身は銀色の絶対防御壁の中にある。
「愚かだな、それでは抜けぬと学習しなかったのか」
キャンベラの左腕が輝きを増し、絶対防御を誇る護衛騎士隊の切り札ーー進行方向へのエネルギー活動を吸収し無効化するエリコンの盾が、飛来する銃弾の回転エネルギーを完全に無効化した。
エリコンの盾に阻まれた銃弾が虚しく転がる音を聞きながら、僕は狙いを一点に絞ってトリガーを引いた。
トスーン!
「ちぃつ!」
バレットから解き放たれた赤い銃弾は、射撃を終えたばかりのM200の銃口へ飛び込み、思うままに穿孔して銃身を破壊すると、止まることなく御子神の右肩を撃ち抜いた。
スコープの中に、驚愕する御子神の顔が見えた。
「これで仕舞いだ」
高精度演算による狙いを済ませ、ためらいなくトリガーを絞った。
飛翔した破甲弾が、御子神の纏う最上の赤い兜を叩き割り、衝撃で脳みそを揺さぶられた御子神が転々と転がって大の字に倒れた。
次話は明日8月5日の21時を予定しています。
お付き合いいただけたら幸いです。




