助言者
「そっか、維持費の面からも部隊内で銃火器や銃弾は統一した方がいいんだ」
「はい、ショップ側も大口契約者に優先して供給するきらいがありますし、何よりも割引率がおおきくなります」
市の出張窓口に出向いて哨戒任務への登録を済ませ、ツクダジマにあるドワーフ工房から修理中だった夕立を受領した帰り道。
夕暮れ時で賑わう人混みの中、四輪自走式の鎧櫃を引き連れて歩く僕の隣で、騎士服姿のリュキウスが頷いた。
レギオン内で同一銃弾を用いていると弾切れした時に融通が可能、この程度の認識しかなかった僕だけど、リュキウスのレクチャーを受けてレギオン経営の基本のきの字くらいは理解したのかもしれない。
にこやかに、心穿つ辛辣な言葉を浴びせられ掛けながらだけど。
「怒らないのですね、ユウリさまは」
「勉強になったもの、それにわざとやっていたでしょ?」
「バレていましたか、でも、愉しかったですよ?」
「みたいだねぇ」
「・・・・・・それに」
と、少し言葉尻を濁したリュキウスが悪戯めいた目をして小さく笑った。
「ユウリさまが楽しそうだったので、つい、意地悪したくなりました」
「なんですか、それは?」
「内緒、です」
唇に細い指を添え「もう答えません」とアピールされてしまうと、僕にはもう肩を竦めるよりない。
マゾっ気ありとでも思われたかと不安になったが、指を飾るシュバリエ徽章をさすり周囲に会話が漏れないように磁場を生み出したリュキウスの言葉で、浮わついた気持ちはすっかり吹き飛ばされた。
「警官が殺されました。特別機動部隊に所属するシュバリエが二騎です」
共感不能なテロの気配に身が強張った。
エクソシストが狙われ、シュバリエが死ぬ。
無差別殺戮上等な爆弾テロに、護衛部隊が行う市街戦。
巻きぞいなる人々は、絶対に数字だけの存在じゃないのに、だ。
舌打ちしたい気分を抑えて尋ねた。
「・・・・・・方法は?」
「アンチマテリアルライフルによる頭部への狙撃とみられています」
それが本当だとすれば、非常識な腕前と破格の火力、それに特殊銃弾が必要となる。
だとすれば、容疑者となり得るそれら全てを兼ね備える人物なんて、レギオン界隈といってもそう多くはいない。
市ノ瀬さんが呼ばれた理由がそこら辺にあるとすれば、事件は簡単にカタがつくと見て間違いはないし、そうならずともアークナイトとして対応は可能だ。
そこまで判断して緊張を解いた。
「最近は少なくなっていたのにね」
「法整備が進みましたから。・・・・・・けど、皮肉です」
リュキウスに「だね」と同意する。
少し前まで僕のような感染型変異種は勿論、『パンドラの涙』を契機に各地の異界門からこの地に移住してきた亜人種たちまでも、破壊と殺戮を続ける侵略者と同列にみなした集団がいた。
ガブリエルのホルン。
あらゆる異人種排除を目的とした武装自警組織がそれだ。
彼らがやったことは民族浄化だった。
いつ果てるとも知れない防衛戦争で人心の荒廃があったにせよ、『ガブリエルのホルン』が行ったおぞましい私刑は、未知の技術を携えて移民してきた亜人第一世代の反感を招き、侵略者との講和と共存をうたう不穏分子へ冥呪核を用いた強力な武器が流れた結果、共生派と呼ばれる凶悪な武装テロ組織が生まれた。
共生派の跳梁に手を焼いた各都市国家政府は、テロ集団への武器供給を絶つ目的で人権関連の法整備を行い、保護の厚い都市部に多くのヒトが流れ込んだ。
つまり、今日の人種複合型都市の繁栄は、テロが生んだ副産物という側面を有しているのだ。
「わたくしは第二世代です」
「僕は適応変種だよ」
白い頭髪を指差した。
「存じております」
リュキウスが磁場を解除して僕らの自己紹介は終わった。




