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カワリモノ  作者: 老木 勝秋
シュバリエ
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プロローグ

 AD二千年代も数十年をすごしたとある夏の日、世界中の人間が空を見上げる日があった。

 高層ビルを遥かに凌駕する巨大な建造物、一枚板の黒曜石を思わせる滑らかな表面に、不気味な一つ目を彫刻した漆黒のモノリスが、轟音を共に海底深くから大空に浮上を果たしたのだ。

 太平洋上に浮かび上がった『そ』を異界門と呼ぶ。

 異界門とは、未知なる異世界へと通じる交差点(クロスポイント)

 過去に認知されている限りにおいて、門の向こうに広がる世界の深淵さは宇宙を凌駕し、それでいながら、宇宙暮らしに比べて圧倒的に生活圏の確保がしやすい。

『そ』の出現は、絶え間ない環境悪化と人口増加に頭を悩ませていた人類の福音となる。

 高性能AIにより黒いモノリスの構成物質がミスリルと解析され、異界波動の観測結果から門の向こうに人類が暮らすに適した環境があると判明するや、福音は確かな希望へと変じた。

「我々は楽園のチケットを得たのです」

 著名な科学者、物理の碩学、異界との交渉経験を有する元外交官、霊能力者や魔術師に至るまで、多種多様な権威がテレビショーやSNSを通じて社会を煽り続ける。

 道徳が、法律が、神の教えが、さながら古代の巡礼のごとく異界行を賛美し、金と資源と才能が、数多湯水のように費やされ、技術は目まぐるしく発展を遂げていく。

 それは、人の世の到達点とも呼べる華やかな時代の幕開けだ。

 しかれどもーー

 驕れる者は久しからず、満ちれば欠けるは哀しいかな自然の理。

 破滅は前触れもなく訪れた。

 ああ希望(パンドラ)よ、何故貴方は涙するのか?

 その日、一枚板と見紛う上空の扉が開いた。

 そう、無限の可能性を秘めた扉が、こちら側に開いてしまったのだ。

 薄気味悪い一つ目彫刻の門扉を潜り現れたのは、三百の目を有し空を覆った巨竜リヴァイアサン、小山より巨大な青銅の幻獣ベベモット、剥き出しの牙で星を食らう四足の王フェンリル、空想でしかなかった怪物たちが現実世界を侵食した。


 そして、人の世は終わった。

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