出会い
ここは…?
キョロキョロと辺りを見回した。
慌てて後ろを振り返って来た道を戻ろうとすると私が入ってきた公園はもうそこには無かった。
少し悩んだあと、まあいいかとおもい足を進めていく。裏路地のような場所を抜けると大きな噴水が広がる広場に行き着いた。
石造りの大きな噴水は私の心を震わせた。
小走りで噴水に向かうと至る所から視線を感じた。
私はその時初めて噴水以外のものに目を向けた。
そこに広がる景色は獣の耳や尻尾、角など普通では有り得ないようなものを生やした者たちだった。
小さな子供から大人までまるで人間のように生活をしている。私の見た目がここでは異常なものだった。
ヒソヒソと話す声が聞こえ始め、私は肩を落とした。
下を向くと噴水には無表情な女の顔が1つ浮かんでいる。
こんなのまるで向こうと同じだ。
教室で1人宙ぶらりんなように。誰にも私の声は届かず、まるで透明人間のような。
芽吹いた花はその種を隠すように蕾が閉じる。
少し冷たい風に揺られ私は泣かないよう目を瞑る。
すると、私の頭上に影ができた。
目を開けると、黒髪の角が2本生えた眠たそうな男性がこちらを覗き込んでいた。
[迷子か?]
男性の声は穏やかで、また泣きそうになってしまう。
そんな私の様子を見て彼はこちらに手を差し伸べる。
少し困惑しながらも吸い込まれるように彼の手に私の手を重ねた。
突如風が私たちを駆け抜ける。
私は目を閉じた。
[目を開けてみなさい]
彼の声に閉じてた瞳を開けると街の全貌を見渡せるくらい高く飛んでいた。
レンガ調の街並みは美しく、花壇の花々は光を浴びるように綺麗に育っている。
私は飛んでいることよりもこの綺麗な街から目を離せずにいた。
「綺麗。」
思わず呟いた言葉に彼はクスリと笑う。
[それは良かった。君が迷子の顔をしていたからね。泣き止んでよかったよ。]
と優しく微笑み、空中散歩を続けた。