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カワリモノ  作者: 老木 勝秋
守護者

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八王子夜間哨戒任務2

 リンクした『高天ヶ原』の熱源探知カメラの映像に、所属不明の熱源が表示されていた。

 無音ドローンを飛翔させる。望遠視に捉えた崩れたビルの物陰に、ゴブリンが伏兵の構えで身を潜めていた。

「前方、距離四百左方。旧労働局跡地にゴブリン二体が潜伏中、射撃準備」

「こちら嵯島、標的を視認中、射撃準備よし」

「ファイア」

 短く命じた。

「ファイア」

 後方でマズルフラッシュが迸り、トスーン、トスーンと低く重い振動が火柱を伴って夜気を裂いた。

「クリア」

 壁の名残を粉砕し、頭部を綺麗に吹き飛ばされたゴブリンを視認し、凛音が撃破を報告する。

「こちらかも撃破を確認した。これより先行偵察を開始する。航、車を止めて待機してくれ」

「あいよ」

 装甲車の停止音に背中を押され、レンガ通りと呼ばれた街路をリュキウスと共に駆けた。

 視線の先にあるのは四つ角の交差点だ。右手正面の高層マンションが半分に折れ、倒壊した瓦礫が右折路を塞いでいるから、より正確には三叉路が正しいのかもしれない。

 そこを目指してユウダチに制御させた小型ドローンを三機旋回させ、一機は上空からの俯瞰視点を確保し、残りの二機で生体反応を探った。

「二百メーター前方、総合病院斜向かいの建物内に熱源反応を確認、数は二つ」

「了解、わたくしが先行します」

 ひゅっと銀槍を払い、一気に加速したリュキウスが僕の前を駆ける。リュキウスは交差点を左折すると、いまだ原型を留める廃屋の中に突入した。

「ウガァ〜〜ッ!!」

 半ば倒壊している屋内で、鈍重なフォルムの革鎧と大型車両すら切り裂く電磁大鉈を装備した巨大なオーガが、僕らの突入を察知して襲い掛かってきた。

 巨体を誇るオーガは細身のリュキウスを一瞥すると、体格差から勝利を確信し、薄笑いを浮かべてスパークを放つ大鉈を叩きつけた。

「その程度の雑技で我が身に触れようなど、甘く見られたものだな」

 リュキウスの反応は流麗だった。空気抵抗が存在しないかのような動きで一気に距離を詰めると、優雅な体捌きで大鉈をかわし、軽やかに槍を繰り出した。

 それは一突きに見えた攻撃なのに。

「しっ!」

「グエッ!?」

 次の瞬間、喉を穿たれ、左目を貫かれ、眉間を突かれた、更に突き抜けた衝撃波が後方の壁を削っていた。

 完殺されたオーガは膝から垂直に崩れ、尻餅をついてゆっくりと倒れていった。

(すっげーな。と、もう一体はどこにいる?)

 倒れたオーガを見ると、

(幽理、こやつの鎧、どうやらジャミング機能付きのようじゃぞ)

(はぁ、面倒なことで)

 ジャミングを発動されてはセンサーによる探知が意味を失う。やむをえず内観で気配を探ろうとした矢先。

 メキッ、と何かが軋む音がしてーー

 ドガーン!!

 突然、リュキウスの目の前で壁が吹き飛んだ。

「!?」

「グラァアアアアアアアアアア!!」

 耳をつんざく気合いが弾け飛ぶ壁の破片を押し退け、隣室から壁をぶち抜いたオーガが振り回した電磁大鉈が、一直線にリュキウスへ襲い掛かる。

 リュキウスの反応が遅れた、いや、鈍いのだ。それはあり得ない現象に脳が反応できずに動きが止まってしまう、デッドエンド確定コースだった。

「くっ!」

 指と腕が脊髄反応で動いた。

 反射任せにトリガーを引き、オーガの顔面めがけてマグプルを乱射する。

 だが、7.62ミリ弾では分厚い皮膚を持つオーガを倒すことは出来ず、ほんの僅か動きを遅らせるだけしかできななった。

 が、その極小の時間に。

「シッ!」

 リュキウスは反撃を開始した。

 先に屠った倒れて行くオーガの巨体に回し蹴りで浮かび上がらせ、次の動作で腰をさげ重心をぐっとさげる。

 ザシュッ!!と盾に利用され両断されたオーガの巨体が二つに分かれたその直後。

「はぁああ!!」

 足元で十分に蓄えられたエネルギーが放出され、次の瞬間、リュキウスの姿はオーガの背後へ駆け抜けていた。

討伐完了(クリア)

 頭部を蒸発させ、ズズーンと埃を巻き上げて倒れるオーガを振り向きもせず、背筋を伸ばしたリュキウスが銀の槍を払った。

「おみごと」

「いえ、ユウリさまの支援こそ絶妙でした」

 装甲に包まれた腕をカチンと打ち合わせ、僕らは大昔の保健所を後にした。


(幽理、装甲車の後方に六体のゴブリンが接近中じゃ)

 上空旋回中のドローン情報を管理するユウダチが注意を促してきた。

「凛音、各個撃破を許可する。後方接近中のゴブリンを殲滅してくれ。航は次の交差点手前まで前進だ、シールドの展開を忘れるなよ」

 月も星も見えない三叉路に戻るなり撃破指示を出した。

「了解。・・・・・・あのさ、鞍馬くん」

 凛音が囁きに僕を呼んだ。

「ん、どうしたの」

「ううん、えっと、うん。少し指揮官らしくなってきたかなって」

「そう、かな」

 少し照れ臭かったけど、嬉しかった。

「うん、調子にのられても困るけどね」

 凛音が返事をしたタイミングで、航が口を挟んだ。

「おーい。いい加減オレにもなんかさせろよ、運転手飽きてきたぞ」

「切り合い上等、火器管制の弱い天霧に出る幕はないぞ。下手撃って凛音に笑われる前にシートに戻れよ」

「むっき〜〜〜!」

 モーター駆動で移動は無音だが内部は騒がしい装甲車が走り抜け、装甲車のルーフの上で親指を立てた凛音の唇が無音を刻む。

 ーーナイス。

 親指を立てて凛音に応えた。

次話は本日8月3日14時更新を予定しています。

お付き合い頂けましたら嬉しいです。

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