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カワリモノ  作者: 老木 勝秋
守護者

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23/51

襲撃

 装甲車の隣を護りつつ駅舎前の大通りに出た。

 朽ちた道路標識によると、ここは桑並木通りというらしい。

「駅舎内にヒトの反応ですか・・・・・・」

 現在地から四百メーター向こう、特徴的な並び窓の続く古い駅舎を見上げたリュキウスは、僕が伝えたセンサーの捉えた情報に思案気な返答をした。

「ああ、だいたい三十人くらいかな。正確な数は把握していないけどね」

「ふむ。いかがなさいますか」

 リュキウスが判断を仰いできた。

 このレギオンの代表者は僕、つまり、決めるのは僕なのだ。

 腕を組んで思考する。

 威力偵察の目的地は旧京王線の高尾口駅跡だ。このまま甲州街道へ出て国道二十号線跡を直進すれば、夜明け前までに多魔川橋の検問へ帰還することが可能だ。

 言い換えれば、時間的な余裕はある。

 このまま八王子駅舎内の下級魔を排除することに異存はない。ないのだが、生きた人間やヒトの保護となると事情が異なってくる。

 彼らの幾人かはきっと自らの意思でここに暮らしている可能性が高いのだ。

 もちろん危険だ。が、誰にだって都合はある。

 保護名目で拉致する方法もあるけれど・・・・・・

(それって誘拐だよなぁ、それならいっそ大型バスでもーーっ!)


 ちかっ。


 目の端で何かが光って、アラームが点灯する。

(火線!?)

 ほとんど反射だけで装甲車を殴り、インナーマイクに叫んだ。

「航、発車しろ!」

「マジかよ!」

 車体が揺れた一瞬後、ひゅんと風が鳴り、装甲車が今の今まで止まっていた路面が大きく抉れ、アスファルトの破片がパラパラと音を立てて降り注いできた。

(幽理、次が来るぞ!)

 警告とほぼ同時、真闇の夜空に再び火線が走る。

(任せろ、もう見えてる)

 マグプルを上空へ向け、ユウダチの補助を受けて視線だけで即座に狙いをつけるとトリガーを引いた。

 特殊ナパーム弾でも打ち落としたのか、夜空に咲いた大輪の火華が夜幕を裂き、短命の疑似太陽が駅舎の屋上に立つ赤い人影を照らし出す。

 それを視認しながら指示を出した。

「凛音は車の中に。リュキウスは先行して街道を確保してくれ」

「承知いたしました」

 僕に返事が届いた時には、リュキウスの姿はすで通り向こうに走り出していた。

「航、どこでもいいからビルの影に車をぶち込め、ちんたらして狙撃にやられんなよ!」

「ばっかやろう、簡単に言ってんじゃねぇい!!」

「早く乗って、鞍馬君!」

 装甲車のサイドドアが開いて、中から凛音が手を差し出してきた。

 僕はその手に背中を向ける。

「行ってくれ、殿は任せろ」

「でもーー」

「いいから、ーーーーいけぇ!」

 怒鳴った。

「出すぞ、掴まっていろよ、凛音!」

「ーーぇ、きゃぁ!!」

 装甲車のタイヤが回転を上げ、無灯火の装甲車が走り出した同舜。

(次、ーーくっ、破甲弾じゃ!)

 別名シュバリエ殺し。

 劣化ウランやミスリルで弾頭をコーティングし、バトルドレスを穿つために貫通力を強化した特殊銃弾が飛来する。

「狙いを僕に絞ったってか」

(よかったの、本当にファンがおって)

「笑えないっての」

 肩を横から縦に動かし、心臓を狙う正確な狙撃をやり過ごす。そのまま頭を下げて前転し頭部をかすめた破甲弾をかわすと、牽制にマグプルの残弾十発を撃ち尽くし、飛来する破甲弾の弾頭を撃ち潰した。

 その刹那、ごろんと路面に転がったのは破壊力を強化したシャイタック弾だ。

(油断するな、次じゃ!)

「あいよ」

 リロードを済ませ、再びマグプルのトリガーをフルスロットでしぼった。

 アスファルトに跳ねた7.62ミリ弾の薬莢が矢継早の金属音を奏で、焦げた臭いがアドレナリンを刺激する。

(まずい、速射じゃ)

「!?」

 横へ三歩、そこからバク転して大きく後方へ跳び、そのまま廃ビルの影に遁走した。

 コンマの秒差もなく抉れたアスファルトは二ヶ所。

 狙撃点ーーマズルフラッシュの位置に変化はない。

 凌ぎきったというよりナメられている、そう見た方が正しいのかもしれない。

「シャイタック弾が使用可能、装填数は七。ふん、M200系列のカスタムライフルじゃろうな」

 右肩の上に姿を表したユウダチが忌々しげに言った。

「ってことは有効射程距離二千?・・・・・・加えてマニュアル射撃でタイミングずらしの速射も可能となると」

 見れば、桑並木通りはありがたいくらい直線道路だった。

 AI制御された自動補正機構付きのスコープを持つ高性能カスタムライフルと、そいつを完璧に使いこなす卓越した狙撃手が相手とあっては、いつまでも弾よけの大道芸は通用しないと思っていた方が懸命だ。

「うへぇ、これじゃどこに逃げても撃たれちまうよ」

「ならば答えは一つじゃ。突っ込んで殺ってしまえばいいのじゃ、我らなら裏通りに仕掛けられたトラップをなど物の数でもあるまいに」

「みんなの指揮を執らなきゃいけないんだから、単身突撃はなし」

「なんと、主の口からそんな大人の台詞が聞けようとは・・・・・・、ちょっと、つまらんの」

「余裕のあることで」

「ふっふ〜ん、もそっと敬うがいいぞ」

 おバカ会話で興奮をさまし、その間に呼吸を整えた。

 さて、どう動くのが正解かーー

 思案を始めたその時だった。

「ユウリさま、信用金庫跡地に到着いたしました。全員怪我はありません」

 イヤホンに流れたリュキウスの声と報告にホッとした。

「了解、今から行くよ。・・・・・・あのさ、リュキウス」

「は?」

「ありがとう、二人を護ってくれて」

 待ち伏せがなされた以上、この近辺にはトラップが仕掛けられていると見るのが自然だし、他の伏兵があったかもしれない。どんな危険が待ち受けているかも分からないのに、先行任務を果たしたリュキウスの技量と献身に、僕は心からお礼を言ったのだけど。

「いっ・・・・・・いえ。お礼を言っていただくようなことではーー」

 転調ーー照れた声音におやっと思ったが、リュキウスは余計な詮索をする暇をくれなかった。

「・・・・・・おほん。ともかく合流をお急ぎください。対応策が必要です」

「了解、すぐに向かうよ」

 そして、路地裏を駆けた僕は、少し先の廃ビルの中で仲間たちと合流を果たした。

続きは本日8月3日21時掲載を予定しています。

お付き合いいだたけましたら幸いです。

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