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カワリモノ  作者: 老木 勝秋
守護者

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八王子夜間哨戒任務1

 夕闇迫る午後六時。

 旧都庁舎を再建したトウキョウ市庁舎前で、不座さんに手配してもらった装甲車に乗り込み、僕たち四人は哨戒任務の目的地である八王子の廃墟を目指していた。

 現状、人類が確実に勢力圏と呼べるのは、都市内部とその周辺域(およそ十キロ四方)のみ。街から二十キロも離れると安全は保証されない。

 巨大な地下食料プラントを有するフチュウを抜け、昔は四号線で呼ばれていた輸送専用道路を走ることおよそ一時間。真っ暗な大河に掛かる多魔川橋が、トウキョウ市と人外の東境界線となる。

 当たり前だが、境界線は無人ではない。

 輸送道路の終点に設けられた検問には、三十ミリ対空機関砲が八門備え付けられており、百五十ミリ無反動滑空砲を搭載した四足戦車が二両、七ミリ弾を吐き出すPDWと強化カーボン繊維製ブレストアーマーで武装した二十名の戦闘歩兵隊に、多足歩行するAIバトルロイドが五体と完璧を地で行く防御力を誇っている。

「アークナイト、大変失礼ですが兜を取って頂けませんか。本人確認にご協力ください」

 暗視ゴーグルを装備した兵士が、装甲車のルーフ上に胡座をかいて周辺偵察中に僕に言った。

「それは構いませんけど、本人確認ってなんですか?」

 兜を外して白い髪を夜気に晒すと、暗視ゴーグルで僕を視認した兵士がヘルメットの縁に指を添えて敬礼してくれた。

「いえ、最年少でアークナイトに就任された貴方の騙りが出回っているって話しでしてーー」

 聖堂教会がホームページで鞍馬幽理の聖騎士就任を発表したのは昨日の夜だ。この間の二十時間程度で完全無名だった男の偽物が出てくるのだから、ネット社会は暇人が多い。

「結構です。申し訳ありませんね、これも任務でして」

 こう言われてしまえば、僕らだって理不尽な命令には慣れているからあまり強くは言えなくなる。

「いいえ、ご苦労様です」

 苦笑と敬礼に見送られ、低速走行する装甲車が多魔川に架かる長い橋を渡り始めた。

 こうして、八王子哨戒任務の幕は上がった。


「この分だと八王子に幽理のファンが待っているかもしれないぜ」

 装甲車の運転席で航が軽口を叩いた。

「羨ましいなら代わってやるよ、航」

 無灯火で前進する装甲車の二百メーター前方を、八機の小型ドローンを周辺展開した僕が歩き、その隣を銀の長槍を携えたリュキウスが横並びに歩いていた。

「はん、さみし〜い友人のモテ期を奪う気にはなれんのよ、人格者のオレさまに感謝しな」

「よく言うよ」

「ねぇ、八王子ってまだヒトがいるのかな?」

 装甲車のルーフに腹這いになり、バイポットに支えられたロングライフルーーバレットM95カスタムの暗視スコープを覗き込む凛音が、誰へともなく尋ねた。

「完全に無人化しているという情報はありません。フチュウからの物資横流しの噂も絶えませんし、ヒトが居る、この前提で哨戒をなすべきが妥当かと思われます」

 リュキウスの進言に頷く。

「聞いたとおりだ。目的は制圧じゃない、各自最大限の注意をされたし」

「承知いたしました」

「りょうか〜い」

「うん、任せて」

 リュキウスは落ち着いて、航はお気楽に、凛音は緊張しながら、三者三様の返事がイヤホンに流れた。


 哨戒任務とは都市周辺域における威力偵察行動で、都市防衛の一端を担うレギオンにとっては、ほぼ日常任務ともいえる作戦行動だ。

 作戦の発令元は都市国家政府。

 ここでいう都市国家とは、日本都市国家連合を構成する十三都市国家で、センダイ、ヤマガタ、アイヅ、ニイガタ、カナザワ、トウキョウ、ナゴヤ、オオサカ、オカヤマ、イズモ、ヒロシマ、フクオカ、クマモトを指す。

 都市国家政府が発令する威力偵察は、人類の居住区限界から五十キロ範囲を目安に行われる外敵の一掃行動をいい、僕らが受託した任務だと、トウキョウ市政府の定期防衛作戦計画に基づき、勢力圏外として放棄されている八王子旧市街地の強硬踏破がそれに当たる。

 ただ、強硬踏破といっても威力偵察エリアは人類の勢力圏に極めて近く、戦闘はあるにせよ、高難易度のミッションではなく、行って帰ってくるだけの場合もある初心者向けの任務という位置付けになる。

 初心者向けを意識しているのか、作戦行動中はGPS発信器の所持が義務付けられており、作戦参加者は例外なく『高天ヶ原』の管理下に置かれ「行ってきました」系の自己申告によるズルはできない仕組みになっていた。

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