【1分小説】月の魔術師
ある村が、魔物の進行に手を焼いていた。
度重なる大軍の進行に、村の男は傷つき、倒れる者もいた。村の女は汗水垂らして飯を作って男を癒す。
次の進行が、村の今後を左右する。そんな戦いだと皆が気を引きしめる中、ある少女が村を訪れる。
淡い緑のローブに、同色のとんがり帽子。少女の身の丈ほどもある、金の装飾が施された石の杖を持っている。少女が小さいのか、杖が大きいのか、存在感を放っている杖。
「ええと、旅の方でしょうか。今は魔物の進行を防ぐのに手一杯で……」
村長が悲しそうに少女に話す。
「なるほど。そういう事でしたか。皆様お疲れの様子。ここは1つ、私の魔法で治癒の泉を作ってみせましょう。いかがですか?」
少女は屈託のない笑顔で村人に問う。
村人は小声で話し合い、やがて結論が出たのか少女を見つめる。
「では……お願いします」
村長がそう言って、ゆっくりと頭を下げる。村人も村長に倣ってみんな頭を下げる。
少女は村の裏手に泉を生み出す。
男共が入ると、傷は癒え、生死の境をさ迷っていた者も意識を取り戻した。
泉の水を使った料理は人々を元気づけ、村に活気が戻る。
村人達は武器を手に取り、咆哮をあげる。
「これでこの村も大丈夫そうですね」
少女が微笑むと、村の裏の森に入る。
月を見上げる。
体が淡く光り、小さな粒となって月に向かう。
月は皆を平等に見つめている。
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